ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《10.突 然》

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咄嗟に駆け出してしまったが、元来た方角へと足を進めてしまった為に息切れし、立ち止まった時には微かに舞踏会を彩る美しい管弦楽の音色と共に人々の話し声がかすかに聞こえていた。
この場所に戻るべきでは無かったのに・・・・。

アレクと決別した今となっても、やはり彼を心の内から追い出す事が無理だと言う事は自分自身が一番良く分かっていた。

(もう、忘れたいのに・・・・)

胸に秘めた思いをグッと心の奥底に押し留め、それでもアレクを諦めるしか無い現実と向き合い、残された道を探れば一番に出て来るのはロナルドとの婚約の事。
けれど本来の自分を受け入れてもくれない彼の許にはどうしても嫁ぎたくはないと言う思いも拭いきれなかった。
両親も勧める裕福な伯爵家の子息との縁談を回避する事は現状においてとても難しいだろう。おそらく父には何を言っても無駄だ。けれど母ならば事情を話せば少しは私の気持ちを汲み取り、理解してくれるかもしれないと言うかすかな希望を抱いた。

今日会場の何処かにいる筈の母を探し出そうと、私は賑やかな場へと再び足を一歩踏み入れた。

(ロナルドと結婚させられる位ならば、いっそこのまま誰にも嫁がず・・・・)

修道女として院に入る事を視野に入れ、漠然とその事を考えながら私は母を探し続けていた。
おそらく母は貴婦人等の集う一角の中の何処かにいる筈だ。いつも父と一緒に居るのは最初ダンスまで。その後は仲の良い夫人等と談笑している姿を良く目にする。
母のドレスの色を頼りに集う貴婦人等の中にその姿を探していると、突如後ろから荒い息づかいが聞こえて来て一瞬にして身を固くした。

「・・・・見つ・・・・、けた・・・・」

「えっ!?」

聞き覚えのある声に驚愕し、私は振り向き凝視した。

(何故・・・・、アレクがここに?)

息を切らせて私を食い入るように見つめるその瞳は、とても強い眼力を携えていた。

「マリー・・・・、もう少し話ができないか!? 君に・・・・、どうしても聞いておかなければならない・・・・事があるんだ・・・・」

荒い息を整えながらも真剣な眼差しで告げられる言葉に、思わず私は絆されそうになった。

「・・・・アレク・・・・」

(まさか・・・・、私を追いかけて来てくれたの?)

そんな都合の良い話はないと否定しながらも、額に汗を滲ませ真剣な表情で見つめるアレクの瞳は、とても私を軽んじている様には見えなくて、戸惑いながらも私は結局小さく頷いてしまった。

「マリー、・・・・君は私の話をお父上から何処まで聞いているのか?」

問われた言葉の意味が分からず、私は呆然とアレクを見つめると瞳を何度が瞬かせた。

「えっと・・・・それはどういう?・・・・」

「今で無くても・・・・、2年前でも何時でも良い。私が君にッ」

アレクが息を整えながらも私に真剣な眼差しで言葉を投げかけてくれて時だった。

「マリエッタ! こんな所で何をしているッ!!」

問われた明確な意味が掴めず、それを確認しようとした正にその時、間を遮る様な大きな声音が私たちの間を引き裂いた。

「・・・・御父様・・・・」

「・・・・男・・・・爵・・・・」

まさかの父との遭遇は、一瞬にして私の思考を混乱させた。

「早く戻るんだ! ロナルドが心配してお前を探しているぞ」

聞いた瞬間、背筋が凍る思いだった。

「・・・・ぃゃよ・・・・」

「何だと?」

「・・・・戻りたくないわ・・・・」

「今更何を言っているんだッ」

「だって・・・・、私、人形じゃない!!」

自分でも父に今になってこのような否定的な言葉が紡げるとは思ってもいなかった。

「何を訳の分らぬ事をッ。聞けば婚約式に着るドレスの話で口論となり突然いなくなってしまったそうではないか。自分の意見が通らないと言って、そのような子供じみた我儘は止しなさい。こんな事では先が思いやられる! はぁ・・・・」

父は言い終わると深いため息を一つ零した。

「そんな事私知らないッ その様な話なんて興味も無いわ! 何を言っているのか訳が分からない・・・・。それに私が逃げ出した理由はそんな事ではないわ。ロナルドが突然ッ」

言葉を投げかけた途端、直ぐ側に居るアレクシスの食い入る様な強い視線に気づき、私は慌てて言葉をそのまま飲み込んだ。

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~ Comment ~

NoTitle 

貴族の結婚に私情を挟む時点で間違っている、といえばそれまでなんだけどなあ。こんなスキャンダルを起こしたら、アレクくんの政治基盤なんて粉々に吹っ飛んでしまうでしょうし。

ここでリチャード獅子心王みたいな人が現れたりしないんですか? でなければ水戸黄門とかコブラとか……。

ポール・ブリッツ様 

貴族の結婚には流石に色々ありますからね。
ただ、ここの微妙な所はまだ正式には婚約していないと言う点です。
それを彼はどう回避するつもりなのでしょうか?
と言ってもまだ気付いたばかりですし、ちょっと大変かも^^;
でも、確かにここで不動的実力者の一声があれば強力ですよね。
色々考えていることはあるんですが、まだそれは明かせません(笑)

いつも有り難うございます。

NoTitle 

マリーのうら若き心にはいつも癒されますね。。。(>_<)
こういう主人公を作ればもっと私の作品のバリエーションも変わるのでしょうけどね。う~~む。いつも癒される強力キャラクターです。

LandM様 

いつも癒されるキャラクターですか!?
嬉しいお言葉有り難うございます^^
主人公にあまり嫌いなタイプを持って来たくないと言うだけの話なのですが、そう言って頂けてとても嬉しいです。
私こそ中々我の強いキャラって実は多く出せなくて。癖のあるキャラって結構話を締めてくれるので良い味出してくれるんですけどね。
私こそ個性的キャラクターを沢山作り出せるLandM様が羨ましかったりします。人にはそれぞれ得意分野があるものですね。

いつも有り難うございます。

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