「記憶の彼方とその果てに」
記憶の彼方とその果てに番外編

待ちわびて20~記憶の彼方とその果てに番外編~(完)

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寝室は消毒液の匂いが満ちていて、それが何処か無機質に感じられがとても暖かな空気が満ち溢れていた。
衛生面にも配慮され、つつがなく出産が行われた事を安堵しながら急ぎアーリアの傍まで駆け寄った。

「リア!!」

汗ばんだ額をそっと濡れタオルで押さえていた助手は、私の姿を確認すると一礼して部屋の外へと退出した。
近付くと、頬を高揚させながら全身が汗ばんでいるせいかアーリアの匂いがほんのりと漂って来て、それが逸る私の心を落ち着かせてくれた。

「ラル・・・・」

とても気怠そうだが慈愛に満ちた柔らかな眼差し。アーリアは私に心配かけまいとしているのか、懸命に手を差し伸べ言葉を返してくれた。
とりあえず疲れてはいるようだが返答が出来る位には元気だ。元気でいてくれた・・・・。
思わず瞳がうるんでしまうのは許してほしい。
その傍にはファンネに抱かれる初めて目にする息子の姿・・・・。

「・・・・この子が・・・・私たちの・・・・」

アーリアの淡いグリーンの瞳に抜け落ちた様に薄い色した柔らかそうな金髪の・・・・僅かに生えている産毛は私の色そのものだった。
まだふにゃふにゃではっきりとした顔立ちは分らないが、このくりっとした瞳はアーリアにそっくりだ。何と愛らしいのだろうか我が息子は。

「そうよ。この子があの子よ。きっと・・・・」

息子を受け取りそっと腕に抱いた。
温かい・・・・命の重さを感じた。
二人にしか分らない言葉を交しながら、長い時を経て再び我らの許に戻って来てくれた愛しい息子に感謝をこめて額にそっと口づけた。

「アーリア、お疲れ様。・・・・私にこの子を与えてくれて・・・・有難う・・・・。こんなに可愛い赤子は見た事が無い・・・・」

「私も。セイラル、私にラルフを与えてくれて感謝します・・・・」

息子を抱いたままアーリアの側に座り、アーリアと肩を寄せ合い息子を囲んで二人揃って涙した。

子供の名前はどちらが生まれても我らの前世の名前を継がせると決めていた。
不運な運命を辿ってしまった二人の名だが、今度こそその名で幸せになって欲しいと言う二人の願いが込められていた。

我等の辿った道は長きに渡り険しいものだったが、これからはきっと大丈夫だ。
前世以上に我等も、我らの名を受け継ぐこの子も、そしてこれから生まれ来るかもしれない未来の子供達もきっと幸せになるに違いない。


―――5年後ナチュリア国国王ラルクロードは息子の新改革と多くの功績を称え早々に王位を王太子であるセイラルに譲って退位した。
新国王夫妻には現在2人の王子がおり、共にとても利発で元気に成長している。
更に王妃アーリアは現在3人目の子を懐妊中でその治世は安泰と周囲を安堵させている。

セイラルは子が産まれる度に何時も自分達だけでなくこの国に生まれる多くの子供等の為にも、この国をより安定した豊かな国として治め受け継ぎ次の世代へと送り出し導く事が今の自分に課せられた使命だとその想いを強く胸に刻んでいる。

我が傍に愛しき妃アーリアが居る限り、私は全てを注ぎこの国を命の限り守り抜く事だろう。命を繋ぐ家族と共に―――。


【END】

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今日は。風波涼音です。
いつもご覧頂き有り難うございます。

『記憶の彼方とその果てに』番外編『待ちわびて』は一旦これにて終了します。
今後「突然、超SS劇場」内にて、子ども誕生後の1話完結SSをUPする予定があります。

また、この後、当初サニエルの話を新連載にする予定でしたが、そちらより進みが良くストックが出来た中編作品がありますので、そちらを先に連載させて頂きます。

新作のタイトルは『ずっと心に決めていた』です。

簡単に言えば子どもの頃に面識があり、淡い恋心を抱いたまま離れ離れになっていた二人の、大きくなってからのお話です。
すれ違いありのジレジレもので障害もありますがハッピーエンドをお約束します。

良ければ新作の方でもお付き合い頂ければ幸いです。


風波 涼音
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~ Comment ~

NoTitle 

「渡辺徹になってしまえっ(笑)」

……というのは冗談ですが、ほんとに面白かったです。でもこれからですよね、育児の本番は……(^^;)

書き込んだら政治陰謀劇がファミリードラマになってしまいますけど。(笑)

ポール・ブリッツ様 

幸せいっぱいの二人です。
面白かったと言って頂けて本当に嬉しいです^^
そうですね。これからは育児本が必要ですね。
そうそう、書きこんだらきっとただの親ばかファミリードラマになりそうですが、セイラルのヤキモチやきだけは健在だと思います。

いつもコメント有り難うございます^^
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