ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《17.親 心1》

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何が如何なってしまったのか?

何も分からぬまま落ち着く事も出来ずに私はおろおろするばかりだった。
疲れているのに不安で眠れなかった状況が一転して、今度は母の様子が気になり目が更に冴えてしまった。
結局自室でじっとしている事も出来なくなりドキドキしながらこっそり扉を開けると、まだ灯りの残る下の階をそっと覗き込んでみた。
すると、何やら口論するような両親の声がかすかに聞こえて来て、慌てて耳を欹てた。

『オセアド、貴方がそんな方だとは思いませんでしたわ。あの子の幸せを、何だと思っているのですか!』

『それはッ 可愛い娘にはずっと傍に居て欲しいと思っているだけだ。願うのは当然だろう!? 家にはあの子しかいないのだからな。婿養子に来てくれると言う者が現れたのだ。喜ばしい話じゃないか。それの何処が悪い!』

『ですから、それこそが傲慢だと申し上げているのです!!』

『おっ、お前にそれを言う権利があるのか!? 我が男爵家に嫁ぎながらも男児を産む事の叶わなかったお前がッ』

あっ、不味い・・・・。
父から告げられた言葉に、瞬時にそう思った。
すると案の定少し間が開いた次の瞬間、母の口調が急に早口になった。

『・・・・今になって・・・・、そのような事を申されるだなんて・・・・。マリエッタが生まれた時のあの労いのお言葉は嘘だったのですか!? やっと授かった子が女児で申し訳なく思っていた私に貴方は言って下さいましたわね。二人が元気でいてくれればそれで良いと。それ以上の喜びは無いと・・・・。あの言葉は見せかけだけのものだったのですか?』

『いや、それはッ』

『ずっとこの事は胸の内に治めて永遠に口にするつもりはありませんでしたが、貴方がそうまで仰るのならば言わせて頂きます!』

『なっ、何をだ?』

『元来マニエール家は嫡出子の少ない家系なのですってね。子に恵まれず悩んでいた私を見るに見かねた亡きお義母上様がこっそり教えて下さいましたわ。お義母様が貴方を授かったのもご結婚から13年目だったのですってね。加えて申せば祖父君様等は結局子を授かる事が叶わず外戚から養子を迎えたのだとか。お母様はいざとなればそう言う手段も取れるから、あまり深く考えるなと私を慰めて下さいましたわ。ですが貴方はその様な大切な事を私に一言も仰っては下さらなかった・・・・。その様な貴方に・・・・、今更男児云々等と語って欲しくはございません!』

『うっ・・・・』

『貴方が告げて下さらなかった事に、当時の私は暫く酷く傷つきも致しました。ですが、子が出来ぬ事を周囲からどの様に囁かれようとも貴方は一度も私を責める事はなさらなかった。その事で私はこの胸の内は明かさず、ずっと我が胸の中に留め置こうと決めていたのです。ですが幸いにしてその後私は身籠る事が叶い、女の子でしたが長子を儲ける事が出来ました。性別に関わらず、あの時貴方があれ程までに喜んで下さったのには、本当は自分の代で血を絶やさずに済むと言う事の安堵感があったのではありませんか!?』

『それはッ だが私は本当にあの子が可愛いと思えばこそッ』

『勿論、あの子が可愛いと言うのも事実でしょう。跡継ぎとして手元に置きたいと言う気持ちも理解出来ます。けれどだからと言って貴方に女としてのあの子の幸せを奪う権利は無いわ!』

『何をその様に大げさな事を。ロナルドの何処が不服なのだ? お前もあの者ならばと納得していたではないか!』

『それはマリエッタがこの結婚に乗り気だと貴方が申されていたからッ! ですが、先程マリエッタ自身に思いのたけを聞かされ、私は親として恥ずかしくなりました。何故今まで貴方の言葉を信じ、全てを任せてしまったのかと・・・・。貴方には失望致しました・・・・』

『待て、セザンヌッ そっ、それはだなぁ・・・・』

『あの子はハッキリと申しました。自分の想い人はアレクなのだと!』

『・・・・アレク?』

『惚けないで下さいッ アレクシス・ルボル・グラッセ侯爵です!』

『・・・・いゃ、そうなのか? 確か・・・・私の聞いた時には・・・・』

『これ以上誤魔化さないで下さい!! 本当に情けないッ 親のエゴで二人の仲を引き裂いて・・・・、自分の娘が嘆き悲しむ姿を貴方はそんなにも見たかったのですか?』

『いゃ、それは・・・・』

口ごもるような父の声音に、我が気持ちをこれ程までに汲み取り依然強固な意志を持ち、父に立ち向かおうとしてくれている母を、私は今までに無い程に頼もしく感じた。

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NoTitle 

ま、なんにしても喧嘩は必要だと思います。
普段から言い合える関係性なら問題ないのですが、
それがない場合は適度に冷戦か喧嘩状態を作っておくことが長く続くコツかもしれませんね。。。

LandM様 

母は強しです。
娘の幸せを思えば何だって出来ると言う所でしょうか。
政略結婚で嫁いで来た母ですが、やはり恋愛に対するあこがれもそれなりに当時は持っていました。
勿論父も娘を不幸にしたいなどとは思ってはいません。
けれど結婚に対し母のような憧れは持っていないのかもしれませんね。
それが二人の違いです。
今後の展開も楽しんで頂ければ幸いです。

いつも有り難うございます。
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