ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《4.本 心》

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傍に居る事が当然の様な関係を続けるようになって、今まで一度も見た事の無い程の険しい表情をしたロナルドの眼差しに、私は初めて戸惑いを覚えた。

「まっ、待ってロナルド! わたし・・・・ッ」

「駄目だ。待ったは無しだ!」

初めて向けられた、とても強い口調に身が凍った。
迫りくる彼を避けようと咄嗟に身を逸らせようと回避を試みだが、すぐさま顎を捉えられ振り払う事も出来なくなった。
こうなってくれば更に近付いて来る彼の顔を押し退ける事など最早無理だった。

「・・・・ゃッ!!」

必死にもがこうとしたけれど、もがけばもがく程に掴まれた彼の指に力が籠る・・・・。
激変する彼のあまりにも突然の行動に、口づけられた瞬間、私の瞳からは大粒の涙が溢れ出して来た。

初めての・・・・、家族以外の者と交わす初めての口づけ・・・・。
いつか愛しい人と交わすものだと夢に見ていたものだったけれど、それは思いを寄せるアレクとでは無く・・・・、これから結婚する筈の彼とだった・・・・。
だから耐えなければと思った。思おうとした・・・・。
一瞬咄嗟に身を拒んでしまったけれど、これが自分に課せられた運命なのだと覚悟して、彼に身を委ねなければと心を決めた筈なのに頬に伝う涙が止まる事は無かった。
我慢していればその内身体は馴染んでいくものだと言う話も聞いていたものだから、次第に深くなって行く彼の口づけを我慢して受け入れてはみたけれど、更に熱くなって行く彼の吐息は話に聞いていたように身を熱くさせるものではなく、次第に私の心を冷めたものへと変えて行った。
それでも、身を強張らせながらも結婚するのだからこれ位は受け入れられるようにならなくてはいけないものだと、何も考えずに強張る力を抜いてみれば事態は変わるのかもしれないと、抵抗するのを止めてみた。すると何を勘違いしたのか、彼はそれ以上の行為を了承したと判断したように突然捉えられていた片手を緩めると、その指先は私の首筋から胸元へとふいに伸ばされた。
鼓動は耳に突く程早く大きくなって行き、それでも耐えなければと自分に言い聞かせていたけれど、胸元をまさぐるような手の動きに一瞬息が詰まりそうになった。
今までに感じた事の無い不快以外の何ものでも無い感触に、とても耐えきれなくなり咄嗟に身を捩った瞬間、ドレスの胸元を縁取るレースが彼の袖口のカフスに引っかかり少し裂けてしまった。
露わになった、胸元に視線を落すと一瞬彼が私を見据え、冷ややかに薄笑いを浮かべた気がした。
その微笑みは憎悪以外の何ものでも無く、更なる冷たい感覚が背中を瞬時に駆け抜けて行った。

(無理ッ、やっぱり私・・・・)

「やッ!」

けれど一層露わになった胸元にロナルドの視線は更に色濃く艶めいて、一向に止めてくれる様子は無い。
私の気を逸らそうとより深く入り込んでくる口づけは、気を逸らす所か更なる嫌悪感を強く私に植え付けて行った。
どう拒んでいいのか最早分らず、もがいている内に咄嗟に彼の舌先を思わず強く噛んでしまった。

「てッ!・・・・・やってくれるじゃないか」

身体の拘束が解かれたのは良かったが、彼の口元からは血が滲んでいた。

「あっ、あの、ごめんなさい・・・・、私・・・・」

何と言えば良いのか最早分らない・・・・。
けれど今の状況で、彼とこれ以上の行為を続ける事は最早自分には不可能だと思った。

「男馴れしていない無垢な令嬢と聞いていたが、随分と威勢がいいじゃないか。私の理想からはかけ離れている行動だな。だが私と結婚するからにはそれなりの心構えを持って貰わなければ困る。己が主張を前面に押し出す様な者を私は好まない。妻は夫に対し従順であるべきだ。兄の婚約者のようにね。今日は最初だからまだ寛容で居てあげるけど、結婚したらこうはいかないから覚えておいて。私がじっくり時間を掛けて調教してあげるから」

「なッ!」

薄笑みを浮かべた彼の眼差しは、私に強い喪失感を植え付けた。

「反論は許さない!!」

(なんて人!!)

告げられた言葉に、彼の本心を垣間見た気がした。
彼は私を見ようとはしていない。私の中にベルマール嬢のような女性を求めようとしているのだ。
勿論結婚するからには貞淑な妻であるべきだとは思っている。けれど私は結婚によって私自身を変える気は毛頭無い。私自身を見てもくれない相手とは、どんなに我慢して結婚した所で上手くはいかないとそう感じた。
何より彼と居ても、どれだけ時間が過ぎようとも、私を私として受け入れてもくれない人と一緒になった所で絶対にアレクを忘れられる筈が無い。
アレクへの想いは、子供の頃に描いていた恋に恋した淡い恋心だけでは既に無いのだ。
今のアレクと・・・・、現実の彼と出会ってしまった今となっては、私の心を顧みもしないこのような横暴の人の為にアレクとの大切な思い出を消し去る事等出来はしない。
やはり私は彼の幸せを見届けるまでは誰の許にも嫁げない・・・・。この想いを振り切る事等最早出来はしないと思った。
ならば如何するべきなのか?

行く宛ては何処にもないけれど・・・・、けれど、これ以上ここへ留まる事だけは出来ないと私の心は強く訴え続けていた。

ロナルドが口内ににじみ出た血の混じった唾液を茂みの脇に吐き出し、口元を拭い取る一瞬の隙を見て、私は少し破れたドレスの胸元を鷲掴みに押さえながら、その場から必死になって駆け出した。

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~ Comment ~

NoTitle 

新連載が始まったので読んでみたら、いきなりハードな展開ですね~(^^)

それにしてもこのロナルドさん、最低な男ですな。天罰くだらんかな。うむむ。

ポール・ブリッツ様 

早速新作をお読み頂き有り難うございます。
はい、今回はあまり長くしない予定なので最初から飛ばしてハードな展開で突っ走ります!(笑)

ロナルドは、書き直せば書き直す毎に嫌な男に変貌を遂げて行きました。
やはりこういうキャラが居ないと話は盛り上がりませんしね。
彼に天罰ですか!? さぁどうでしょうか。
ただ、何も無かったら話が面白くないですからね♪

引き続きお楽しみ頂ければ幸いです。
いつも有り難うございます。
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