記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第3章-《35.勇 気》

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ジリルは部屋を出ると長い廊下を歩き告げられた大扉の前を目指した。
計画の成功の有無は大神殿の大扉の前に居る警護にあたる者に伝える様にと言われてあった。
その人物は直ぐに見つける事が出来、左右に居るどちらの者に話しかければ良いか少し途惑っていると、見覚えのある面差しに似た者が居る事に気付き、ジリルはその者のすぐ傍まで行くと少し視線を落し俯いた。

「あっ、あの・・・・」

「はい、何でございましょうか?」

その者は少し屈んで目線の位置を私の目元に合わせてくれると優しく覗き込み尋ねてくれた。

「ねっ、眠っています・・・・」

多くを語らず端的な言葉で伝える様に言われていた。

突如告げられた言葉に、その者は全く驚く様子も無く優しく微笑んでくれた。

「あの・・・・連れ出せなくて・・・・。話している事、通じていますか?・・・・」

「了解です。ご立派でしたね、姫様・・・・」

柔らかな微笑の先から大きな腕が伸びて来て、その騎士はジリルの頭の上に手を乗せると撫ぜてくれた。

ビックリして、俯いていた顔を上へ持ち上げ見上げれば、とても優しい眼差しがあり、次の瞬間先日王妃様の部屋で見えたあの古い城の様な建物の中で、自分とは違うけれど何故か自分の様に思える娘と同じ年頃の騎士が笑顔で会話をしている映像が頭の中を駆け抜けた。

「・・・・えっ!?・・・・あなたは・・・・?」

手を離された途端また映像は途切れたが、何故だか今度は先日感じた様な感覚とは違い
とても安心でき、心が落ち着いた。

「さぁ、そろそろお席へ。もう暫くすれば式が始まります」

「はいッ」

護衛の騎士の声が何処か耳に心地よく、自然とジリルは正装姿に身を包んだ若い騎士に微笑み掛けていた。
あの時の従者とはまた違ったこの者の醸し出す安心出来るこの感覚は一体何なのだろうか?
一人大神殿の奥へと足を踏み入れた途端、正装に身を包んだ紳士淑女に何処か気後れしてしまい、再び一歩後退し後ろを振り返れば、何故だかとても優しそうな眼差しで自分を見つめる柔らかく暖かな瞳がそこにあった。
少し頬がいつもより暖かく感じられるのは緊張していたせいなのだろうか?

ジリルが神殿の奥へと入って行ったことを確認すると、マジミールは傍に居た仲間に目配せし、側妃の父と叔父の両伯爵、子爵とその傘下に入っている貴族の面々、国の重鎮等計13名を捕らえにかかった。
神殿外にいた者は有無を言わさずその場で引っ立て、既に神殿内へ入っていた者は側妃の名を出し外に連れ出し捕らえた。
辺りは多少ざわついたが、捕らえられた者に向けられる眼差しは皆とてもシビアなものだった。


王は全ての事実を知った後、マジミールの才能を改めて評価し、この事件の真相を暴くべき最適人物としての判断を下した。
本日付でマジミールには今ある騎士育成指導教官の地位の他にも正式に憲兵隊特別首席補佐官を任命し、その任命書は既に神殿内に入っていたセイラルの許まで王の勅使が届けに来た。
勅使からの話に二つ返事で納得したセイラルは、その場で王太子としての王からの勅命を直接マジミールへと伝えると、任命書を手渡した。
その命を受け、マジミールは直ちに周囲に待機していた信用のおける者等を集めると即刻新たな策を講じその作戦に出た。
側妃を含む捕らえられた者の今後の処遇については、何処までマジミールに権限が与えられるかは分かってはいないが、王がここまで動いてくれた事に、退王も王妃もそれなりに満足していた。

王は今朝方、全ての話を終えた後、父退王と妻である王妃の前で苦しそうに呟いたと言う。

『・・・・私が側妃を駄目にしてしまったのか?』

『それもまた一理あるやもしれんのぅ』

『王妃には無いあ奴の小悪魔的な所がたまらなく魅力的だった・・・・』

『小悪魔!? あれが? 王様の感覚は私には理解出来ません。分りたくも無い!』

『・・・・お前も昔はか弱く可愛かったのになぁ・・・・』

『・・・・王の愛を失い、度重なり息子が殺されかけて、弱いままで居られる母はおりません!!』

『・・・・そうだな。全て私のせいだな・・・・。カミエラ・・・・、セイラルを守ってくれた事、感謝する・・・・』

『ラルクロード様・・・・』

セイラルの生還劇を背に、王と王妃の関係も少しずつ変わって行くかもしれない。

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