ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《22.疑 問》

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互いを気遣う様に何処か遠慮がちな母と侯爵夫人の会話に、漠然とだが自分の中でかすかな希望を見出したていた。
あの時父が口を濁した言葉が・・・・、アレクが私に問うてくれたあの言葉こそが、やはり真実であったのだと言う事実。
けれどアレクは私にどの様な話があり、幾度も我が家へ足を運んでくれていたのだろうか?

「色々と気を揉みましたが、では今回陛下へ申請していると言う婚約の件に関しては正式にマリエッタ嬢の意に沿わぬものと受け取っても宜しいのですわね」

「はい、それは勿論!」

母と侯爵夫人の会話を遮る様に間へ割って入り、自らの意思を懸命に伝えた。
慌てて返事をしたせいで何処か早くなってしまった口調が可笑しかったのか、夫人から小さく笑われてしまった。
相手がアレクの叔母様だったと思うと一層恥ずかしさが募った。きっと耳まで真っ赤だ。
でも次の瞬間、夫人が零れるような笑顔を湛えながら告げてくれた言葉で、私は心が幾分軽くなった。

「良かったですわ。でしたらその件に関しましては引き続き、アレクシスへ一任致しましょう。申請書は提出した当人以外の者が撤回する事は認められていない様ですが、何やらそれ以外にも動きがあるようですし。ふっふっふっ」

何処か含んだ様なこの笑い声は、一体何を物語っているのだろうか?

「と、申しますと?」

「ただ手を拱いているのかと思い情けなく思っておりましたが、アレクシスも何やらあれでいて色々と手を尽くしている様ですわ」

「手を・・・・尽くして?」

「まあッ」

首を傾げる私を他所に、侯爵夫人に釣られる様に母からも笑みが零れている。
何やら二人して何処か納得し賛同している様だが、私にはやはり細かい話が今一つ上手く掴めない。
だが、どうやらアレクが私と再び会う為に何か策を練ってくれていると言う事は何となく理解出来た。
アレクが何故私にそこまでしてくれる必要があるのか?
問うても何処か謎めいた答えしか告げてくれぬ侯爵夫人と母だったが、共に笑顔の絶えない二人の表情を目にし、かすかに私の中で新たな期待が胸の中を駆け抜けていた。

「でもね、本当は私がここまで介入するものでは無いと思っているのよ」

「あっ、はい・・・・」

再び目を向けられ、私は踵を正した。

「けれど、今回は二人の関係をより複雑なものにしてしまった原因の一つは私にもあると思うの。ですから一度だけ・・・・、私は今度開催される王宮舞踏会へアレクシスを引きずり出して差し上げるわ」

「引き摺り・・・・出す?」

言っている意味がまたもや上手く掴めない。
アレクは何時だって私が足を運んだ舞踏会には必ず出席していたのに。

「元々あの子も私と同じで、ああ言う賑やかな場は苦手な筈なのよ。殿下からのお誘いや仕事がらみで無ければあわよくば避けたいと思っている部類だわ」

「そうなのですか!?」

「それが突如、貴女が社交界にデビューする事になって全く今までとは別人のように何時も楽しそうで。やはり若いって良いわね」

いやいや、侯爵夫人はまだまだ全然お若いと思うけれど・・・・。

何処か含んだ様に笑みを湛える侯爵夫人に吊られて、私も少しだけ表情が綻んだ。
そして、かすかにある事を期待した。

「招待状は王宮に関わる全ての貴族の家々へ届けられるわ。だから誰と会い、どの様な行動を取るかは全て貴女次第よ。それは心してね」

「・・・・はい・・・・」

「手を差し伸べて差し上げるのは簡単だけれど、私はだからと言って必要以上に貴女を庇護するつもりは無いの。自らの人生は自分で切り開きくものなのです。その道の先に貴女の幸せが訪れる事を私は祈っていますよ」

「はい。有難うございます」


結局私と母は侯爵家へ8日間滞在した。
その間に頬の腫れは引き、父からも幸いにして見つかる事は無かった。
当初予定されていた婚約式も、表向きは私の体調不良によるものと言う事でどうやら日を改めると言う事になったらしい。
だが夫人の調べてくれた話によれば、実際には王宮から本来既に届けられている筈の婚約を認めると言う正式な書類が、どうやら届いていないようだった。
通常ならば正式な届け出からひと月もあれば何の問題も無く正式に届くものらしいのだが、一体そこで何があったのか?
何やらアレクが手を尽くしてくれていると言う話とこの件は、何処か関係しているのだろうか?
今の私に知る由は無いけれど今は唯、今夜開かれる王宮舞踏会の訪れを高鳴る思いで待ちわびていた。

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~ Comment ~

NoTitle 

しばらくの休息も大切ですね。8日間滞在するというのも。
こういうときだからこそ一週間ぐらいの休息を得ることで
戦い続けるというのもありますが。
そういう休息もあって良い話だと思います。
おちついて交渉することも大切なことが多いですからね。

LandM様 

そうですね。
一見ささいな日程設定と思われがちですが、実は私もそのつもりで日にちの設定をしました。
しかし、ここまで理解し読んで頂けるとは思いもしていなかったので気付いて頂き嬉しい限りです。
感情的になったままではどうしても先には進めないので、マリーには自分の気持ちを見つめ直し再確認する時間も作ってあげたかったのです。

いつもコメント有り難うございます。
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