「記憶の彼方とその果てに」
記憶の彼方とその果てに番外編

待ちわびて11~記憶の彼方とその果てに番外編~

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サロンがお開きとなり自室へ赴こうと最後に席を立った時、王妃様に引き止められた。

「アーリア、少しお待ちなさい。貴方もしかして何か思い当たる事があるのではないの?」

上手く夫人等の前では言葉をかわしたつもりでいたのだが、王妃様にはどうやら通じなかったらしい。

「えっ、あの・・・・」

「月のものは? もしかして・・・・遅れているのではないの?」

王妃様から示唆され少し途惑ってしまった。

「あの・・・・はっきりしたことは・・・・。でも、王妃様のご懐妊の騒ぎの後からはまだ・・・・」

「まぁ! ではもう二月にもなるではありませんか!!」

王妃様の瞳がキラリと輝いた。

「いえ、でも、私は色々あると滞ったりする方で・・・・。婚姻前の、例のセイラル王子死去騒ぎの時も2月近くずっと止まってしまっていて・・・・。ですから今回ももう少し様子を見ないとはっきりとした事は・・・・」

「あら、・・・・そう・・・・なの?」

「はい・・・・」

王妃様は肩を落され項垂れていたが、ここでセイラルより先に諸々の事情を示唆され先走った行動を取られ騒がれる事は避けたかったから言葉を更に畳み込んだ。
セイラルが以前王妃様の懐妊騒ぎの時に、自分の懐妊と勘違いし部屋に飛び込んで来てくれた話をあの後侍女より聞かされた。
とても取り乱されていて、普段のセイラルからは想像出来ない程だったと言う。
ならば今回のこの事が例え自分の思い過ごしであったとしても、やはり今内に秘めているこの思いは一番にセイラルに相談すべき内容だと思ったのだ。
それに二月と言っても実際には先月が抜けて更に3週間遅れている状況だ。まだ正確には二月には満たない。
今までの自分の状況からしてこれ位の遅れは実際に有り得るし、あらぬ期待をして後で落胆したくはないと言う思いもがかなり強かった為、更に慎重な行動を取っていた。
実の事を言えば2週間前にもターニアより胃の事も有るし、あまり深く考えずに一度侍医に診て貰ってはどうかと言われたのだが、それを退けたのは自分だった。
何かがあると良くある月のものが遅れると言う自分にとっては左程珍しくも無い事と、たかが胃もたれ程度で侍医にかかればきっとそれだけで周囲は騒ぎ立ててしまう。
幾ら内密にと言ってあっても何をきっかけにその事が周囲からセイラルの耳に入り、再びあらぬ期待を抱かせてしまうとも限らない。変に期待させては可哀想だと思った。
色々な観点から考えてみても、やはり慎重な行動を取らなければならないと言う事は必然だった。
それに自分で期待をしすぎて後で落胆し落ち込みたくないと言う思いも何処かにあった。
思いがけず想い人であった彼と再会し、諦めなければならないと思っていたマジミール様が婚約者のセイラル王子で無事挙式を上げることが出来、今毎日が幸せいっぱいの日々。
出来る事ならば早く子を授かりたいと言う思いも自分の中ではかなり強い。
だが思いが強くなりすぎると想像妊娠と言う事も多々あると聞く。
お妃教育でも世継ぎを望まなくてはと言う思いが強すぎて想像妊娠するお妃は、過去にも幾人か居たと言う話を聞いた。
自分も世継ぎと言う事ではあまり気負いはしていないが、気にしないつもりではあってもフッと妊娠の事が頭を過れば過去に亡くした命の事を直結してつい考えてしまうのだ。
その考え方が危険だと言う事は自分でも良く分かっていた。
だから侍医の診察を受ける前にきちんとその事も踏まえて時間を置き、その上で状況的に見てある程度の確証が持てた時にこそセイラルに経過の全容を報告し、侍医にかかるのはそれからだと思っているから王妃様へはまだ告げられない。

段々と少しだけ感じていた期待が自分の中でも更に強くなっている。

(もし、再びあの子と再びめぐり逢えたら・・・・)

その期待が脳裏を霞めずにはいられない。

だからセイラルが王妃様の懐妊を当初自分の妊娠と勘違いし凄く喜んでくれた話を聞いた時はとても嬉しかった。
だが懐妊が王妃様だと知り、酷く落胆していた様子も同時に耳にしていたから当時は申し訳ない思いでいっぱいになった。
だからこそ、もう二度とセイラルにぬか喜びをさせる様な辛い想いをさせてはならないとも思っていたのだ。
その為に自分でも少し気になり始めた時も、あえて気にしないように振る舞って想像妊娠になる事だけは避けようと試みて来たつもりだった。
だが王妃様の悪阻が酷くなり、王妃業務の代行を任じられ緊急措置が施行された事からここ最近は忙しさにかまけてしまい、すっかりその事が頭の中から抜け落ちていたのが事実だった。
だから自身に何も考える余裕が無かった今までの状況は、今となってはとても有難かったと思う。
きっと王太子妃として比較的ゆるやかな公務に身を包んでばかりいれば、やがてあらぬ邪念を抱き自らがもっと己が首を絞める結果になっていたとも限らない。
だから・・・・。

(もう1週間だけ待って、状況が変わらなければ侍医に相談してみよう・・・・)

この時、そう心に決めた。

だが、思いがけずそれは時を左程待たずに迎える事となってしまった。

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