「記憶の彼方とその果てに」
記憶の彼方とその果てに番外編

待ちわびて15~記憶の彼方とその果てに番外編~

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侍医が部屋を去り二人きりになった寝室では横になっているアーリアの傍らにセイラルが腰かけていた。

「気分はどう?」

「先程侍医長様が煎じて下さったお薬のお蔭で少しは食べられそう。胃が少しだけスッキリした気がするの」

「そうか。それは良かった!」

今夜の席でアーリアが何一つ食べ物を口にしていない事に気付き、セイラルはずっと気にしていた。
だがそれが悪阻のせいもあるのだと言う事を聞くと納得し何処か安心もした。
アーリアが軽く食べられそうなものを用意する様にと厨房に打診し、持って来させたのだ。
一様まだ妊娠の事は公にされていない為、胃に優しい食事をと依頼して。

持って来られたのはトマトベースに柔らかい鶏肉を細かく切ってハーブを散りばめ柔らかく煮たスープ仕立てのパン粥だった。
セイラルは一人で食べられると言うアーリアを他所に、甲斐甲斐しくも自ら器に注ぎ分け匙で粥を掬い取るとフーフーと息を吹きかけ冷ましてからアーリアにそっと差し出した。

「どうだ。食べられそうか?」

匙で注がれたパン粥の匂いをアーリアはおそるおそる確認する様に鼻先で嗅ぎ分けた。
大丈夫そうだと確認すると遠慮がちに小さく口を開いた。

「・・・・リア、それでは匙が口に入らない。もっと大きく」

「良いわよ。自分で食べられるから」

「リア、私の言う事を聞いて。これは私に長い間心配をかけた罰だ。さあ、口を開いて」

満面の笑みでそう告げるセイラルをアーリアは上目がちに見上げると、恥ずかしそうな仕草を見せながらも今度は心もち大きく口を開いた。

「・・・・美味しい・・・・」

「そうか! もっと食べろ。ほら」

食事を与えるその姿はまるで親鳥が雛に餌を与えている程に甲斐甲斐しい。
アーリアもアーリアで最初こそ恥ずかしがり自分で食べると言っていたが上機嫌で食べさせてくれるセイラルに絆され、どうやらまんざらでもない様子だ。

結局アーリアはセイラルの協力のお蔭で用意された粥を半分以上食べる事が出来た。

「まあ、あまり食べ過ぎても気分が悪くなって嘔吐する事もあると言うからな。無理のない程度に少しずつこまめに分けて食べれば良い」

「随分と詳しいのね」

「母上に色々とな。何時どのような状況になってもアーリアの世話が出来る様に、母上に実は色々と習った」

少し得意げだが、セイラルは少し照れくさそうにそう告げ微笑んだ。

「そうだったの」

「でも、まさかこんなに早くこんな日が訪れる事になるなんてな。私はとても幸せ者だ」

「ラル・・・・」

まだ膨らんでいないアーリアの腹部にセイラルはそっと手を伸ばし触れた。
自然と互いに笑みが零れる。
二人で居るだけで幸せが溢れて来るようだ。
自然と自分の上に重ねられるアーリアの手。
セイラルはアーリアを抱き寄せるとこめかみに口づけを落し、そっと耳元で囁いた。

「きっと会えるよ・・・・今度こそ。何があっても私が守るから・・・・」

「そうね・・・・。今度こそきっと生まれて来てくれるわよね・・・・」

そう告げるとアーリアの瞳から一粒の涙が伝った。

アーリアから、かつてリアーナが失ったお腹の子供は、宿って3か月を過ぎた頃だったと聞かされた事があった。
今が丁度その頃と同じ時期と重なったのは、何かの因果なのだろうか?
きっと偶然にもその時期が重なった事で、アーリアの中では感慨深いものがあったに違いない。
セイラルは今度こそアーリアと芽生えてくれた新たな命を、何があろうと自身が守り抜くのだと深く心に誓った。

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