記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第3章-《33.脱 出》

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式当日の早朝、まだ薄暗い中行われる兵の交代時間直前、騎士の正装姿に身を包んだマジミール姿のセイラルは仲間を二人連れ、地下室の入口前まで赴いた。

「今までご苦労様でした。先程ジナスより迎えが参りました。引き渡しの書類はこちらに。君等は休憩を挟み夜勤明けで申し訳ないが本日の警備に回って下さい。色々大変になると思うが、引き続き宜しく頼みます」

「はっ、了解です。閣下」

マジミールはセイラル王子の従者と言うだけでなく、ナジスではセイラル王子と共に王宮騎士隊の隊長の肩書を持ち、ナチュリアに来てからも先ごろ指導教官に任命されている。
実家は子爵家で王妃の親戚筋に当たる所から騎士の衣装に身を包んでいる時は兵らからは閣下と呼ばれる事も多々あった。
セイラルは警護の者2名を見送ると地下室へ向かうべく、ナジスの衣装に身を包んだ仲間2名を引き連れて名目上遺体引き渡しの為に地下の安置所へ赴いた。
地下で眠っているのは表面上王妃に会いに訪れたジナスの親戚筋の者と言う事になっている。
城を目前にし急な心的発作で急死した事になっており、そのまま放置する事も出来ずにこの場にて安置されていると言う形になっていた。

「マジミール。いよいよだ」

「はい。セイラル様、お待ち致しておりました」

セイラルは棺の中に納まっていた時にマジミールに着せていた婚礼用の衣装と箱の下に忍ばせてあった染粉落とし用の染料を確認すると従者の衣装に身を包んだマジミールをそのまま棺の中に押し入れた。
棺は人目につかぬ様に運び出され、城の裏手で待ちうけていた仲間の馬車の荷台に置かれるとそのまま城内の一角に建てられてある神殿の裏門へと入って行った。
手引してくれているのはこの神殿の責任者である神官長でセイラルの出生時に洗礼を行った者だ。
神殿には先日王よりセイラル王子の死去が伝えられてはいたが、神官長は事前に前王である退王マゼロードより事の経緯を伺っており、今回のセイラル王子の死が陰謀を暴く為のカモフラージュである事も知っていた。
退王に今でも忠誠を誓っており、この計画を把握し今回全面的協力をしてくれていた。

「神官長殿、今回のご協力感謝いたします」

「いえ、お顔を見るまでは安心できませんでしたが、お姿を拝見し安堵致しました。退王様から事情は伺っておりましたが父王様からは死去との報告を頂いておりましたので心配致しておりました」

「この通りだ」

「本当に安堵致しました」

棺を一番大きな個室のある控の間へと運び込み、セイラルはその中で蓋を開けた。
中からは少し眩しそうに部屋の明かりに手をかざし、目を細めて瞬きをするマジミールの姿があった。

「こちらがマジミール殿ですか。確かに幼き頃の殿下の特徴を思えば目鼻立ちも良く似ておられるし、こうして見比べれば多少瞳の色合いが違いますが同じブルー。髪をこの様に染められていれば15年も離れていたのです。確かに見分けはつかぬでしょうね」

セイラルとマジミールは共に長身で多少の身長差はあるが、どちらも鍛え抜かれた体格だ。
骨格的にはマジミールの方がやや骨太ではあるが服のサイズも同じものを着られる程度の差しかない。
全てにおいてマジミールはセイラルの替え玉としては完ぺきな逸材だった。

「マジミールの犠牲無くして今の状況は築けなかった。本当に感謝する、マジミール」

「セイラル様、その様な勿体無い・・・・」

深々と頭を下げるセイラルにマジミールは少し戸惑い気味に肩を窄めた。

「さぁ、じき夜も明けます。先ずは互いに仕度を施しませんと。やっとこの日を迎えられるのですから」

互いに髪を元に戻し衣服を整える事が今一番必要な事だった。

「そうだな」

長かったこの2年。互いの姿を交換し皆を偽る日々もこれでやっと終わる。
セイラルとマジミールは交代で室内にある湯殿で元の髪色に戻すと、セイラルは婚礼用の礼服に身を包み、マジミールはセイラルの着ていた騎士用の正装に袖を通した。

その後用意された食事の席で最終的計画の確認を行った。
妹のジリルが側妃を部屋へ押し込む事に成功すれば事を皆に公にすることなく全てを婚儀として進める。
だが、失敗し側妃が式へ参列した時には厳かに最初は告別式として式を進め、途中で全てのからくりを暴くと言う事に話しは落ち着いた。

全てはジリル次第で今日の日程は変わる。
出来る事ならば前者であるようにと後は願うだけだった。

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