「パウリンの娘」
パウリンの娘 《番外編》

2013年Xmas特別企画/幸福の在処14~パウリンの娘番外編~

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アイスラントは最初緊張からか手を強張らせていたが、次第にいつもとは違うかすかな腹部の感触に気付くとその手からは次第に力が抜けて行った。
ローレライはお腹の子が苦しいのではないかと心配し、妊娠が分かってからは身体の線を保つコルセット類を一切身に付けていない。その為服の上からでも障れば心なしか腹部がわずかに少し丸みを帯びて膨らみ始めているのが伺える。
アイスラントの瞳から一筋の涙が零れ落ちた。

「えっ、あっ、アイスラント!?」

初めて目にする夫の涙にローレライは少し戸惑った。

「・・・・すまん。嬉しくて・・・・、感無量だ・・・・」

物言いは少し硬いが、それがとてもアイスラントらしかった。
ローレライは持っていたハンカチで、皆に気付かれないように汗でも拭うかのようにそっとアイスラントの目元を押さえた。

「すまん・・・・」

「良かった。喜んで貰えて」

にっこり微笑みそう告げれば、当たり前だ!と叱られた。
本当に自分との間の子供をこんなにも待ちわび、喜んでくれている事が嬉しくて仕方がなかった。

「少し食べ過ぎみたいなお腹でしょ? 私もずっと頭では分かっていたのだけれど、もし間違いだったらどうしようって少しだけ不安だったの。でもこうやって食事はあまり取れなくてもお腹は少しずつ膨らんで来て、そしたら直ぐにでもアイスラントに伝えたくて仕方がなくなったわ。だから今は半信半疑ではなくて、ここにこの子が居てくれる事が凄く嬉しくて仕方ないの。だから今私はとっても幸せなの」

柔らかな笑顔でローレライはそう呟いた。

「そうだな。幸せだな。こんな満ち足りた気分は今までにない。お前が戻って来てくれた事は勿論嬉しいが、この報告のお蔭で嬉しさが2倍、いや3倍に膨らんだ気分だ!」

「キャッ!!」

アイスラントは言い終わるや否や何を思ったのか、いきなりローレライを抱き上げた。
そして、会場の一番前の壇上へずんずんと歩いて行く。
ローレライは頬を真っ赤に染めている。

その行動に周囲は呆気に取られ、一歩歩く毎に皆の視線を釘付けにした。
そして壇上に立つとアイスラントは皆に向け声を張り上げた。

「皆の者、聞いてくれ! 王妃が懐妊した。初夏の頃には私に家族が増える事になった。王妃の安産を祈願して今夜は皆で祝いの美酒に酔いしれてくれ。無礼講だ!!」

知った途端に安産祈願とはとても気が早い話だが、誰も異議を唱える者も無く、歓喜とも歓声ともつかぬ叫び声が城内に広がった。

傍に駆け寄る兄に自分とアイスラントの両親たち。そして多くの仲間。
皆が笑顔で祝ってくれている。

「レライ良かった・・・・。本当に良かった・・・・」

兄などは号泣している。
妹の懐妊ですらこれほど喜ぶ位だ。もし、我が子ともなれば、どのような状況になるのかと想像するだけで少し怖い気もする。
ローレライはアイスラントの腕から降りるとそっと兄に寄り添った。

「有難う、お兄様。色々心配をかけてごめんなさい」

「うん。・・・・うん・・・・」

まだまだ兄の涙は止まりそうにない。

「ルシオン様、おめでたい事なんですから、ここは泣かずに笑って下さい」

「分かってはいるんだけど・・・・」

兄に優しく手を添え、涙を拭きながら慰めるのはローレライの第二侍女のサンドラだ。
二人が婚約して既に1年以上になる。その姿も微笑ましかった。

二組の姿に当てられたのか、メイテルがシザーレにそっと歩み寄る。

「そろそろあのお二人も認めて差し上げては如何ですか? 先日もおっしゃっていたではありませんか。アイツの根性だけは認めてやると」

「そうだな・・・・」

この二人の関係は未だ謎だが、ローレライは良い組み合わせだと思っている。
今日のこの良き日に皆が幸せになってくれると良い。
ローレライはそう願わずにはいられなかった。

手を取り合い自然と互いに嬉しくて笑みを零して見つめ合う。
皆は既に祝いの美酒に酔いしれていて、王と王妃の行動に気を留める者なども既に無く、勝手にあちらこちらで盛り上がっている。
二人はその視線を縫うように吸い寄せられると、どちらからともなくそっと唇を重ねた。


翌年の初夏、サザーランド国に世継ぎの王子が誕生した。
淡い金色に輝く髪に薄紫のつぶらな瞳の王子の誕生は国民に歓喜と安堵の声を齎した。


【END】

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『2013年Xmas特別企画/幸福の在処 ~パウリンの娘番外編~』は、これにて終了です。
後パウリン関係は書くとすれば主要キャラのSS1~2編でしょうか。
シザーレの話は何れ時間があれば書きたいと思っています。

尚、連続掲載はこれにて終了させて頂きます。
以降は少しお休みを頂いて、経過報告は少しするかもしれませんが1月中旬~下旬の間に「記憶の彼方とその果てに~番外編~」を不定期掲載開始予定です。
こちらは後日談的お話です。
3日前より時間を見つけて少しずつ久しぶりに執筆中です。
そちらも楽しみにして頂ければ幸いです。

風波 涼音
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