記憶の彼方とその果てに

記憶の彼方とその果てに -第3章-《40.祝 宴》

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ガーデンパーティ会場脇に設けられた仮設の東屋で僅かな時間だが待機し、そろそろ時間だと思い立ち上がった時だった。
またもセイラルに抱き上げられそうになったアーリアが制止する言葉を投げかけた。

「もういいです。大丈夫ですから」

少しのぼせただけで、もう全然平気なのに一向に聞き入れる様子も無く「いいから、いいから」と再び抱き上げられた。

「もう本当に、これ以上は・・・・止めて下さい!」

アーリアは、ついに少し強めに訴えた。
ガーデンパーティのようなどちらかと言えば開放的な場で、再び抱き上げられたままでは軽く皆々と話を交す事もままならない気がしてならなかった。
それにもし、抱き上げられている理由を知られでもしたらそれこそ良い笑いものだ。
先程なども化粧室に行きたいから降ろしてと訴えても、傍まで付いて来ようとする始末で、流石にこのままでは不味いのではないかと思い始めた。
自分は良い。でも、自分の為にセイラルが皆々から何か陰口を叩かれたり、噂の種にされるのではないかと思うと、とても痛まれなかったのだ。

「・・・・でも、ずっとアーリアを身近に感じていたいのだ」

その言葉に胸は高鳴ったが、その想いはこの際無視する事にした。
それがセイラルの為なのだと自分に言い聞かせて、ついにアーリアとセイラルは軽い押し問答を始めてしまった。

「それは、私もそうですが・・・・、歩けないのならばいざ知らず、既に歩ける状況にあるのにわざわざお手を煩わせる事ではないと思うのです!」

「別に全く煩わしいとは思っていないが?」

「・・・・ですから、これはセイラル様の感情だけで左右される問題では無くてですね、見ている皆がそう思うのではないかと・・・・」

「別に新婚なのだしその様な事を気にする必要はないよ。皆、微笑ましいと言ってくれているではないか」

「それはッ・・・・、まかりなりにも一国の王太子様相手に、それ以外言い様が無くて皆様も寛大なお言葉をかけて下さっているだけで、それを真に受けて新婚でも何でもこうまでされるのは如何なものかと思うのです!」

言った・・・・。ついに言ってしまった・・・・。
これで、何か言われるかもしれないと真剣に両目を瞑っていると・・・・。

「アーリアは私に抱かれている事が・・・・嫌だったか?」

思い掛けない言葉が返って来た。

「で、ですから! そう言う事ではなくて・・・・。いっ、嫌と言う事はないですが、はっきり言って少しは恥ずかしいです・・・・。それに他の者に対する示しもつかなくなります。このようなセイラル様のお姿を見れば威厳だって削がれる事に・・・・」

「別に今、政務を熟している訳でも無いのだからそんな事気にしなくて良いのに・・・・。他の者も皆遠慮する事なく夫人と仲良くすれば良いんだ。そうすればアーリアだって・・・・」

言葉の後半、ぼやく様にボソリと呟いた。

「セイラル様!!」

「わかった。分かったよアーリア・・・・」

パーティには式に出席して頂いた王侯貴族の方々や国の重鎮等が集まり、皆に挨拶するのだ。流され続ける訳にはどうしても行かなかった。

「御免なさいねアーリア。今までずっと貴女への気持ちを押しこめ続けて来たものだから、もう嬉しくて仕方ないのよ。やっと大手を振って貴女の側に居られるのですもの。少しは大目に見てあげて」

「はぁ‥‥」

王妃様の言葉に、それ以外掛ける言葉が見つからず、少し不味かったかと後悔し始めた時だった。

「でも、確かにあれではちょっとウザイわよね・・・・」

思いがけない協力的な発言に思わず目を見開いた。

「母上!!」

「あら、失言。でもね、貴方も程々にしないといつかアーリアに愛想を尽かされてしまいますよ」

凝視して食い入るようにこちらを見つめるセイラル王子の姿に思わず苦笑いを浮かべ、一応手を振りそんなことは無いと意思表示をした。

だが、その王妃様の言葉のお蔭か、結局セイラル王子はアーリアを腕から降ろすとガーデンパーティの席では最初は笑顔で共に挨拶に回っていたのだが、一段落すると自らアーリアの側を離れ単独行動を取るようになってくれた。
良かったと、瞬間的には胸を撫ぜ下ろしたのだが、勝手な・・・・。本当に勝手な話だが、そうなると今度は自分の方が気にかかり、ずっとセイラル王子の後を目で追っていた。

先程挨拶に回った侯爵夫人とその令嬢の側で何やら話が弾み、令嬢はほんのり頬を染めている。

(あっ、今笑いかけた!!)

気にかけてはいけない。目で追ってはいけないと思いつつも、気になり始めたらそれを止める事等出来なくなってしまい、追えば今度は自分では無い者に向けられるその笑顔の理由が気に掛かり、結局自暴自棄に陥った。

「私、何をやってるんだろう・・・・」

側を離れるしか為す術は無いのだと気付き、人酔いしたので少し風に当たって来ると侍女に言い渡し、脇にある溜池の畔まで涼みに出かけた。

「・・・・ラルのばか・・・・」

溜池に住む水鳥の仲睦まじい番の姿を眺めていると何だか自分が更に情けなくなってきた・・・・。
自分も一緒に居たい気持ちは一緒なのに、周囲を気にして素直になれなかった。
本当は自分をずっと抱き上げて傍に居てくれるのは凄く嬉しかった・・・・。恥ずかしくもあったけれど・・・・、本当にとっても嬉しくて・・・・。
自然と涙が溢れ出し、自分の馬鹿さ加減がつくづく嫌になった。
戻ってきちんともう一度セイラルと話をしようと心に決めた時だった。

「如何されたのですか?」

突然の声にビクリッと身体を震わせ恐る恐る振り向くと、そこには見知らぬ若い男が立っていた。

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