パウリンの娘

パウリンの娘《第10章2》

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激しかった雨は2時間程で急に止んだ。
4人は夫人礼を告げると牧場を後にした。
帰り際に今夜天気が回復すれば星を見に行こうと雑談していた話も聞こえている筈なので、こちらに興味を示せば何らかの反応はあるだろう。

ランドンは自分の風貌を今まで気にした事は無かったが、ニクソンの反応を見る限り、ここでは特に気をつけなければならないと思った。
ニクソンが言いかけた言葉、“・・・・ゴード・・・・”。
ランドンの父の名はゴードンと言った。
きっと、ニクソンは自分を一瞬父と見間違ったのだ。
その事を伝えるとフリードルは今夜は宿に泊まらずタウリンの丘で休もうと言ってくれた。
万全の為、一様寝袋も用意しているし、雨よけ用に簡易式な庇も持っている。
丘に着き、荷を下ろすと皆で庇を張り日よけにする。
雲が途切れ間から日も射して来た。
時間を追う毎に雲も薄くなっており、それは今夜綺麗な星空が眺められるかもしれないと言う希望を持たせてくれた。

「死んだ筈の彼が何故生きていたのでしょうか?」 

サビエルが口を開いた。

「聞いた話では崖に追い詰められ斬られ、そのまま転落死したとの事でしたが」

ミゲルが言う。

「下が海で死体の捜索が難しい状況ならば、そこまでは調べないだろうな」

元々助ける気が無い者を調べはしないであろうとフリードルは考えた。

夕刻になり、日も少しずつ陰り始めた。
どうやら今日は雲の合間から少し星が望める程度で、サザンクロスは拝めそうになかった。
残念そうな表情を浮かべるランドンに声を掛けようとした時、人影に気付き咄嗟に腰の剣にフリードルは手を添えた。

「もしかして・・・・ラーンなのか!?」

震える声で恐る恐るランドンを見てそう告げたのはニクソンと思われる人物だった。

「ニックも、まさか生きているとは・・・・良かった」

互いに死んでいるであろうと思われていた人物2人は、そう告げると肩を寄せ硬く抱き合った。

ニクソンは斬られて崖から転落後、何とか自力で泳いで対岸へ辿り着いたそうだ。
そこで倒れていたのを老齢の漁師に助けられた。
傷が癒えてからも一人暮らしの漁師をそのままに出来ず、3年前漁師が他界するまで一緒に生活を共にしていたらしい。

「もはや私には何も残されていなかった。キールを追われ、ランドンは消息不明と聞いていたので死んだものと思っていたが、まさか生きていたとは・・・・」

「それはこちらのセリフです。私はある貴族に拾われて家族同然に手厚い介護を受けました。以来その方にお仕えしています」

「そうか・・・・お互い幸運に恵まれたな。フローラが守ってくれたのかもしれないな」

「そうですね」

感慨深く呟いた。

「しかし、それが今どうしてこんな場所に!?」

ランドンの境遇を知り得ているニクソンにとって、到底このバラサインがランドンが昔を懐かしみ訪れる場所には思えなかった。

「先日トランゼの市で貴方は仔山羊を売りましたよね。その仔山羊が私の仕える屋敷で飼われていたものでしたから追わせて頂きました」

さらりとランドンが口にした。

「そうだったか・・・・。因果な巡り合わせだな」

フッと悲し気に微笑みを浮かべると目を閉じた。

しかし次に目を見開いたニクソンの瞳には全く違ったものが宿っていた。
強い決意が漲っている。

「私を捕まえに来たか!? 情報を提供したのは私だ。だが・・・・、そう簡単に捕まる訳にはいかないんだ!!」

そう言うが早いかニクソンは腰の剣を抜いた!

「私は何としてもフローラの仇を打ちたい!! フローラを死に追いやったライサンドをどうしても許すことが出来ないんだ!! フローラの死で奴が改心しているのなら、まだ許せずとも考える余地はあったのに、あいつはゴードン殿も死に追いやったばかりか、3年経って戻って来てからも乱行行為は留まる所か酷くなる一方だ!! 奴はあれから何人の者を死に追いやったと思う!? 奴だけは決して許しはしない!!」

その眼差しは真剣そのものだった。

様子を見ていたフリードルが“そこまで!”と言ってニクソンの剣を振り落とした。
既にニクソンは剣を構えて威嚇しているサビエルとミゲルの間に挟まれている。
並みの使い手では無い事を理解したニクソンは深いため息をつくと両手を挙げた。

「話はだいたい分かりました。そう言う事なら詳しく伺いましょう。もしかしたら私たちは手を組めるかもしれませんよ」

そう告げるとフリードルは不敵な眼差しで微笑んだ。

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~ Comment ~

NoTitle 

仲間が増えて、かな?
でも早く話が進んでほし~^^
いえちゃんとい進んでるんですけど、私せっかちなので(苦笑)

はのん様 

仲間はあまりもぅ増やしたくはないんだけど^^;
きちんと調べ終わったら皆やって来るから♪
そこからが、まぁ大変よ!(笑)

NoTitle 

海での死は偽装しやすいですからね。
潮の流れと魚の餌になりやすいこと。捜索に非常に人員と金がかかることを考えると、あまり探すことの効率がよくないんですよね。結構、かんがえるものです。人というのは。

LandM様 

そうですね。崖から海に落とされたのが不幸中の幸いでした。
死んだと思わせるには好都合でしたしね。
一歩間違えれば命はありませんでしたが、おそらく復讐心に燃えた信念でしょうね。

いつも有り難うございます^^
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