ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《13.介 入》

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連れて行かれた先にはロナルドをはじめ、ドワイヤル伯爵と母が一緒に私を待っていた。
父は伝令を頼んだ従者の肩を軽く叩くと、傍に居たドワイヤル伯爵の許へと慌てて駆け寄り深々と頭を下げていた。

「この度は申し訳ございません。娘が勝手な真似を・・・・」

ひたすら頭を下げ、許しを請うていた。
許しを請う必要なんて何一つないのに・・・・。

私は父のその様な姿を見たく無くて、思わず視線を逸らした。
すると・・・・。

「マリエッタ! 居なくなったと聞いたものだから本当に心配していたのよ」

私の姿を見るなり心配し駆けて来る母は、共に私の姿を目にしすぐ傍まで足を向けていたロナルドを退けると真っ先に私の許へ駆け寄り手を携えてくれた。

「まあ、貴女一体どうしたの?」

頬の腫れに気付き、とても驚いているようだった。

「・・・・お母様・・・・、わたし・・・・ッ」

母の姿を見た瞬間、張っていた気が緩み突如目頭が熱くなった。

「マリエッタ?」

「・・・・違うの、お母様・・・・。ロナルドが・・・・怖くなって、私・・・・逃げ出してしまって・・・・」

きちんと話そうとしても、母の顔を見ると涙が溢れて来て上手く言葉を紡ぐことが出来なくなってしまった。けれどショールで必死に胸元を隠そうとしている私の手が小刻みに震えている事に母は気付いてくれて、硬直して息を飲むのが分かった。
ゆっくりと近付いて来るロナルドを振り返り、怪訝そうに見つめていた。
やはり今私の気持ちを分かってくれるのは、母しかいないと思った。
当のロナルドは平然と素知らぬ顔を決めこんでいる。

「・・・・まさか、女性に手を揚げるなんて・・・・」

「いえ、私は何もッ・・・・」

誤解してロナルドを睨みつける母の鋭い視線に、私は助けてなんかやりたくはないと思いつつも、彼の様な嘘をつきたく無くて慌ててその事を否定した。

「いえ・・・・、これは、お父様が・・・・」

「何で・・・・すって!?」

息を飲み、私から発せられたまさかの言葉に母も驚きを隠せないようだった。
その場で引き吊った様にピクリと眉を動かせると、父に目を向けスタスタと歩き出すし伯爵と父の間に割って入った。

「伯爵、申し訳ございませんが本日はこれにて私と娘は失礼させて頂きますわ」

「何を言う失礼な事を突然言い出すのだ、セザンヌ!」

「どうやらご子息のお話しと娘の話しには随分と食い違った点があるように思えます。加えて申仕上げさせて頂ければ、娘は今回の件で主人に手を揚げられ、心を傷つけられ頬も酷く腫らしております。今は早く冷やしてやりませんと・・・・。尚、今回の件につきましても差し出がましいかもしれませんが、もう互いに成人した者同士の事ですし今後の事は二人で話し合い解決すべき問題かと存じます。親が口を挟むものでは無いと存じますし・・・・。何があったにせよ二人の間で解決も出来ない様では娘が今後結婚した所で幸せになれるとは到底思えません。私はそのように思うのですが、伯爵は如何お考えでしょうか?」

「セザンヌ! 何という言い様を・・・・。伯爵に失礼ではないか!!」

思いもよらぬ母の介入に流石の父も少し慌てているようだったが、ここはドワイヤル伯爵の方が冷静な判断で対処をしてくれた。

「まあ待て、男爵。確かに夫人の言葉にも一理ある」

「ご配慮のお言葉、有難うございます伯爵」

「出過ぎた真似をッ」

父が不機嫌そうに小声だったが愚痴めいた言葉を発し顔を背けた態度が、更に母の怒りを逆なでさせたようだった。

「貴方の口からはその様な言葉は聞きたくもありませんわ、オセアド!! 何があったにせよ、娘の頬をこれ程腫らすほどに叩いて良い道理がありません!! 貴方が娘に手を上げる方だとは思ってもいませんでしたわ!」

「それはッ」

「止めないか二人とも! 何があったにせよ娘に限らず女性に手を上げるのは良くないぞ男爵。貴殿の事だから娘可愛さに心配するあまりの行動だったのだろうが・・・・、それにしてもだ」

「・・・・ッ、はあ‥‥」

「ここは良いから夫人はマリエッタ嬢を直ぐに手当てしてあげると良い。腫れが引かねば婚約式所でもないであろう」

「申し訳ございません伯爵、ではお言葉に甘えまして・・・・」

母は深々とドワイヤル伯爵に頭を下げた。

「さあ、マリエッタ。何があったにせよ皆様にご心配をおかけしたのは事実なのだから、貴女もきちんとご挨拶なさい」

「・・・・ご心配をおかけし、申し訳ございませんでした・・・・」

頬を押さえたまま私は皆に向かって深々と頭を下げた。

その様子を側で見ていたロナルドは何処か口惜しそうだったが、ここで差し出口を挟んだ所で彼には何の利点も無い筈だ。
そのままだんまりを決めこむと、何も言わずに私と母を見送ってくれた。

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~ Comment ~

NoTitle 

ロナルドが狙っているのは侯爵家の椅子ですか?

マリエッタとアレクの仲を裂くよう事前工作しておき、そして婚儀が済み次第マリエッタをある程度解き放つ。そうすると十中八九アレクに逢いに行くだろうから、その場を押さえて不義密通で告訴すれば、アレクの地位は地に墜ち、侯爵家の椅子は自然とロナルドのもの。マリエッタの命なんか知ったことではない。斬首に持ち込めれば最高だが、自殺でもしてくれればアレクも後を追うだろう。侯爵家の椅子はますますロナルドのものに……。その後裏切られた男爵がなにをいおうと知ったことではない。黙ってくれればそれでいいが、謀反の罪を着せてとり潰しでもいいかな、などと考えているのでは……。

いやロナルドくんはもっと腹黒いか(^^;)

続きを楽しみにしてます~。

NoTitle 

いつの時代も親は子供を自由にしたいものですが。
それはそれで間違っていると思うのに年月はかかるもんでしょうね。
・・・と言えるのは、私に子どもがいないからですかね。
子どもができたら私もこういうことをしたくなる心境になるのでしょうかね。。。

ポール・ブリッツ様 

おお!ズバリ突いて来ましたね♪
細かい事はまだ言えませんが、当たらずも遠からずと言う所でしょうか。

>いやロナルドくんはもっと腹黒いか(^^;)
これは読む側の受け取り方次第かも。
まだまだ暴かれるのは先の話になりますが引き続き楽しみにして頂ければ幸いです。

いつも有り難うございます。

LandM様 

子どもは自由にするのが良いのか、縛るのが良いのか、実際問題難しい所です。
私はかなり縛られて育って来ました。
子供の頃は煩わしく思う事もありましたが今はある意味感謝している部分も確かにあります。
ただ、その為に1つの夢を諦めざるを得なかったのも事実なので人として間違っていると思う事以外は寛容でありたいと思っています。
子どもに信じられる親でありたいですし、子供を信じられる親でありたいと思っています。

いつも有り難うございます。
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