ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《16.言 明》

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赤子をあやす様に何度も背中を擦り、私の涙が止まるまで母は何も言わずにただ抱きしめてくれた。

「身代りだったの・・・・」

「身・・・・代り?」

「・・・・マルベール嬢が好きだったみたいなの・・・・。でも、叶わないから私なの・・・・。私に彼女の様になれと強要されたわ・・・・」

「・・・・そう・・・・ロナルドが・・・・。彼も辛い思いをしたのね」

「あっ・・・・」

母の言葉にハッとした。
最初、マルベール嬢を見つめるロナルドの姿に、痛々しい程の同情を覚えた。
私と同じでロナルドも辛い恋をしているのだと、最初は確かに親近感がわいた事も事実だ。
けれど、だからと言って私の思いを蔑にして良い筈が無い!

「兄弟で同じ者を好きになった場合は悲惨ね。親は決まって長兄に優先権が与えたがるものだわ。婚約式ではにこやかに二人を祝福していた様だったけれど・・・・。そう・・・・。想いを絶ち切るのに精一杯できっと心に余裕が無かったのかもしれないわね。その状況でもし父親から『お前も相手を見つけてやったから結婚しろ』等と言われたのだとすれば彼も辛かったでしょうね・・・・」

「・・・・そうかもしれない・・・・。けれど、だからと言って私まで巻き込んでほしくないッ・・・・」

「そうね。貴女には関係ない話だわね・・・・」

「・・・・ロナルドには同情はするけれど、今の話を聞いても私は彼にそれ以上の感情は抱けない・・・・」

「そう・・・・」

「それ所か今の彼には嫌悪感しか抱けない。自分が辛いからって人を巻き込んで良い訳無い! 人の気持ちを無視して・・・・あんなことッ・・・・。さっ、最初は家の為に我慢しなきゃって思ったけど・・・・、けれど辛いのはロナルドだけじゃない。私だって忘れようと必死で努力しているのにッ!!」

止まりかけていた涙が再びはらはらと溢れ出して来た。

「マリエッタ・・・・? まさか貴女・・・・好きな殿方でもいるの?」

「・・・・うっ・・・・」

言葉にならず、私は再びまた母の胸に顔を埋めた。
母は私を抱きしめながら小さくため息をついた。

「どうしてもっと早くに相談してくれなかったの!?」

「・・・・だって・・・・おとっ・・・・ひっく、様が‥‥、もう決まった事だって・・・・」

「もう、本当に・・・・」

母が頭を抱え、呆れかえった様に大きく息を吐いた。

「それで、お相手は? もしかして・・・・、お付き合いをしていたの?」

私は大きく首を横に振った。

「・・・・でも、・・・・『休みに誘っていいか』って聞かれたわ・・・・」

「まあ、それでは脈はあるのね?」

「わからなぃ・・・・。でも、・・・・突然無視されちゃって・・・・」

「あぁ、可哀想なマリエッタ・・・・。優柔不断な殿方を好きになってしまったのね。でも返ってそれは良かったかもしれないわ。そう言う殿方は駄目よ。危険だわ。貴女は社交界にデビューしたばかりで殿方の事情を良く知らないのかもしれないけれど、それは貴女の気を引く為の上等手段よ。簡単に騙されては駄目よッ」

「違うのッ、アレクはそんな人じゃないわ!! 私を追いかけて来てくれて、心配してくれたのよ! それにッ」

「待ってマリエッタ! ・・・・アレクって、まさか貴女の想い人ってアレクシス・ルボル・グラッセ侯爵なの?」

私が小さくコクリッと頷くと母はとても驚いた表情をしていた。

「ずっと好きだったの・・・・。子供の頃から・・・・。逢えなくなって・・・・、私の事なんて忘れていると思っていたのに覚えていてくれて、社交界デビューの日からとても親しく接してくれてたの・・・・。とても嬉しかったわ」

瞳を潤ませながら必死で想いを告げ、アレクの事を誤解して欲しくなくて母に強い眼差しを送りながら見つめ返した。すると如何いう訳か、みるみる母の表情は先程とは程遠い険しいものへと変化して行った。

「・・・・あっ、あの・・・・お母様?」

少し戸惑いながら名を呼ぶと、母は額に手を当て深いため息をつきながら首を大きく横に振った。

何か不味い事でも告げてしまったのだろうか?
心が騒いで胸の鼓動が早くなって行くのを感じた。

「ああ、何て情けないッ!!」

一言告げるなり怒りを露わにさせ突如部屋を飛び出す母を、私は驚きの眼差しで唯々呆然と見送った。

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NoTitle 

。。。恋は盲目と言うけれど。
それで人生が終えるならそれはそれで幸せなんですけどね。
。。。その前に物語が終わるか。
女性の恋は男性の恋と違うから視点が違う印象がしますね。

LandM様 

『恋は盲目』確かにそうですね。
好きな人と一緒になれて幸せに過ごせるのが何にせよ一番の幸せだと思います。
ハッピーエンドを推進していますので、それが満たされればお話も終盤でくくりに入ります。
恋愛に対しての見方によって視点と言う物は違ってきますものね。
男女間の視点の違いかぁ。こういう場合の男性の捉え方も気になりますね。
私の目指している方向性は純粋でひた向きな恋愛模様なんですけどね。

いつも有り難うございます^^
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