「記憶の彼方とその果てに」
記憶の彼方とその果てに番外編

待ちわびて13~記憶の彼方とその果てに番外編~

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事情を説明して来ると言う言葉を残し側を離れたセイラルは、何やらこちらに時折目配せを送りながらも真剣な面持ちで父である王と話をしているようだった。
王太子としてこの場に残された役割もまだある筈だ。
そのような状況下で、このような個人的理由でこの場を離れる事は果たして許されるものなのだろうか?
不安を抱きつつ遠目で見守っていると、王はセイラルを抱き寄せ笑みを浮かべて肩を二度程軽く叩いた。
セイラルはその場で一礼をすると、急ぎアーリアの許へと戻って来てくれた。

「・・・・セイラル?」

少し不安に震えながらそう呟けば、ニッコリ微笑み言葉をくれた。

「大丈夫だよ。他言無用と話して来た。だから周囲にこれからの事が直ぐにバレる事はおそらく無いから安心して。直ぐに主治医を部屋へ寄こしてくれるそうだ。私達も早く戻るとしよう」

そう告げるや否やアーリアの身体はふわりと浮かび上がり、そのままセイラルの腕の中へと飲み込まれていった。

「!! らっ、ラル・・・・、恥ずかしいから・・・・」

自室ならばともかく、この様な大勢の他国の者を前にして、抱き上げられるのは流石に慣れるものでは無い。

「別に気にするな。私たちは夫婦だ」

「でも、隣国にまで変な噂が流れてしまったら・・・・」

「変な噂? 妃を溺愛する王太子の話の心配ならばもう手遅れだ。既に婚姻の儀で実証済みだし皆の知る所だ。今更誰も驚きはしないよ。それに尾ひれはひれが付く事も万々歳だ!」

にっこり微笑むその姿に、もう何を言っても無駄だと思った。


部屋へ戻ると直ぐに寝台へ寝かされた。
セイラルは少し待っているようにと告げると姿を消した。
何をしているのかと思えば隣の部屋で紅茶用に常備されている輪切りにした檸檬使って自ら氷水をグラスに注ぎ持って来てくれた。

「母上が、良く飲んでいただろう? 飲めば少しは落ち着くかもと思って」

「・・・・ラル・・・・」

セイラルの優しさに思わず目頭が熱くなる。
直ぐに受け取り口へ含んだ。

「美味しい・・・・」

ほんのり香る檸檬の香りが、とても優しく感じられた。

「良かった。気分はどう? 吐き気とかは・・・・無いのか?」

「大丈夫・・・・。さっきより横になっているからか随分と楽だわ」

「そうか・・・・。でも、ずっと我慢していたのかい?」

「軽い胃もたれ感はずっとあったの。けれど、吐く程は無かったからきっと王妃業務の代行と言う重責から来る緊張だと思っていの・・・・。ううん、思おうとしていた・・・・」

それからは色々セイラルから問い詰められた。
問われて改めて考えてみれば、口から出て来る答えは何れも軽い悪阻でもありえる状況のものばかりが揃っていた・・・・。

「ここまでの前兆があるのに侍医にかかろうと思わなかったなんて・・・・」

セイラルは額に手を当て項垂れた・・・・。

「だって・・・・、色々な事が本当に重なっていたもの。王妃様に無理はさせられないし、私が頑張らなきゃって思って気も張っていたし・・・・。私だって少しはもしかしてって思いはあったから慌てても走るような事もしなかったし、それなりに気をつけてはいたのよ。けれど、もし間違いだったらまたラルをがっかりさせちゃうでしょ? だからもう少しだけ様子を見ようと・・・・」

「私の事を気にかけてくれていた事は嬉しいけれど、それでも少しでも身体に異変を感じていたのならば、私はそれが例え取り越し苦労であったとしても侍医にはきちんとかかって欲しかったよ。それで更に私が勘違いして、ぬか喜びする結果になったとしてもね。他の何かの病気の場合だって有り得る訳だし、今回もそんなに自覚症状があったのならば胃の調子が悪いと言う事ででも侍医にはかかって欲しかった。もしアーリアの身に何かあっていたかもしれないと思ったら・・・・、その事の方が私はとても心配だよ・・・・」

そう告げ、自分をそっと抱き寄せたセイラルの腕が微かに震えていのに気が付いた。

「・・・・ごめんなさい・・・・。私・・・・」

何て自分は今まで身勝手な行動をしてしまっていたのだろうか。
セイラルの事を考えて取っていたつもりの行動が、実はこんなにもセイラルを心配かける事になっていたなんて・・・・。

「もう良いから・・・・。とにかく今はゆっくり休んで。侍医は呼んだけど全然気負いしなく良いから。何も無ければそれはそれで良いし・・・・。アーリアは何も悪くないから、私が安心したいだけだから、何も気にしなくて良いから・・・・」

何処かまるで自分を諭すかの様に、それでいて私を安心させる言葉を選んで紡いでくれているのが分かった。

優しく告げてくれる愛しい者の声にアーリアが小さく頷いていると、寝室の扉を叩く音と共に侍女のターニアが待ち人の訪れを知らせてくれた。
セイラルは一瞬ビクリッと反応する私の手を取ると、強く握ってくれた。
互いに見つめ合い、私たちは祈る気持ちで固唾を呑んだ。

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