「記憶の彼方とその果てに」
記憶の彼方とその果てに番外編

待ちわびて14~記憶の彼方とその果てに番外編~

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部屋を訪れた侍医と助手の者から色々と最初に質問された。
だが中には正確に答えられないものもあり迷っていれば・・・・

「・・・・確か、最初に胃もたれ感を覚えたのは先月の下旬頃かと・・・・」

「いえ、最初にアーリアが食が進まないと訴えたのは先月の18日だったと思います。その日は好物のムニエルを一口しか食べずに残してしまって・・・・。それからも多くバター類を使った食事が無理そうだったので厨房に掛け合ったから覚えています。何でしたら調理場にあるメニュー表を確認いただければ確かかと」

思わずセイラルを凝視した。
そうだ。確かにあの時が最初だった・・・・。
まさか自分のこのようにささいな事をここまで気に掛け配慮してくれていた事に、今まで知らなかったとはいえとても申し訳無い思いだった。
それからも何となく自分だけでは心許なくて聞かれた時に上手く答えられない時はかわってセイラルが答えてくれるからとても大助かりだった。
その為ずっと側に居て貰う予定だったのだが、侍医が内診をしようと私に触れる度にあまりにいちいち反応し騒ぎ立てるものだからその内煙たがられ、最終的には助手の者より退出する様にと命ぜられた。

そして一通りの診察を済ませた後、侍医は満面の笑みを浮かべて決定的な一言を私に告げた。

「おめでとうございます妃殿下」

「えっ!?」

侍医の言葉が一瞬遠くで聞こえた気がした。

「脈診、内診どちらからも妊娠の兆候がはっきりと見られます。月経の不規則をご心配されているようでしたが、今回のものは間違いなく懐妊の為によるものです。既に三月目に入られております」

「・・・・うそ・・・・、ほん・・・・とうに!?」

開いた口元が心なしかフルフルと震えているのが自分でも分かった。

「はい。間違いございません。おめでとうございます」

次の瞬間アーリアの瞳からはじわりと涙が溢れ出した。

(ああ、やっとあの子が戻って来てくれた!)

そう思うと嬉しくてたまらなかった。

「有難う・・・・ございます・・・・」

「ですが、無理はいけませんねぇ。そのように早くから兆候がおありでしたのなら、もっと早くに診せて頂けませんと・・・・。これからはどのような些細な事でも直ぐにお知らせ下さいね」

「はい、必ず!」


涙に濡れながら満面の笑顔で侍医と会話をしていると、程なく助手の者に呼ばれたセイラルが寝室へと飛び込んで来た。

「リア!!」

駆け寄り、そっと抱き寄せられた。

「ラル・・・・」

「嫌な事はされなかった? ごめん、傍にいてやれなくて・・・・」

居ても立っても居られないと言う様子のセイラルにアーリアはクスリッと微笑んだ。

「大げさだわ、ラル。そんなに心配しなくても・・・・」

「心配するなって方が無理だ! それで侍医の診立ては!?」

食い入るように自分を見つめるセイラルに、アーリアは小さくコクリと頷いた。

「おめでとうって・・・・」

「・・・・ほっ、本当・・・・に!?」

「ええ、間違いないって・・・・」

振り向き、縋る様な眼差しでじっと見つめるセイラルに、侍医は自らの口から今一度間違いはないと言葉を口にしてくれた。

「やっ、・・・・やったぁーっ!!」

セイラルの喜びようは、それはそれは想像を絶するもので、その瞳は既に潤んでいて更に私を強く抱きしめた。

「ああ、何て素敵なんだ! リア、有難う!! 君は何て最高なんだろう!!」

側に居る侍医等にはばかる事無く、熱烈に愛の言葉を囁き、更には唇を押し当てて来るセイラルに少し戸惑っていると、傍で侍医かコホンと咳払いを一つした。
そして続けて侍医は、少し厳しい口調で言葉を付け加えたのだ。

「王妃様の事をご心配されアーリア様は今まで随分と御無理をされていたようですが、これより先は安定期に入りますまでアーリア様が養生なさってください。王妃様もご心配でしょうが今はアーリア様の体調の方が医術的観点からみましても心配されるべき状況ですので」

「・・・・何か問題でも?」

二人して食い入るように手を取り合い、侍医を見つめた。

「いえ。安静にし、食事に気をつけ養生すれば何の問題も無い程度のものです。ですが現在栄養状態もあまり良いとは言えませんし、何より貧血の症状はかなり酷いものです。今まで倒れられなかったのが不思議な程に・・・・。ここまで酷いと回復も早期には難しいでしょう。この状況が後期まで続けば最悪早産或いは御子の成長にも影響が出て参ります」

加えて、もし眩暈を起こした時に倒れていて腰でも強打していれば最悪流産していたかもしれないとまで脅かされ、セイラルは慌てて王妃代行業務を即刻解任させると言い切った。

「そうですね。今となっては王妃様の方は悪阻も既に終わり、食欲も旺盛になって来ております。かなりプライベートも満喫されているご様子で健康そのもの。お妃業務も戻られた所で無理さえなさらなければ何の問題も無いでしょう。後期になればまた話は異なり無理はさせられなくなりますが・・・・。身体的な状況を見ても王妃様の方がかなり落ち着いておられますし、王妃様につきましては御無理のなさらない程度に職務に復帰される事を打診される事が望ましいと存じます」

侍医の言葉にセイラルは最もだと頷いた。
先々になればまた状況がどの様に変わって行くのか現時点では想像の範囲でしかないが、今は自分たちの事を最優先に考えたいと、幸せに酔いしれる二人だった。

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