「記憶の彼方とその果てに」
記憶の彼方とその果てに番外編

待ちわびて18~記憶の彼方とその果てに番外編~

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アーリアが臨月を迎え、何時生まれてもおかしくない時期に入った。
公務で外出している時は良いが政務室での事務的作業となると何故だか色々と思い耽ってしまう。政務を熟していても今一つ身が入らない。

母は二月程前に無事念願であった女の子を出産した。
周囲が心配した難産も娘が標準より小さく生まれて来てくれたお蔭で何とか免れた。
侍医曰く、女の子であった事が幸運を齎したのだと言う。
母にとっては良かったが小さく生まれた妹は、最初は乳の飲みが悪く周囲を心配させた。
一度に多くの量を飲めない為、1時間起きの授乳を余儀なくされ雇った乳母はかなり大変なようだった。
だが苦労の甲斐あって今では良く乳も飲めるようになり目方も随分増え頬もふっくらしている。
実に赤ん坊らしい体型だ。
時折アーリアと様子を見に行くが、近頃では泣いて訴えるだけではなく表情も出て来てあやすと笑うし度時折声も出るようになって来た。とても可愛い。
妹ですらこれ程可愛いと思うのだから我が子となればどうなってしまうのか最早想像出来ない。

母は高齢出産と言う事も有り、まだ大事を取り公務には復帰はしていないが、毎日娘の世話を乳母にだけ任せると言う事をせず、自らも率先して熟し育児を楽しんでいるようだ。
お蔭でアーリアに多く干渉する事も無くなり、我が家は現在至って平和だ。

アーリアは先月まで公務に携わっていたが、今月に入り休養を取っている。
現代公的行事は成人したばかりの側妃腹の双子の妹ナジルとジリルが宰相夫人の補佐の許何とか熟している。
外交的だが我が道を行くナジルと内向的だが芯の強いジリル。二人合わせてやっと一人前と言う所だろう。

今アーリアは何をしているだろうか?
何処か最近集中できずに色々な出来事を想いながら政務に携わっているものだから能率が非常に悪い。
時折ぼんやり考え事をしていると、いつもマジミールに喝を入れられる。

「セイラル様、手が止まっています。この様な事では今日はアーリア様とのお散歩は出来ませんね」

「それは嫌だ!!」

慌てて仕事モードに頭を切り替える。

そんな日常が続いて暫く経ったある日、突如政務室の扉が開けられた。

「セイラル様! いよいよです!!」

勢いよく扉をノックもせずに開いたのは自分の乳母のファンネだ。
聞くや否や有無を言わさず政務を放り出し、急いで部屋へと駆け付けたのは言うまでもない。

「アーリア!!」

「・・・・ラル・・・・来てくれ・・・・うッ!!」

「リア!!」

慌てて手を取った。
苦しむアーリアの姿など見たく無いのに・・・・。
陣痛が治まっている時は良いが、痛みが始まるともう見ていられない。
励ます言葉しかかけられない自分がもどかしかった。

「・・・・この痛みは・・・・何とかしてやれないのか!?」

「何度も申しますが、それは無理と言うものです」

溜息を洩らしながら侍医から何度目かの言葉を告げられた。

更にお産が進みアーリアの陣痛の間隔が狭まって来ると、傍から見ていても侍医の表情も緊迫したものへ変わって行く。
本当にアーリアは大丈夫なのだろうか?
子は元気で無事生まれて来てくれるのだろうか?

聞いても返ってくる言葉は既に分かっているのに聞かずにはいられない・・・・。

「・・・・アーリアは、だい」

「セイラル様ッ!!」

側に居た我が乳母にしてアーリア付の侍女の一人であるファンネに冷たい眼差しを向けられ、結局腕を掴まれ引き摺り出された。
大丈夫かと聞きたかっただけなのに!!

「何をするのだ!! 私は唯アーリアが心配でッ!!」

「大の男が情けない! お産とはこう言うものです!!」

「しかし、リアがッ!!」

「お産如きでこれ程狼狽し、侍医に面倒をかけるのでしたら今後この様な事態になる行為をやめられる事です!! 侍医もお産に集中できません。そのせいで不具合が生じ、アーリア様とお子の身に何かあればどうなさるおつもりなのです! 貴方は生まれて来る御子にこの様な情けない姿をお見せするおつもりなのですか!? 私はこのように器の小さい方にお育てしたつもりはありません。もっと冷静におなり下さいッ!!」

「!!!・・・・・」

ファンネは叱咤するとバタリと扉を閉め、再び寝室へと入って行った。

返す言葉が出て来なった。

ファンネのお蔭で、少しだけ冷静になれた。
アーリアの苦痛に満ちたうめき声を耳にしながら、縋る様に寝室へ続く扉の前で張り付くと、祈る思いでアーリアと生まれて来るこの無事を祈った。

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ブログを拝見しました 

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失礼致しました。

つねさん様 

お返事遅くなりました。
ご覧頂きお誘いいただき有り難うございます。
ホームページ読ませて頂きました。
とても魅力的なお話なのですが、現在HPに載せている作品は激しいものではありませんがR指定がありますのでそのまま転記できませんし、かといって今現HPの運営以外のものを新たに書く時間もない状況です。
とても素敵なお誘いだったのですが、今回はご遠慮させて頂こうと思います。
申し訳ございません。

お誘い頂いて本当に有り難うございました。
文芸サークルの今後のご活躍を陰ながらお祈りさせて頂きます。
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