ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《9.思 索》(アレク視点)

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叔母は客観的に見て、あらゆる面において物事を冷静に捉える事が出来る人だと思っている。
だから今夜久し振りに会えた故、全ての事を話したのだ。
マリエッタに対し、いつまでも子供じみた態度を取り続けてしまう自分がどうしようもなく嫌で、如何にかしたくて叔母に救いの手を求めてしまったのだが、まさかこのような事を告げられる事になろうとは思いもしなかった。

「少し視点を変えてみれば普段の貴方ならば推察出来るでしょうに・・・・。彼女の置かれた立場に今の様子を加えて考えてみれば、それも容易に」

「余裕が無いんだ・・・・。こと、マリーの事になると全然冷静にはいられないんだ・・・・」

情けない程に余裕が無い。こんな自分は叔母や親しい友以外絶対に曝け出せない。

「彼女は男爵家の跡取り娘でもあるのでしょう? ならば貴方が幾ら立派に功績を残している将来有望な侯爵であったとしても、それは関係ないと思うわ。男爵が一番欲している娘の求婚相手はおそらく世間一般の娘の親が求める地位や将来性では無く、家を守り継いでくれる者よ。だから返って貴方の様な存在は親からは煙たがられるのよ」

「でも、私はその2年も前に男爵と既に約束していた。その時点では懸念される様な様子は微塵も・・・・」

「きっとそれが仇になったのね。2年もあれば婿養子位幾らでも探せる時間はあるわ。成人した娘宛てに、正式な文書で既に侯爵である貴方自らが直々に陛下に認を受け、話を勧めたとすれば男爵も拒めなくなるわ。だからこそ、その前に先手を打ったのよ。さも2年と言う猶予を与えたかに見せ、実の所は貴方から正式な話が来る事を拒む為にね」

「まさか・・・・」

思いもよらない叔母の話に、家の為に娘の気持ちも顧みずにここまでするものなのかと半信半疑ではあったが、デビュティから何故3か月も会うことがままならなかったかを考えれば、確かに事は符合する。

「侯家と言う不動的地位に既に居る為到底婿養子には望めない貴方と、自らの家へ婿養子として入り今後男爵家を盛り立ててくれると言う伯爵家の次男坊。貴族の家の家長には、その地位を守り後世に残さなければならない義務があるわ。息子と言う後継者がいれば問題も無かったのでしょうけれど、娘しか授からなかった親としては合理的な選択だったと思うわ。やり方は気に入らないけれど・・・・。私でももし同じ立場であったなら、親としては後者を選ぶでしょうね。跡継ぎを産む事が叶わなかった責任を思えば幾ら娘が可愛くても、夫には中々逆らえないと思うわ」

「では、彼女は私の求婚を・・・・、本当に・・・・まさか知らないとでも?」

「はっきりとは言えないけれど、有り得る話ね。彼女の言葉を聞けば尚更に」

「・・・・言葉?」

「まさか・・・・、気付いていないだなんて言わないでしょうね」

「最初に無視したのは私だと、責められ罵られた件か? 馬鹿だとも罵られた・・・・。当然だ。私は彼女の姿を見る事が辛くて、あからさまに無視してしまったのだから・・・・。だが彼女の口から現実を突きつけられると、自分が取ったあまりにも子供じみた態度に嫌気がさして、更に落ち込みそうだ・・・・・」

気落ちして何処か項垂れながらも叔母に心配をかけまいと苦笑いしていると、再び叔母のアリシラがあからさまに苛立ちの表情を見せた。

「情けない事言わないでアレクシス! 去り際に『・・・・せっかく人が諦めようとしているのに、そんな卑怯な言い方しないでッ アレクの馬鹿!』って彼女はそう言ったのよ!! 聞いていなかったの!?」

「あっ‥‥」

彼女から放たれたあの時の言葉があまりに重く辛すぎて、拾うべき言葉を見失っていた・・・・。

「落ち込む気持ちも分らなくは無いけれど、彼女があの話の中で唯一自ら貴方への気持ちを・・・・、本心を投げかけてくれたかもしれない言葉を簡単に見逃さないで!!」

告げられた言葉が心に重く圧し掛かった。
まだ半信半疑だ。けれど今叔母から告げられた言葉があまりにも思いがけなくて、それは心に酷く衝撃を齎した。

叔母から告げられなければ、おそらくマリーがせっかく投げかけてくれた言葉に気付くのが、もう少し遅れたと思う。心を落ち着かせるまでの時間が、あの時点での私には必要だった・・・・。

「・・・・でも、そんなッ・・・・都合の良い話・・・・」

信じられないと言う思いが交差し、心に抱いた微かな希望とは異なる言葉が口から零れ出た。

「男爵が貴方に告げたと言う言葉と、彼女が涙ながらに見せた本心とも受け取れるべき言葉。どちらを貴方が信じるかはアレクシスの勝手だけれど、貴族の結婚なんてね、親が勝手に進めるものよ。私なんて生まれた時から既に婚約者が決まって、それが今の主人だわ」

「・・・・叔母上・・・・私は・・・・」

「まだ婚約が正式なものでは無いのなら今ならば、殿下の信用も厚い貴方ですもの。まだ打つ手は残されているのでは無くて?」

(まだ、彼女を手に入れられるチャンスが自分に残されているのならば・・・・)

目から鱗が落ちた気分だった。

「感謝します、叔母上ッ!」

どんなに辛くても彼女の幸せの為に、自分は耐えなければと思っていた。
だが、もし彼女がこの婚姻に本当は乗り気では無いのだとすれば?
彼女の本当の幸せが、自分と共にあるのだとしたら?

告げた途端、もう身体は動き出していた。
マリエッタがここから駆け出して、何分経った? 彼女は何処へ行ったのだ?

「マリーッ!!」

私は力の限り声を張り上げ、全力で彼女の後を追いかけた。

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NoTitle 

恋というのは立場や身分などを超えてぶっ飛んでいきますから大変ですよね。それを破壊するか諦めるか、守るか、それは人次第ですね。

LandM様 

その通りですね。
恋と言うのはその途中の何処かで諦めてしまえばそれでおしまいです。
色々な障害がある中で二人がそれをどうやって回避して行くのか引き続き楽しんで頂ければ幸いです。

いつも有り難うございます。
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