記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第3章-《34.実 行》

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日は徐々に天高く昇ろうとしている。
後1時間もすれば式の始まる正午となる。
煌びやかな衣装に身を包んだ王侯貴族や国の重鎮等がまだ疎らだが幾人か神殿の奥へと入って行く中、アーリアは既に女性用の控えの間の一室へ入っていた。

「・・・・これから、どうなってしまうの?・・・・」

少し怯えた様な表情でアーリアは呟いた。
心の中は不安でいっぱいだ。
来賓の者には、まだセイラル王子の死は知らされて居ない。
故に扉の外からは参列する夫人等の楽しそうな高らかな笑い声が聞こえて来て、それが更に恐怖を誘った。

「大丈夫ですよ、アーリア様。正午にはお式は始まります。きちんと神官長様も経緯を説明して下さるようですし、何の心配もございませんわ。先程そうご説明の使者が訪れたではありませんか」

裏門から神殿内に入って直ぐにこの控えの間に通された。
担当の神官から本日の予定を聞いた。
来賓の方々の着席後、正午前に呼びの者が来るとの事。
その者の指示に従い、大神殿前の大扉の許へ王族の方々及びアーリアには並んで貰い厳かに入場して頂きたいと言われた。
王を先頭に棺が担ぎ入れられ、その後ろを王妃様とアーリアが並んで入場し、更にその後ろをにサニエル王子とお妹等が続くと言う事だった。

「私怖いわ・・・・」

「大丈夫ですよ。皆思いは同じです」

マジミール様が言う通りに純白の衣装に身を包んでいると言うのに、当の本人は一度も姿を見せていない。
一体どういう事なのだろうか・・・・・。

「あの・・・・マジミール様は・・・・」

「ああ、マジミールも一緒に参列するそうです。大扉の前でお会いできますよ」

そうだった。第一従者であった彼は王妃様の遠縁に当たる親戚筋の者だと聞いた事がある。
セイラル様とも遠いとはいえ血縁関係もある。それに常に傍にある存在だった。
従者とは言え、傍に付いて見送る権利位許されているのも当然だった。


時を同じくしてその頃、少し離れた扉の前にはジリルが母を前に難儀していた。

「お願いよ、お母様。私とてもここではきちんとお話し出来ないわ。だからどうしても2人きりで話を聞いて頂きたいの」

「ならば後にして。このような不愉快極まりない場で大事な話しも何も無いでしょう!」

母を他の部屋へ移し閉じ込める等と言う芸当は、とても出来そうになかった・・・・。
時間は刻々と時を刻み、母とのこの押し問答だけで既に20分以上が経過していた。

どうしよう・・・・、このままでは直ぐに正午になってしまうわ・・・・。
考えあぐねていると、そこに侍女が飛び込んで来た。

「ナジル様! たった今ヨワヒム侯爵様がご子息様と神殿の方へ入られましたわ」

「まぁ、リヒテル様が!? お母さま、私先に参りますわね」

侍女に想い人の到着を見張らせていた双子の姉のナジルはその言葉に反応し、部屋を飛び出して行った。

「お待ちなさいナジル。私も一緒に行くわ。侯爵に御挨拶をしなければ」

母もナジルを今ヨワヒム侯爵家に嫁がせようと必死に働きかけている。

「待って、お母様。話をッ! いっ、1分で済みますから。そうすれば邪魔だて致しませんからッ!!」

ジリルは扉越しで大きく両手を広げて母の行く手を遮った。

すると母もずっとこのままでは流石に不味いと思ったのか、ついにジリルに根負けした。

「もぅ、仕方ないわね。ホントに1分だけよ。それで何なの!?」

ため息交じりではあったが、側妃はあまりにも懸命に食い下がる娘に絆されて、何とか話を聞く気になってくれたらしい。
けれど、とても他所の部屋へ等連れて行ける状況では無かった。

「・・・・あ、あのね、お母様、実は・・・・・」

きちんと話そうと思うけれど見るからに母がイラついているのも伺えて、その姿を見ると更に身が竦んで直ぐに言葉が出て来なかった。

「本当に何なのよ一体!! もぅ、1分経ったでしょ。行くわよ」

側妃が深いため息をつき、何やらぶつぶつ言っている。

「出たくも無い式だけれど、出ない訳には行かないわね。貴女もぐずぐずしていないで早くお出でなさいよ」

正に側妃が立ち上がろうとしたその時。

「ごめんなさい、お母様!!」

ジリルは王妃様より渡されていた小瓶に入ったミストを母の口元目掛けて思いっ切り何度も噴射した。

「なっ、何なのよイキナリ!! これッ、ジリル止めなさい!! 突然何というふざけた真似をし‥‥‥」

言葉途中で側妃は急にパタリと言葉が途切れ、そのまま再び椅子に崩れるように座り込んでしまった。

「おっ、おかあさま? ・・・・だっ、大丈夫?」

ジリルは母にそっと近づき頬をペチペチッと叩くと、息をしている事を確認し、ホッとため息を一つ漏らした。

王妃様からは即効性のある眠り薬の液体と聞いていた。
これを使わずに済めばそれに越したことは無かったのだが、部屋からも連れ出せず、真面に話しも出来ぬでは使うより他手が無かった。

「ごめんなさい、お母様・・・・」

ジリルはそっと自分の身に纏っていたストールを母の肩に掛けるとそのまま控えの間を後にした。

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