「パウリンの娘」
パウリンの娘 《番外編》

2013年Xmas特別企画/幸福の在処9~パウリンの娘番外編~

 ←2013年Xmas特別企画/幸福の在処8~パウリンの娘番外編~ →新年のご挨拶
王は緊張した面持ちで、そっと扉の外から声を掛けた。

「・・・・レライ、私だ」

『・・・・はい・・・・』

懐かしい夢にまで見た妻の声だった。

「申し出を聞き入れてくれて有難う」

『・・・・いえ‥‥』

「あの手紙の件だが・・・・、あれは真実では無い」

『・・・・でも、あの子の雰囲気は・・・・貴方ととても良く似ていたわ・・・・』

「似ていようが似ていまいが私は知らん。それにアイツの本当の年齢は9歳だ!」

『・・・・9歳!?』

少し幼く見えると思っていたが、9歳と言われてまさかと思いながらも何処か納得するものがあった。
でも、それがアイスラントの過去を証明するものに成り得るのだろうか。

『・・・・年齢なんて関係ないわ』

「大ありだ! 私があの女と関わりを持ったのは17の時の一時期だけだ! この意味は分かるだろ?」

9歳ならば少なくともアイスラントと19の頃まで関わりがなければならなくなる。

『・・・・うそ・・・・』

ハァーっと、扉の向こうから大きな溜息が聞こえた。

「本当だ。私は17の時、あの女に騙され罠に嵌った。だが思惑を知りその後失意に陥った。その直後、上の姉の侍女としてあの女は姉の嫁ぎ先である北の領主オイゲン伯の許に共に向かった。以降私は一度も会ってはいない。会う言われも無い。それから1年と暫くの後あの女は姉の妊娠中に伯を誘惑し、揚句身ごもり伯の子を産んだと聞いている。それが9年前だ」

『・・・・それが、もし本当なら・・・・』

「もし、では無い! これが事実だ!!」

『本当に!? ・・・・でも、お腹にも・・・・おっ、御子が・・・・、ぐすん・・・・、いるっ・・・・て・・・・』

鼻をすすり、声を震わせる妻の声にアイスラントは更に扉に縋り付いた。

「そんな事は知らん! あいつはかなりの尻軽女だ。誰の子かなど私が知る由も無い。悪いが私はあの女に騙されてから女嫌いの一途を辿り、お前に会うまでは異性と関わりを持ちたいなどと思った事は一度も無いし交情を深めた事はない! お前に会ってからは勿論、他の者など目に入らない!! だから私はお前を裏切ってなどいないし、私の子を産むのはお前だけだと今でも勿論思っている!!」

「・・・・信じても・・・・良いの?・・・・もし、また・・・・う・・・・うらぎられたら・・・・わたし・・・・」

中から嗚咽の混じった、すすり泣く声・・・・。

「またでは無い! 私はお前を裏切ってなどいない!! 私があの女の屋敷に行った等とあの女がほざいたらしいが、私は勿論一度も行った事は無い。これは城に帰り視察先や諸々の資料を確認して貰えば分かる事だ。本当なんだ! だから分かってくれ! 戻って来てくれ。頼む・・・・。お前がいなければ、私はこの国の王で等いられない!! お前は再び国民を不幸にする気なのか? それはお前にとっても不本意ではないのか?」

傍で聞いていた二人の侍女は王の言い様に苦笑いを漏らした。
何処の世界に王妃に戻って来て欲しいが為に、このような戯言を述べて説得する王が居るだろうか? ここまで来ればもう末期だ。
この王は、王妃の言葉一つで国をも滅ぼす破王になりかねないのではないだろうか?

『・・・・分かったわ。・・・・少しだけ考える時間を下さい・・・・』

「レライ!! 本当に何も無いのだから、何故直ぐに戻って来てくれると言ってくれないのだ?」

『・・・・今は頭が混乱していて、考えが纏まらないの・・・・。私も色々あって、少しだけ考えたいの・・・・だから・・・・』

「何かあったのか?」

扉に縋り付き王は王妃の事が心配で仕方ないと言った様子だ。

『いえ・・・・そんな大した事では・・・・。でも、貴方の仰る言葉が真実ならば、離れている理由は確かにありませんから、心の整理をつけさせてください・・・・。暫くはかかるかもしれませんが・・・・悪いようにはしませんから・・・・』

「分かった・・・・。だが、必ず帰って来てくれ・・・・。それだけは約束してくれ・・・・」

『・・・・分かりました。・・・お約束致します・・・・』

「レライ、有難う・・・・。感謝する・・・・」

王は扉越しに額をつけ、目を閉じたまま安堵したように大きなため息をついた。
やがて、傍に居た侍女の手を取り、何度も感謝の言葉を述べていた。

『まだ話は終わっていません』

「だが、戻ってくれるのだろう!?」

アイスラントはやんわりと、少し不安に満ち戸惑うような声音でそう確認した。

『戻るには戻りますが・・・・でも、本当に今直ぐは無理なのよ・・・・」

その言葉に、アイスラントは何故直ぐに戻る事が出来ないのかと問い詰めたい思いでいっぱいだったが、敢て今はその言葉を飲み込んだ。
ここで異論を述べ、妻を刺激するような真似は良くないと・・・・。事は穏便に済ませなければならないのだから。

「・・・・当然だ。帰って来てくれるならば何時まででも待つ・・・・」

これ以上待てないと思っていても、待つと言う答えしか道は残されていなかった。

『自ら探しに来るなんて・・・・、皆に迷惑をかけているのではない?』

自ら王が捜索に加担していたとなれば、おそらく宰相であるシザーレの負担はかなり大きいものだろう。

「・・・・・」

王は無言だった。

『迷惑を掛けた分、これからはしっかり政務に励んで下さい。クリスマスの催しには参加しますから、そのつもりで準備をお願いしても宜しいですか?』

「勿論だ。任せてくれ!」

『・・・・滞った政務も、それまでにしっかり片づけておいて下さいね』

「当然だ。全部片づける! 恩にきる!」

『それは私にでは無くシザーレに仰ってあげて下さい』

「ああ、そうだな・・・・。お前の帰りを心から待っている・・・・。本当に愛しているよ、レライ・・・・」

『私も・・・・愛しています』

扉を挟み、二人は互いに頬を寄せ合った。
ローレライの瞳からは安堵の涙が溢れていた。

押して頂けると励みになります^^

にほんブログ村



総もくじ 3kaku_s_L.png パウリンの娘
総もくじ 3kaku_s_L.png 記憶の彼方とその果てに
総もくじ  3kaku_s_L.png パウリンの娘
総もくじ  3kaku_s_L.png 記憶の彼方とその果てに
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ&感謝
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【2013年Xmas特別企画/幸福の在処8~パウリンの娘番外編~】へ
  • 【新年のご挨拶】へ

~ Comment ~

NoTitle 

生まれてくるだろうお子さんには、なによりも「冷静さ」「理性」を備えていてほしいものであります。

……この両親からでは無理か?(^^;)

ポール・ブリッツ様 

どうでしょうか?
そう言われてみてチラッと考えたらある場面が浮かんできました。
今の所私の中では反面教師にして結構しっかりした子に育つ予定ですが、多分大人なにり好きな人でもできればやはり抗いながらも無理そうな気が(笑)
最終的にはやはりこの親にしてこの子有になりそうな気もしますね^^;

いつも有り難うございます。
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【2013年Xmas特別企画/幸福の在処8~パウリンの娘番外編~】へ
  • 【新年のご挨拶】へ