「記憶の彼方とその果てに」
記憶の彼方とその果てに番外編

待ちわびて10~記憶の彼方とその果てに番外編~

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結局の所、王妃様を誰一人として説得できる者はおらず、今が一番危険な時期と言う事から王妃様に休養を取らせる為にアーリアは現在王妃業務の代行を命じられ、それらを熟しながらも嫁として王妃様を気遣い、時折部屋へ顔を出すと言う多忙な日常を送っていた。

その状態にもようやく少しは慣れて来て、やっと王妃様の悪阻もようやく落ち着きを見せ始めた妊娠4か月も半ばを過ぎた頃。アーリアは王妃様よりの誘いを受け、忙しい時間を何とか調整し高齢出産経験者の貴夫人等を招いてのサロンに赴いた。
皆多くの出産経験者と言う事も有り学ぶべき事も多いだろう。
王妃様からも今後の為に今から色々な知識を得る事も大切だと言われての参加だったがアーリアとしては自分の事よりも先ず、嫁として気をつけて差し上げなければならない事等色々聞ければと思う気持ちの方が強かった。
だが、いざ参加してみればやがて話の流れは自分の思いも寄らぬ方向へと転換し始めた。

「王太子妃殿下はグレープフルーツがお好きなのですか。先程から随分と召し上がられていらっしゃいますが、今度我が領地の名産品の新種をお持ち致しますわね」

「ええ。有難うございます」

言われて目の前の皿を目にすれば確かに多く柑橘系の果物を取り分けて貰っていた。

「そう言えばアーリア、貴方もう例の産み分けをするのは止めたのよねぇ」

「っ、はい。セイ・・・・いえ、殿下にも気にする事は無いと言われましたので・・・・」

「その割には先程から見ていると確かに口にするのは果物ばかり。あんなに大好きだったハーブ入りのクッキーも口にしていないわね」

「はい、最近バターの多く使った菓子類は控えておりまして・・・・。つい手を出すと中々止まらなくなるもので、これ以上太って殿下に嫌われても困りますし」

実は最近胃もたれ感が続いており、胃が受けつけないと言うのが事実だったがそれを周囲に悟られたく無くて口にした言葉だった。
だが、その様な事を知らない貴婦人等からはその思いとはうらはらに捻じ曲げたように捉えられてしまった。

「まぁ、そんなに細くていらっしゃるのに? その様な事を言われては、私共はこれ以上口に出来ませんわね。ほっほっほっ」

別に嫌味として言っている訳では無いのかもしれないが、そのまま放置しておくには少々バツが悪い雰囲気だった。何か場を和ませる言葉を口にせねばと思いつつも中々思う様に言葉は出て来ない。

「い、いえ本当に。お見せできない所が少々・・・・。ですからどうぞお気になさらずに召し上がってください」

そう告げる事が精一杯だった。すると・・・・。

「まぁ、可愛いわね新婚さんは。少しの事でもそう言う所が気になってしまう所がまた初々しくて良いわぁ。でもねアーリア、セイラルはその様に了見の狭い子ではありませんよ。それ位の事で貴女への愛が失われる事だけは有り得ないから心配は無用よ。皆さまもそう思いません?」

貴婦人等に同意を求め、見事ににこやかに頷かせた。更にそれに付け加えて。

「あっ、そうだわ! 実は先日出来上がって来たベビードレスの試作品がありますのよ。皆さまもご覧になる?」

貴婦人等は王妃様の言葉に嬉々とした言葉を更に浴びせ目をキラキラと輝かせた。
流石王妃様だ。一瞬にして硬くなりかけていた場の雰囲気を和やかなものへと変えられた。
アーリアはまだまだ自分では駄目だと再認識し、深いため息を心の隅に落とした。

しかしながらここに来て再認識したが王妃様の女の御子への執着は一向にその後も衰える様子も無く、酷くなる一方だ。
周囲も既に王妃様の発言には何処か否定できない状況で『もし、王子がお生まれになられたら王妃様はどうなってしまわれるのだろう?』等と精神的な面においての心配をする者も出て来る始末だ。
確かに今となっては『もし、男の御子だったらどうなさるのですか?』等と言う無粋な事はとても聞けない雰囲気で、それもあってか先日セイラルがとんでもない事を言い出した。

『もし男の子が生まれて、母が育児放棄をしたら・・・・アーリア、私達で面倒をみてやっても良いだろうか・・・・』

日々告げられる王妃様の絶対女の子発言に不安を覚えたセイラルが思わず口にした言葉だった。
勿論自ら面倒を見ないにしても周囲が育ててくれるとは思うし、生まれたら生まれたできっと王妃様も邪険に等する事は無いとは思っているが、もしもの時は受け入れても良いと一応了承する言葉を交した。
自分はさておき、これ程までに熱望しているのだから、是非王妃様のお腹の御子が女の子であることを願わずにはいられない。

しかしながら自分としては何か胃に入れなくてはと思い、食べれるものならば何でもと言う感覚で全く気にも留めず最近好んで多く口にしていた果物だったが、気付かぬ内に酸味の多い柑橘系ばかりを口にしていたとは・・・・。
偏った食べ方は確かに果物とは言え良くないかもしれないし、今度からは色々考えてバランスよく取り分けて貰い口にする様にしようと思った。
やはりこれは王妃様から産み分けの事を教わった頃の習慣が今になってもまだ抜け切れていなかったと言う事なのだろうか?

ベビードレスを広げてご機嫌な王妃様がまた何を思い立ったのか、アーリアに視線を向けるとニッコリ微笑んだ。

「あっ、そうだわ! ねぇ、いっその事アーリアもお揃いで作りましょうよ。知らずに食していた位だもの。きっと直ぐに役に立ってよ。ふっふっふっ」

ここでも女の子を視野に入れたらしき言葉を投げかけられた。

「私は習慣として身についた所もありますが、健康と美容にも良いと言うお話を伺っていましたので気にして少々多めに口にしていた程度ですので、王妃様のご期待に沿えるかどうかは・・・・」

最近は胃もたれ感がすっかり慢性化してしまい、食べやすいものだからつい通常よりあっさりした果物の類を多く口にはしているが、それは王妃代行業務がもう少し慣れていけば何れは解消される事だと思っている。
侍女のターニアにも相談したが、こう言う事はあまり気にしない方が良いと言われた。気にすると更にストレスとなり悪化するのだそうだ。
ただあまりに長く続いている気もするし、それ以外にも多少体調変化もある事からそろそろ一度侍医に診て貰った方が良いのではないかとは言われたが痛みは無いし、それに侍医にでもかかればただですら慣れない代行業務の事をいつも気にかけてくれているセイラルを更に心配させる事になってしまうような気がして少し躊躇していた。
ただそれだけのつもりだったのだが・・・・。

「そうなの? それは断念だわ。でも先程から見ていると、今日のアーリアは気が付けば何か口に運んでいて、まるで食べ座りの妊婦の様ね。余程ビタミンが欠乏しているのかしら?」

微笑みながら王妃様より投げかけられた言葉に思わずハッとした。

「あっ‥‥」

(・・・・まさか?)

「どうしたの? アーリア」

「いえ、別に何も・・・・」

自己判断で口にする言葉では無いと言う自覚があったから言葉は全て飲み込んだが、この時己の中でかすかな期待を抱き視線を腹部に落とした。

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