「記憶の彼方とその果てに」
記憶の彼方とその果てに番外編

待ちわびて3~記憶の彼方とその果てに番外編~

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アーリアの存在が、突然知らされた難題に如何にして取り組むべきか頭を悩ませていた自分に冷静さを取り戻させてくれた。
こういう時アーリアが傍に居るだけで自然と心が落ち着いて来る。
あんなに頭の中でまだ整理がついていなかったのに・・・・。
本当にアーリアは自分にとって不思議な存在だ。
今もまだ何も知らされていないアーリアに、あまり驚かせぬ様に話すにはどうすれば良いのかと冷静に物事を捉えようと頭が自然に考えている。
アーリアの存在が自分にとって如何に偉大であるかと言う事を改めて痛感した。

「あのぉ・・・・産む?・・・・無謀な行いって?」

アーリアの問いにきちんと誠意をもって答えてあげねばと、言葉を選び話をしようとした正にその時、母が自ら言葉を口にした。

「何だかね。息子にも話していないのにアーリアに先に話すのも筋が違うと思って黙っていたのだけれど、実は私・・・・ふっふっふっ、できちゃったのよぉ」

そう告げながら母は頬を染めながら下腹部に手を添えている。

「えっと・・・・えっ!? ええっ!!」

アーリアは瞳をパチクリさせて驚きを隠せない。
ああ、自分が順をおって話そうと思っていたのに、あのように混乱し驚かせてしまった。
息子の自分ですら驚愕し、我が耳を疑った位だ。アーリアの驚きは如何ばかりか。
ならば抵抗あるみだ。自分にとってもこれは重要な事なのだから。

「『できちゃったのよぉ』で、簡単に済まされる事ですか! ご自身の年齢や諸々の事を考えるとそう簡単に喜べるべき状況では無いでしょ!」

「あら、何々? もしかして身体を心配してくれるの? 嬉しいわ。でも、大丈夫よ。身体に自信はあるし何も問題無いわ。ラルクロード様もとても喜んで下さっているのよ。名前だってもう考えてあるの。マリエンヌって言うのよぉ」

母は満面の笑みで腹に手を添えそう呟いた。

「・・・・言うのよぉって・・・・」

セイラルは額に手を当てた。とてもこの母に勝てるとは思えない・・・・。

母が予てよりずっと女の子が欲しいと熱望していた事は知っていた。
だから、アーリアに『早く女の子を産んでね』等と熱望した眼差しで告げている事には目を瞑り何も言わずにいてやった。
だが、今の状況でとてもおめでとうございますとは口が裂けても言えなかった。
いや、言ってはならないと思っていた。
それは侍医長より告げられたあの言葉。

『王妃様は既に40を迎えられた身。この年齢は御出産に関してはかなり御高齢と言う事も有りかなりのリスクが生じます。中でも20年以上間が開いての御出産と言うのは更に珍しく危険が伴うと場合も多くなると言われております。庶民の間でもこれ程間の空く出産は珍く、王族に関しましてはこの国での前例がございません。ですからここは安全を期してご配慮された方が御身の為と考えるのが王宮侍医団の見解です。既にお世継ぎの心配はございませんし、加えて王太子様も既にご結婚されている身。お妃様であられるアーリア様もご健康そのものですし時期にお子も授かる事でしょう。ならばここで王妃様が危険を伴うリスクを背負われる必要は無いのです。最悪母子共に命を落とされる場合も考えられるのですから・・・・』

この話を聞いた時、背筋が凍る思いがした。
侍医の見解は最もだと思った。
母の事等今までそう気に病む事も無かったのだが、今回の話を聞けば黙って見過ごすことは出来ないと思った。
この様な楽天家な母でも自分にとってはかけがえのない存在の一人なのだ。
出来れば危険な目にはあって欲しくは無いと思うのは息子として当然の感情だと思う。

最初、この話を侍医から受けた時、てっきり妻の懐妊か思い歓喜した。
婚姻し幸せな日々を過ごして間もなく3か月。
もう少し新婚気分を満喫したかったと一瞬頭を過ったが急ぎ夫婦の部屋へと駆けて行く中で、もうそのような事はどうでも良いとさえ思えて来た。
もしかしたら前世において逢う事の叶わなかった我が子に会えるかもしれないと思うと胸の高鳴りさえ感じてしまっていた。
だが、追いかけて来た侍医長から告げられた言葉に、我が耳を疑う事になってしまったのだ。

突如訪れた王家の吉事に、何も知らない者達はきっと聞けば歓喜する事だろう。王子が生まれれば最悪我等にもし子が出来なかったとしても次代の跡継ぎに据えられる頃良い年齢となる。王女ならば、やがて母の良き話し相手になるだろう。
だが、まだ我等はその様な事を心配する状況でも無いし、何よりやっと公に親子である事を認められ自由に会う事も許される様になった身。
やっと親子らしい関わりを持てるようになったばかりのこの状況下で母を失うかもしれない危険な状況が受け入れられなかった。

『せめて、もう2、3年早ければリスクもかなり軽減されるのですが・・・・』

侍医長が最後に告げた言葉が再び頭を過り、セイラルは頭を抱え依然悩み続けた。

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