「パウリンの娘」
パウリンの娘 《番外編》

2013年Xmas特別企画/幸福の在処11~パウリンの娘番外編~

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アイスラントには王妃が城へ戻る前に、政務より先にやるべきことがあった。
マグナーヴェル伯爵から聞いた子爵夫人の滞在先へは直ぐに憲兵隊を送ったが、既にそこは蛻の空だった。
直ちにその後の形跡を辿り、裏街道を抜け逃亡中の所を憲兵隊が捉え、身柄を拘束したのは3日前の事だったと言う。
アイスラントが城に戻った時には既に取り調べも終わっており、今回の一見に手を染めた理由も義姉の夫であるオイゲン伯に本当に腹の子は自分の子なのかと疑念を抱かれ、屋敷を追い出されそうになった所へ伯爵からの話が舞い込み利用できないものかと思いを巡らせていたのだと言う。
話を聞いてみればナント伯爵は面会に応じただけで内容によっては御足代として前金で1000£を用意する心積もりがあると言うではないか! これに乗らない手は無いと思ったそうだ。
だが、元々ずっと隠し通せる内容とは思ってはおらず、王妃との面会を終えたら前金だけを受け取り息子をオイゲン伯へ預け逃亡する予定だったらしい。
既にあまり聞く事も無かったのだが、アイスラントはどうしても今後の処遇については自らの手で下したかったのだ。
そして、一言言ってやりたかったのだ!!

「良くも我が妃に対し、あのような虚実を並べられたものだな!」

「私は何一つ肯定していないわ。否定しなかっただけよ。一言も貴方の子供だなんて言ってはいないし、伯爵が勝手に勘違いして私を連れて行っただけなのに物事を悪い方にばかり考えちゃって笑っちゃったわ。貴方もとんだお子ちゃまと結婚したものね。ホントに可哀想」

アイスラントは妻を愚弄する女の姿に怒りが込み上げて来るのを必死で抑えた。
何処までふてぶてしいのか!!

「お前のようなアバズレには妃の良さは一生分らん。では、お前の邸に私が出向いたと言う件についてはどう釈明するのだ?」

あの件がなければ妻をこれ程までに悩ます事も無かったのだ。

「私は一言も相手が貴方だとは言っていません! これも勝手に王妃様が勘違いしただけの事です!」

話の経緯は戻る前に王妃の侍女に一通り聞いていた。
概要は殆ど伯爵が話したと言う事だったが、それにしても酷い言い草だ。
やはり、この女と話すだけ無駄だと思った。

「勘違いも何も私はお前の邸に等に寄った覚えは一切無いがな」

「あら、それは失言。正確には私の居るオイゲン伯の邸だったわね」

「あの邸に・・・・お前は居たのか?」

「だって、旦那は3年前にポックリ行っちゃったし、息子に後も継がせて貰えないのに居る意味がないじゃない。まがりなりにも息子はオイゲン伯爵家の跡継ぎになれるかもしれないんだから戻っても当然でしょ」

悪びれる素振りも無く、犬猿の仲だとは言え伯の正妻の弟である自分を前に口にする言葉だろうか? この女の神経を疑う。

「伯は姉との間の長男に後を継がせるつもりらしいがな」

「そんな事、未だ分らないじゃない!」

そこでアイスラントは一通の手紙を差し出した。

「これはそのお前の信じる伯からの書状だ」

サーベラはその手紙を凝視し、急ぎ受け取ると粗々しく見開き、読み始めた。
やがてその手を止めると呆然とし、立ち尽くした。

「・・・・そんな・・・・」

「色々お前について調査していた所、過去についても義兄からの要請もあってな、今回初めて色々と調べさせて貰った。あの義兄の子と思われていた9歳になる息子も、どうやら必ずしもそうとは限らないようだな。その腹の子も義兄に擦りつけるつもりだったようだが、それは些か無理だろう。実際にはもう5か月を超えているそうではないか。本当は妊娠を示唆して伯の下に再び舞い戻り認知させる為に関係を迫ったのではないのか? これは立派な詐欺行為だな。お前が金を積んで黙らせた医師の証言も取った。義兄に全てを伝えた所、即刻お前の息子の認知を取り下げる手続きを現在行っている。そしてその腹の子も認知するつもりは勿論無いらしいがどうする?」

今までカモにしていた土台を失い、どうしていいのか分らないのかサーベラは信じられないと言う表情で穴が開くほど手紙を見つめ続けていた。
明らかに戸惑っている様子だった。

「今後の生活を心配しているのか? そうだな。そのような身重では働くにしても困るだろうな。だが案ずることは無い。お前は1年間マビラスの塔での刑に服して貰いその後、国外通報だ。子は認知しないまでも育てる気が無いのならば伯爵は成人するまで面倒を見てやっても良いとまで言って下さっている。伯の厚情に感謝するんだな。引っ立てろ!!」

サーベラにはもう王に対し造言を吐く気力は残されていなかった。

今更過去において、この元侍女と共謀し自分を陥れた姉を救ってやる気は毛頭無かったのだが、愛しい妻の為にどうしてもあの女を排除しておきたかった。もう生涯顔を合わさなくても済む様に。
王は拘束され、連れて行かれるサーベラを見送りながら冷ややかな視線を送り続けた。

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