記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第3章-《36.動 揺》

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時刻は刻々と迫り、間もなく正午。

「そろそろお時間です」

神官長様の使者が訪れ、アーリアに時を告げた。

「さぁアーリア様、参りましょうか」

付き添ってくれるファンネがそっとアーリアの前に手を差し出した。

もう、後戻りは出来ないと、アーリアは大きく息を吸い込むとフーッと吐き出し、何かを決意した様に立ち上がるとファンネの手を取った。

「分りました」

「アーリア様、皆さまいらっしゃいますから大丈夫ですよ。行ってらっしゃいませ」

部屋にターニアを残し、アーリアはファンネに導かれて前の廊下へと歩み出た。
前へ進むファンネは何処か足取りも軽やかで、アーリアは必死になってついて行った。
やがて広いフロアーに出ると対側に大きな扉がデンと構えられていた。
話しでは扉の前で王族と共に参列し、棺と共に入場すると聞いていたのだが、そこには大扉の左右に護衛の騎士が2名だけが佇んでいるだけだった。

「・・・・・まだ皆様お揃いではないのね。でも、もう時間が無いのではないの? 何かトラブルでもあったのかしら?」

「いえ、何の問題もございませんよ。さっ、アーリア様、早くこちらへ」

佇み、足の竦むアーリアをファンネが後ろから後押しする。
アーリアは戸惑いながらも一歩二歩と大扉に向かって近付いて行った。
扉の前まで近づいた時、視界の中に飛び込んで来た者の姿を見て、アーリアは思わず息が止まりそうになった・・・・。

「あっ、あああ貴方は・・・・・。でん・・・・か?」

そんな馬鹿な!
殿下は亡くなった筈だ!!
それに、この衣装は一体・・・・。

「申し訳ございませんでしたアーリア様。事情があり、今まで姿を偽っておりました事をお許しください」

告げるなり、深々と頭を下げるセイラル殿下の姿に、アーリアは呆然としていた。

「・・・・生きて・・・・いらしたのですか?」

「はい、主の指示で仮死状態になる薬で暫く眠っておりました。ですが既にこうして目覚め、元気にしております」

「・・・・それは良かったけれど・・・・、何を言っているの? 主の・・・・ご指示って・・・・?」

「アーリア様に今までお見せ致しておりましたのは私の仮の姿。私の本当の名はマジミール・レナン・エドワールと申します。ずっとセイラル王子付第一従者兼騎士としても務めさせて頂いておりました」

「・・・・そんな・・・・」

その言葉に一瞬何も考えられなくなった。
初めてマジミール様と城で再会した時、彼もマジミール・エドワールと名乗っていた。
では、あのラルは・・・・? 自分の知るマジミール様は・・・・?

「・・・・・訳が分からないわ・・・・。だって、私の知っているマジミール様は・・・・、全然違うもの・・・・。では、私の知っているマジミール様は誰なの?・・・・ここでお会いできると思っていたのに・・・・、一体何処に行ってしまわれたの!?」

突如明かされたセイラル王子の偽りの正体。それが本当に従者マジミールなのだと言うのならば、自分の知っているマシミール様は一体・・・・・?

言葉を吐き出すとと共に、アーリアはガタガタと全身が震え出した。
あれ程までに自分に愛を囁いてくれ、自分との結婚を望んでくれていた筈なのに、いつの間にかいなくなってしまった。
セイラル王子の腹心の従者と分かっていたから、きっとこの場で会えると思い信じていたのに・・・・。
それなのに・・・・・。

亡くなったと思っていたあのセイラル王子が・・・・いや、従者マジミールと名乗るこの者が生きていてくれた事は大変喜ばしい事だ。
だが、自分の側から突如マジミール様が居なくなったのでは話にならない・・・・。

「・・・・では、私はマジミール様に・・・・捨てられてしまったの?」

(騙されていたのだろうか? ずっと・・・・・)

涙が溢れ出し、その場でヘナヘナと全身の力が抜けて行き倒れそうになるのを、しっかりと後ろから支える手があった。

「・・・・如何言う考え方をすれば、私から捨てられた等と言う言葉が出て来るのだ?」

聞き覚えのある声と温かい腕の感触に、ギョッとして後ろを振り返ると、そこには婚礼用の礼服に身を包んだ何時もとは違う白金の髪を靡かせる正装姿の愛しのマジミール様が佇んでいた。

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