ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《1.再 会》

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『ずっと心に決めていた。アレクを忘れられるまで、決して何処へも嫁がないと……』


マニエール男爵家の令嬢マリエッタにはずっと想いを寄せている人がいた。
相手の名はアレクシス・ルボル・グラッセ。
名家である侯爵家の跡取りで、子供の頃父の馬術競技の試合を観戦中に、見ている事に飽きて抜け出した近くの広場で花を摘み、冠を作っていた時に知り合った少年だ。

『何をしているの?』

『この三小葉の植物の中からとても珍しい四小葉のものを探し出せば幸運が訪れると言う話を聞いて探しているんだ』

『四葉のクローバーね!』

『四葉の……クローバー?』

『そう。葉のそれぞれには意味があって希望・真実・愛情・幸運を呼ぶと伝えられているの。私も今まで沢山探したけど、まだ1度しか見つけ出せていないの。とても残念だわ』

『見つけた事があるのか!?』

少年は身を乗り出し、その言葉に酷く興奮している様だった。
何でも病のお母様に何か自分に出来る事は無いかと尋ねた所、その葉の植物を探して来て欲しいと言われたそうだ。
きっとお母様にも子供の頃の思い出があるのだろう。
病気の母の為にと懸命に四葉のクローバーを探す自分より4つ年上の少年の優しい心根に、私は強く感動した。

この出会いがきっかけとなり、私はそれ以後も父に連れられた会場などでその少年と再会する度に広場を見つけては共に抜け出し一緒に花輪を作りながらも四葉のクローバーを探す手伝いをするようになって行った。
一つでも多く、沢山見つければきっと彼のお母様は元気になると信じて……。
だがある日を境に彼に会う事がパタリと無くなった。
その後、父より病気がちだった彼のお母様が亡くなったのだと言う事を知らされた。
以来彼とは会っていない。
残されたのは彼が『君にも幸せがおとずれますように』とある日偶然二つ見つけた内の一つを手渡してくれた、四葉のクローバーだけ。
ほのかな初恋を胸に秘めたまま歳月は静かに流れて、私は大人の階段を少しずつ上り始めた。


17年歳になったマリエッタは、この年初めて社交界へデビューした。
初恋の君だったアレクシス・ルボル・グラッセは、今を時めく社交界の白薔薇と呼ばれる好青年に成長を遂げていた。
6年前に父である侯爵を亡くした彼は15歳で家督を継ぎ、今では若き侯爵閣下として注目の的だと聞く。
初めて目にする広い会場で、遠目からでもひときわ目を引く令嬢等に囲まれる殿方が二人。その内の一人が初恋の君であるアレクシスだと言う事は直ぐに分かったけれど、初めての社交の場で周囲に集う美しい令嬢等の中に堂々と入って行く勇気も無かった。声を掛ける隙間なんて微塵も無く感じられた。
子供の頃はともかく、今となっては御覚え目出度い若き侯爵閣下に若輩者の自分が声を掛けられる訳もなく、このままずっと遠くから見つめているだけで終わってしまうのかと思っていた時だった。

「ごめん。少し失礼するよ」

そう告げると彼は真っ直ぐに私の方へと近付いて……来る?

(えっ!?)

目の前に立ち止まり、大きく胸の鼓動が高鳴った。

「マリエッタ……だよね。君に再び会えるこの日を、ずっと楽しみにしていたんだ」

「……私の事を覚えていてくれていたの?」

「当然だよ。君は当時の私にとって唯一の心の拠り所だった」

「そんな……」

まさかの言葉にほんのり頬が高揚するのを感じた。

「私の想像通り……いや、それ以上に素敵に成長してくれて本当に嬉しいよ」

満面の笑顔で話しかけられ、まるで夢の様だった。
ずっと憧れていた彼が私の事を覚えていてくれた。話しかけてくれた。それだけでとても天にも昇る思いだった。

それからも会う度に話しかけてくれるようになり、やがて私は昔呼んでいたように彼の事をアレクと呼ぶようになって行った。幼馴染として彼と周囲の令嬢等とは明らかに違う特権を持っているような感覚に陥っていた。
二人の間の8年間の空白を埋められたような気になり、自分はアレクにとって特別な存在になれるかもしれないと仄かな期待を寄せるようになっていてある日、急に彼の態度が変わった。

いつものように舞踏会でアレクの姿を見つけて私は徐に声を掛けた。

「アレクも来ていたの? 私も、」

「悪いけど、しばらくそっとしておいてくれないか……」

「……アレク?」

「……」

急なよそよそしい態度に私は戸惑ってしまった。
アレクに何があったのか?
それから何度舞踏会で彼の姿を見つけても、目が合う度に逸らされ、私は声を掛ける機会を段々と失って行った……。

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~ Comment ~

NoTitle 

四葉のクローバーを探す年齢でもなくなりましたね。
・・・まあ、子どもができればそうでもないんでしょうが。
希望の花はどこでも咲いていると願いたいものですが。
それでも四葉のクローバーは一塩なところを感じますね。

ようやくかえって来れました。
またよろしくお願いします。
長らくお待たせしました。
休み中の訪問ありがとうございました。

LandM様 

お久しぶりです。
そうですね。子供が居なければ今となっては中々探しませんね。
私も子供の頃願いを込めて、そして息子からも強請られて花冠や四葉のクローバーは昨年まで探していました。それで思いついた題材でした。

お仕事お疲れ様でした。
私もパートですが仕事と二足のわらじ状態で以前よりスローペースの更新です。
お互い無理なくこれからも続けて行きましょうね。
こちらこそ今後とも宜しくお願い致します。
いつも有り難うございます。
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