「記憶の彼方とその果てに」
記憶の彼方とその果てに番外編

待ちわびて17~記憶の彼方とその果てに番外編~

 ←待ちわびて16~記憶の彼方とその果てに番外編~ →待ちわびて18~記憶の彼方とその果てに番外編~
王太子妃アーリアの懐妊が公にされたのは、翌々月の妊娠5か月目に入ってからだった。
悪阻は先月末には落ち着きを見せはじめていたのだが貧血の症状が中々改善しないままだった為、公表は体調が落ち着いてからと言う事になっていたのだ。
公にしてからの1週間は各所から祝い使者が訪れ、その祝いの品で改築中の子供部屋は既に物が溢れ返っている
生まれたらどういう状況になってしまうのか想像に難くない。

使者の訪れがやっと途切れ少し落ち着きを見せた頃、やっと侍医の許可が下りた為、予てより二人で計画していた城内の散歩を開始した。
まだ無理はさせられないから毎日自分が早めに出仕してその分早くに戻り、天気の良い日は夕暮れ時になる前に、いつも共に城内にある庭園を散策する事を日課としている。

「ほら見て、ラル。カエデ草よ」

「本当だ。もうこんな季節になるのだな」

「だって、もう5か月だもの」

季節の花々を愛でながらアーリアは膨らんできた腹部に手を添えると、優しく撫ぜた。
すると。

(ポコッ)

「えっッ」

(ポコポコッ)

「あっ・・・・」

「どうした? アーリア!!」

妻の異変に慌てて脇に手を入れ、急ぎ抱き上げようとした時。

「違うの。ラル・・・・、今この子が・・・・蹴った?・・・・かも・・・・」

アーリアは満面の笑みを称えながらそう告げた。

「えっ!?」

少し強張った手がアーリアに導かれ、そっと無骨な右手が腹部へと宛がわれた。
だが、期待に満ちた己が手からは何の反応も感じられなかった。

「‥‥‥」

「おかしいわね。今本当に動いたのよ」

アーリアは初めて感じた胎動らしきものを共に喜びたいのだと、私にも触れさせようと必死になって腹部を擦りながら話しかけてくれていた。
だが一向に動いてくれなかった様で、上目遣いで私に申し訳なさそうに見つめるこの眼差しが、また何とも言えず愛らしい。
ああ、アーリアと結婚できて良かったと、己が幸せを噛みしめた。
結局その日は散歩中にアーリアの胎動を体感する事は叶わなかった。

それからも胎動を感じる度に慌てて声をあげて呼び、手を宛がってくれた。
だが、触れる度に動きを止められ・・・・。

「私はこの子に嫌われているのではないだろうか・・・・」

流石にこう何度もとなってくれば、不安にも駆られて来る。

「・・・・そんな事・・・・」

ぼやきながら深いため息を落した時、ビクンッと手の平に微かな衝撃が走った。

「あっ‥‥今の・・・・ッ」

「ほら見て、そんな事ないよって言ってくれているわ」

微笑むアーリアと共に自分にも自然と笑顔が溢れ出た。

「ああ、そうだな」

嬉しい・・・・。生まれてもいない我が子に触れられる事がこんなに嬉しいとは思わなかった。
感動に酔いしれそう呟けば、アーリアが抱き寄せてくれた。

結局、後になって分かった事だが、自分がアーリアの胎動が始まってから中々お腹の子の動きを感じられなかったのは、自分が嬉しさの余り騒ぎ過ぎた事が原因だったかもかもしれなかった。

『5か月も半ばになれば胎児の耳も発達して参ります。騒ぎ過ぎてびっくりされたのやもしれませぬぞ』

アーリアの定期検診に訪れた侍医に告げられ何処か納得した。
以降優しく囁くように話しかければ、良く我が子の動きを感じる事が出来た。
アーリアと二人でお腹の子の成長を喜びながら過ごす時間はとても満ち溢れたもので、時は瞬く間に過ぎ去って行った。

押して頂けると励みになります^^

にほんブログ村




総もくじ 3kaku_s_L.png パウリンの娘
総もくじ 3kaku_s_L.png 記憶の彼方とその果てに
総もくじ  3kaku_s_L.png パウリンの娘
総もくじ  3kaku_s_L.png 記憶の彼方とその果てに
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ&感謝
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【待ちわびて16~記憶の彼方とその果てに番外編~】へ
  • 【待ちわびて18~記憶の彼方とその果てに番外編~】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【待ちわびて16~記憶の彼方とその果てに番外編~】へ
  • 【待ちわびて18~記憶の彼方とその果てに番外編~】へ