記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第3章-《39.一 時》

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婚儀が無事に終わり本来ならば引見の時間まで少し寛げる余裕もあったのだが、アーリアとセイラルは式の開始時刻が遅れた事から休む間もなくそのまま群衆の待ちうけるバルコニーの前へ出向く事になった。
勿論セイラルの腕にアーリアは依然抱かれているままだ。

「お願いだから、もう降ろして」

「駄目だ!」

「もう震えも止まったし、足腰にも力が入って来た気がするの。そんなに心配しなくても大丈夫だから降ろして」

流石にずっとこのままの状況と言うのは恥ずかしい以外の何ものでもない。

「・・・・本当に大丈夫か? 無理すると今夜キツイぞ」

「えっ!?」

何を言っているのか瞬時に理解出来なかった。

「まぁ、分らないなら別に良いけど・・・・。でも、まだアーリアが足りないから、もう暫くこうしていたい。我慢して・・・・」

「足りないって・・・・」

「今まで離れていた分、補充しないと」

満面の笑みを浮かべ目の前に唇が迫って来て、民衆の前でもアーリアは終始頬を真っ赤に染める事となった。
周囲を全く気にする様子の無い大胆なセイラルの行動は、恥ずかしい以外の何ものでも無いけれど、とても幸せで・・・・。でも、少しだけこの羞恥心の無さはだけは勘弁して欲しいと思った。


歓喜の中で引見は滞りなく無事終了し、夜の晩餐会までやっと少しだけ休息できた。
アーリアは自室で婚礼衣装を脱ぎ、王妃様に選んで頂いた公式の場でのドレスに着替えを済ませると、ほんの一時だけの休憩。
ターニアの注いでくれた紅茶と軽食のサンドイッチをつまみながら小言を聞いていた。

「それにしてもセイラル様も酷いですわ。私にだけ内緒にして! ファンネ様もマリーサも知っていたと言うではありませんか!」

どうやら式の最中ファンネより控えの間で事の全てを聞いたらしい。

「私も全然知らなかったのだからそれは同じよ。まだ詳しいことは伺って居ないのだけど、とても大変だったご様子で・・・・、でも、本当に良かった・・・・。まさかマジミール様がセイラル様だったなんて・・・・」

アーリアは未だに半分この幸せが信じられない気分だった。
今思い出しただけでもあの婚儀がまるで夢の様で・・・・、本当にあの方の花嫁になれたなんて信じられない気持ちだった。

「本当に夢みたい・・・・」

つい、2時間前までは想像すらしていなかった現実に、戸惑うほどの喜びがあった。
幸せすぎて怖いと思ったのは初めての経験だった。

「でも、アーリア様も仰って下されば宜しかったのに・・・・。あのマジミール様をお好きなら仰って下されば、私、無理強いなんてしませんでしたのに・・・・」

『何が無理強いだって?』

寝室の扉の内側から声が聞こえて来たと思い振り返れば、扉の奥からセイラル王子が現れた。

「殿下!」

「美味しそうなサンドイッチだね」

そう言ってアーリアの手に握られていた食べかけのサンドイッチを奪い取りパクリと口に放り込んだ。

「で、殿下!!」

「うん。ウマい」

驚いて真っ赤になりながら慌てるアーリアを他所に、セイラルは余裕に満ちた面持ちで満面の笑みを浮かべるとアーリアの頬に軽く口づけ、その横へ座ると肩に腕を回した。

「でっ、殿下もお食べになりますか?」

「頂こう。早くアーリアに会いたくて、急ぎ着替えだけ済ませて来たものだから食事どころでは無かったからね」

「で、殿下ッ!」

恥ずかし気も無く告げられる言葉にアーリアは更に頬を染める。
ターニアも傍に居ると言うのに、何でこう言う事をズケズケと言えるのだろうか、この人は・・・・。
恥ずかしくは無いのだろうか?

「では、あまり時間も有りませんが私は少しだけ下がらせて頂きますね。もし、御用がございましたら仰って下さい」

「相変わらず気が利くね。ターニアは」

「お褒めに預かり光栄です殿下。では、失礼致します」

深々と頭を下げて去って行くターニアが扉を閉めた途端、セイラルはテーブルの上に置かれているサンドイッチでは無く、アーリアの唇を奪った。

「あっ、まじ・・・・・んっ、・・・・セイ・・・・ラルさま・・・・」

「ああ、アーリア・・・・リア・・・・、私はとても夜まで・・・・待てない気分だ・・・・」

最初は触れるだけの啄むような口づけが交わされていたが、次第にそれは濃厚なものへと変わって行く。
触れる毎に深くなり互いを貪り合うよな唇が離されたのは、それから約10分後。
次の祝宴行事に赴く為の移動時間となり、ターニアが呼びに戻って来た時には、結局アーリアは深すぎる口づけの余韻に酔いしれて腰が立たなくなり、再びセイラルの腕に抱かれ部屋を出て行く事となった。

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