ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《14.含 事》

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母には今日あった出来事を全て話そうと心に決めて馬車に乗り込んだ。

「・・・・ありがとう、お母さま」

「良いのよ、マリエッタ。詳しい事情は分からないけれど、貴方が心に傷を負い何か抱えている事は理解出来るから」

「・・・・おかっ・・・・さまッ・・・・」

母の優しい言葉に名を告げた途端、今まで押さえていた感情が溢れ出してしまい、結局は馬車の中では何も告げられなかった。
多くは語らなくても、やはり母だけは私の事を理解してくれていると思うと何処か安心して、私は母に抱きつくと子供の様に唯々咽び泣いてしまった・・・・。

屋敷に着く頃には何とか涙は止まっていたが、泣きすぎて頬だけでなく目まで真っ赤に腫らしてしまっていた。
侍女は私の姿を見るなり足早に姿を消し、部屋へ戻ると直ぐに何も言わずに氷水を用意してくれて、浸した布で何度も目元と頬を冷やしてくれた。

「良かったですわ。目元は腫れずに落ち着いて参りましたわ」

「・・・・そう・・・・」

鏡を見なくても、瞼の痒みも重みも無くなっていたし、目の腫れが落ち着いて来ていた事は自分でも分かっていた。けれど頬はまだ全然引いている気がしなかった。やはり直ぐに処置できなかったのがいけなかったのだろうか・・・・。

「お湯は如何なさいますか? 準備は整ってございますが・・・・。奥さまは湯に浸かった方が気分的には落ち着かれるかもしれないと申してはおられましたが、ご気分が優れないのでしたら御無理をされる必要は無いと・・・・」

「・・・・いいえ、大丈夫。頂くわ」

「畏まりました」

頬は相変わらず痛むけれど、別に直ぐに良くなりたいとは思わなかった。
伯爵は頬の腫れを気にしていた。もし、腫れが引かなければ順調に行けば来週末予定の婚約披露パーティも延期されるのではないかと思うと、痛みか消えずこのままで良いとさえ思えてしまう自分が何処かにいた。
父から頬を打たれた時、一瞬恨みはしたけれど、その事で本当に婚約が延期になるのなら少しは感謝しなければと言う気持ちになっていた。


その夜はとにかく精神的にも疲れ果て、早くに床に就いた。
けれど今日我が身に起きた色々な事が思い出され、頭の中を駆け巡るものだから、結局目を瞑っても中々眠れずにいた。
既に何度か分らない深いため息をついていた。
するとおそらくは今日帰宅する事はないだろうと思っていた父が帰って来たのか、外から馬車の近付く音が聞こえて来た。
いつもドワイヤル伯爵と会った夜は帰って来なのに・・・・。
父が帰宅したとなれば、何やらまた御小言を言われるのではないかと思い、少しドキドキしながらしばらくベッドの中に身を隠していた。
だが、程なく部屋の扉を開いたのは父では無く母だった。

「・・・・お母様?」

「ごめんなさい。起こしてしまった?」

「いえ、どうせ眠れなかったから・・・・」

「そう・・・・」

母は頬を冷やしていた布を取り、患部にそっと触れると深いため息をついた。

「まだ腫れているわね・・・・。御父様、お戻りになったわ。もう一言でも、言ってやるつもりだったのだけど、思ったより反省しているようだから止めたわ。貴女の事をとても心配して、叩いてしまった事も後悔されていたわ」

「・・・・そんなの嘘よ。違うわッ。御父様が大切なのはこの家よ。私では無いわ!」

「マリエッタ、それは違うわ」

「ううん。違わない! 心配なんてする筈無いわ。本当に私の事を考えてくれているのならば、何故体裁ばかり取り繕おうとするのよッ 私の言葉なんて何一つ耳を貸してもくれないのに!!」

「そうでは無いわ。確かに今回のお話が我が家にとっても有難い条件だったことは認めるわ。でもね、お父様はそれだけで貴女の結婚相手にロナルドを選んだ訳では無かったのよ。誠実で優しい彼の事をとても気に入ったから・・・・」

「そんなの嘘だわ!」

(ロナルドが誠実ですって? 優しい?)

とても信じられなかった。

「いいえ。そうではないのよ、マリエッタ。貴女ロナルドの事を何かきっと誤解しているわ」

「誤解?」

何処をどう誤解すればあのロナルドが優しい人間に成り得ると言うのだろうか!?
母の突然の言葉がこそが今の私にはとても信じられない事だった・・・・。

「実は・・・・、今まで貴女に心配をかけたく無くてずっと黙っていた事があるの・・・・」

母が突然神妙な眼差しで何かを告げる事を決心したように私を見つめ返した。

「・・・・なっ、何!?」

母は一体、私に何を告げようとしているのだろうか?・・・・。
その言葉は私の思いを覆させる程に重いものなのだろうか?

私は息を詰め、その言動を見守った。

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NoTitle 

初めましてこんにちわ(*'ω'*)

こそこそお伺いして読ませていただいております。

マリエッタのように、母上様のお言葉が凄く気になります。
何を告げるのでしょうか。ドキドキしながらお待ちしております~。
執筆頑張ってください。楽しみにしています(*´∀`*)

NoTitle 

母優しですね。
こういう父だと予定調和で母親は寛大になるものですよね。
つり合いが取れているんでしょうね。

ユズキ様 

初めまして。
以前よりご覧頂いているとの事で有り難うございます。とても嬉しいです^^

母の言葉、気になりますよね。
話を聞いてマリエッタがどう思うか?それが次話の見所でしょうか。

今中々時間がとれず週2~3度の更新になってしまっていますが引き続きお楽しみいただければ幸いです。
宜しければまた遊びに来て下さいね。
コメント有り難うございました。

LandM 様 

そうですね。父がああ言う人性格なので、母は理解のある人にしました。
両親とも同じ性格だと、マリエッタもきついだろうし、つり合い的な事も考慮して設定しました。
仰る通り、こういう父だと母は寛大になるものですよね。

いつもコメント有り難うございます。
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