ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《6.胸 中1》(アレク視点)

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若き侯爵アレクシス・ルボル・グラッセにはずっと心に秘めた者がいた。
相手は13歳の夏、出会った4つ年下の女の子。

彼女は母の為に何も出来なかった自分にずっと探しても見つけられなかった幸せを呼ぶと言う四葉のクローバーを探し出してくれた。
笑顔の素敵な明るい娘で、病に伏せる母を心配し気弱になっている自分をいつも励まし勇気づけてくれた。
傍に居るだけで心が落ち着き安らげる存在は母の他には彼女が初めてだった。
しばらくして母が他界し、父もその跡を追う様に2年後に流行病で亡くなった。
そして私は社交界に正式に名を連ねる以前の15歳にして若くして跡目を継ぎ、グラッセ侯爵と呼ばれる事となった。
父の後を継ぐべく城へ上がっても、若輩者として詰る者、将来を見据えて媚を売ろうとする者、人様々だった。
そんな中で出会った3歳年上の若きサンドール公爵の子息パウウェルは、私に容赦しなかった。

「そんなに何も知らぬと言う態度でおどおどしていれば、周囲から見透かされるのは当然だ。迷い事があってもデンと構えていろ。そうすれば暫くは父の名声と家名がお前を守ってくれる。その間に出来得る限り全ての事を習得しろ。若い者は何も出来んと思っているあの忌々しい爺共等を私たちで黙らせてやろうではないか!」

自信に満ち、意気揚々と自論を毒舌を交えて唱えるパウウェルがとても眩しかった。
自分もそう有りたいと思った。

父の下につき、城に上がるようになって1年目と言うパウウェルは、それから私の良き理解者となり友となった。
以来死に物狂いで勉学に励みし、最初は人任せであった領地の管理も翌年には自らで行うようになった。城での職務も懸命に務め、19歳の時にやっと父がかつて勤めていた国務尚書とまでは行かないが、その補佐官の地位にまで上り詰めた。
本来ならば社交界デビューと同時に父の下で国務尚書補佐官としての地位を確立し、将来その職へ就く事が決まっていた。だがやっと本来あるべき場所まで自らの力で上り詰めたのだ。
その頃から徐々に周囲からも若き侯爵として名実ともに認めて貰えるようになり、私はかつて出会った少女の事を振り返る余裕が出来るようになって行った。

(今、彼女は何をしているのだろうか?)

職務を終え、家路につく時に何時も頭を過るのは彼女の事だった。

休日を利用し所在を確認すると、屋敷の近くまで赴いた。
最初は彼女の生まれ育った地を純粋に見て見たいと言うそれだけだったのだが、颯爽と馬に跨り、屋敷への小道を走り抜ける娘と後を追う侍女らしき者の姿を目にした瞬間、その思いは変貌を遂げていた。
艶やかな明るい茶褐色の髪に輝くマリンゴールドの瞳。
あの頃と変わらない笑顔の素敵な娘がそこに居た。

(マリーだ!!)

若い娘へと成長したマリエッタは、輝きに満ちた笑顔で以前にも増して私の心を捕らえ瞬時に魅了した。


彼女への恋心に気付いた幼き時、成人し正式に父の後を継ぐ事が決まったらその時は父を介し正式に求婚しようと秘かに心に決めていた。
けれど早くに父を亡くす事となってしまい、自分の事を考える余裕も無くしずっと過ごして来てしまった。
けれど今は違う!
彼女の年齢を考えれば先走り過ぎている事は十分理解していたが、行動を起こさずにはいられなかった。
非番で男爵がおそらくは邸に居るであろう事は分かっていた為、そのままマリエッタの父であるマニエール男爵に面会を求め、自らの真意を率直に全て伝えた。
利害関係の無い求婚が直ぐに成立しない事は承知していたが、溢れ出す想いを最早告げずにはいられなかった。
結果、想像通り男爵からは社交界デビューも果たしていない娘の結婚はまだ考えられないと告げられてしまった。だが話しはまた2年後、娘が正式に社交界デビューを果たした後に伺おうとの言葉を貰えた為、私はずっとその言葉を信じ、静かに時を待っていた。

彼女が社交界にデビューを果たす、その時を・・・・・。


社交界デビューのその日の早朝、私は屋敷のガーデンハウスで自らが育てた薔薇の花を摘んだ。
いつか彼女に贈りたいとずっと願いを込めて育てて来た。
真紅の薔薇を彼女になぞらえ中央に束ねると、周りを縁取るように白薔薇で囲んだ。
社交界での自分の字名にちなんで彼女を包み込むのはいつも自分でありたいとの願いを込めながら花束として包み、彼女宛てにカードを添えて届けさせた。
だがカードにはその真意も名も敢て伏せ、メッセージだけを記した。

『誠実で優しく尊敬できる君に、深い愛情を込めて』

彼女が告げずとも、私の存在を忘れる事無く気付いてくれる事を信じて・・・・・。 

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NoTitle 

誠実でやさしければ、すなわちそれは尊ばれる存在なんでしょうね。ということをふと思いますね。さすがに。そういうのが横行として貴族などを生むものですが。

LandM 様 

そうですね。世の中には色々な人が居ますからね。
やはり同性から見た場合、自分にないものを持っていたりそれが高位的立場となればやっかみたくもなるのでしょうね。
特に貴族などはプライド高い人も多いですし^^;

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