「記憶の彼方とその果てに」
記憶の彼方とその果てに番外編

待ちわびて5~記憶の彼方とその果てに番外編~

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セイラルがいつも政務を熟している時間は、私にも王太子妃としての役割がある。
通常は施設の慰問や方々への視察、諸外国から訪れる来賓の接待、王妃様や国の官僚等の夫人から誘われればサロンへも出来るだけ意欲的に出席するようにしている。
城へ戻れば訪れた先で出会った人等の特徴を印象に残った言葉や知り得た事柄を簡単に記し次に会った時に失礼が無いようにと纏め記録している。
大抵はお付の者が何処の誰か前回は何時お会いした等と言う情報はこっそり教えてくれるのだが自ら覚えておくに越したことは無い。
王妃様からも社交界で好印象を持たれたければ早くに人の名前と顔を覚え、その者の喜ぶお世辞の一つや二つは軽々と口ずさむ事が出来るのが望ましいと言われたのだ。
少しでも早くその事等を把握し、セイラルの足手まといにならない妃になりたいと思っていた。
今日は午前中訪れた慰問先で偶然北の領主マビラス伯爵が夫人ナディエス様と初めてお会いした。
菫色のドレスが良く似合う美しい貴婦人だった。
机に向かいその事を書きとめていると何時の間に着替えて部屋に入って来たのか後ろから邪魔・・・・いや、抱しめられた。

「今日は私が居るのだ。無粋な事は明日にして二人で楽しく過ごそうではないか」

「やだ、セイラル。字が歪んでしまったじゃない」

「ああ、ごめん」

口先だけで全然感情の籠っていない謝罪。

「私もそうしたいけれど、後少しだけだから。今日の事はきちんと今日纏めておかないと、忘れてしまってはセイラルに恥をかかせてしまう事になってしまうわ。それだけは嫌なのよ」

「いいよ。リアに恥をかかされるなら万々歳だ! だから私と・・・・」

「・・・・・」

少しだけ呆れたように睨みをきかせて訴えてみたが、セイラルには何の効果も無かったようで、ただヘラヘラと微笑むばかり。
少し強く言っても『アーリアは膨れた顔も可愛いな』等と言われるので手に負えない・・・・。結局セイラルは私の横に椅子を持って来て、書いている間ずっとこの夫人の旦那は如何いう人でと名を記す度に殿方の解説をしてくれるものだから、最初は邪魔なように感じていたが、お蔭でかなり記憶に鮮明に残りそうだ。
ただ、字が書き難いと少し離れればその度に謝りながらも暫くすると直ぐにくっ付いて来るので少々それが難点ではあったのだが・・・・。
多少邪険にあしらってもセイラルは私の傍に居るだけで凄く上機嫌だった。
全てを書き終わり少し疲れて肩を叩いていると、肩を揉んでくれ、これは早くに湯に浸かってゆっくり解した方が良いと言い出した。
確かに晩餐にはまだ早いし、今日は何やらいつもより気疲れしたからゆっくり休みたいと言う気分でもあった。
だから今日は久し振りにゆったり湯に浸かり私室で二人だけで夕食を取ろうと誘われればこれは好都合と二つ返事で了承した訳だったのだが・・・・。

いつもよりゆったりと湯を浴びて、少しだけすっきりした気分で早めの夕食を取っていたその時に、セイラルは本性を現した。

「今日は政務に戻らなくて本当に宜しかったのですか?」

「別に急ぎのものも特になかったし、明日少し早めに出かければ良いだけの事だ。特に何の問題も無い」

「では、今日は早くに休まれた方が良いですわね」

「・・・・そうだな」

良かった。今日はゆっくり眠られそうだと何処か安堵し、ホッと胸を撫ぜ下ろしたのがいけなかったのか? 何だかとても気まずい空気が突如満ち溢れた。
あからさまにホッとするのは不味かっただろうか?
等と少し悩んでいたら突然話を変えられた。

「所でさ、母上と何やら色々と内緒で話を進めていたみたいだけれど、あれはアーリアも同じ考えだったの?」

「えっ!?」

「何か母上から教えて貰ってやっていたのだろう?」

突如振られた話に、思わず手にしていたフォークを落してしまった。

「あっ、あの・・・・」

「何か動揺してる? 何? それは動揺する程私に言い難い事なの?」

「いっ、いえ、それは・・・・」

確かにこう言う場で素直に話せる内容では無かった。

「アーリアも最初は女の子が欲しいと思って、母上から言われた事を実践していたの? それってどんな?」

「そっ、そんなことは・・・・。あの・・・・」

湯に入り、すっきりして良い気分だったのに、突然訪れたセイラルの攻撃に翻弄され突如冷ややかな汗が腋を伝って流れて行くのを感じた。
まさかこの様な夕食の席でこう言う事を問い詰められる事になろうとは夢にも思っていなかった私は、頬を真っ赤に染めるとそのまま俯いてしまった。

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