ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《24.相 違》

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隙を見て再び私の手を取り痛い程強く握り締めると、今度は再び足早に歩き始めた。
分かっているのかいないのか? 掴まれた手はあまりの痛さに既に悲鳴をあげていた。
思わず痛みで9日振りの再会の喜びも何処か遠のいてしまいそうな程だった。

「……アレク、痛いわ。もう少し手の力を緩めて……」

「駄目だ!!」

アレクは更に手に力を込め、ズンズンと足早に唯々先へ歩いて行く。

(もしかして……怒っている?)

私の何がアレクに不快を掻いてしまったのだろうか?
あまりにも普段のアレクらしからぬ低く凄みのある声に、私は一瞬にして身を凍らせた。

どうやら、ロナルドはその後私の後を追って来ている様子は無かった。
良かった。その事については何処かホッとし胸を撫ぜ下ろしたが、アレクは一言『駄目だ!!』と告げた後は終始黙り込み、私の手を引きながら先日別れたあの噴水の傍まで私を無理矢理連れて来くると、ピタリと足を止めた。

「あっ、あの……アレク、私ねッ」

告げられる前に先日の件を一言謝っておこうと言葉を吐き出しかけた途端、更に言葉は遮られた。

「なっ、あいつのお前に対する想いはこの程度のものなんだ。少し睨みをきかせただけで竦んでしまいお前の後すら真面に追えずに私に委ねてしまう。お前に対しその程度の感情しか持ち合わせていない男なんだ! だのに、そんな男の為に、お前はこの先一生をアイツに捧げるつもりなのか!?」

「えっ?」

想像して……。

「何故あんな男を選ぼうとするんだッ!!」

怒りを含んだ様な強い口調に思わず尻込みしそうになった。
けれど、言っている意味が良く分からない……。

「……なっ、何を言っているの?」

「奴との事はマリーが望んで決めた事だと聞いたが……、それは本当の事なのか?」

侯爵夫人からは、アレクがずっと今回の私の件を気にかけてくれていて、何か話があるようだとは仰ってはいたが、詳しい事は何一つ教えては下さらなかった。

(だが、このアレクの言い様は、まるで……)

告げられた言葉に胸の鼓動は大きく跳ねた。

何を期待しているの?
結婚まで考えた人に失恋したばかりのアレクが、私なんかの期待に応えてくれる事等有り得ないのに、期待しては駄目だと分かっているのに、胸の鼓動は如何してこんなにも更に早く脈打ち続けてしまうのだろう……。
もう頭が混乱し、何が何だか分らない!
そして思わず口から出た言葉は、自分の想いとは全く異なる、否定的とも取れる強がりの言葉だった。

「わっ、私がどう思っていようがいまいがアレクには関係ない事でしょ? それにこれは私の家の問題だわ。幼い頃からの知り合いだからって、そこまで介入される言われはないわ!」

「……言われは、無いか……」

「だって……。だってアレクには私なんかより……、ずっと気になる人が……いる筈でしょ?」

(ああ、言ってしまった……。何て未練がましいのだろうか。アレクが誰を好きになろうとそれはアレクの自由なのに……)

アレクが訝しげに眉を顰める姿に思わず視線を逸らした。

「何の事だ?」

「わっ、私、知っているんだから。貴方が求婚したと言う話を……!」

(……言った……。言ってしまった……)

この言葉を告げて、アレクがどう反応してくれるのか?
私はこの言葉に賭けていた。

「知って……、いたのか!?」

今度は驚きに満ちた眼差しだ。
ああ、やはり求婚したと言う話は本当の事だったのだ……。
既に分かっていた事とは言え本人の口から聞けば、その衝撃はかなり大きなものだった。

「私を煙たがる気持ちも理解出来るからずっと耐えて来たけれど……、ここまでされてしまったら私、如何すれば良いのよ。もうこれ以上私を翻弄させないで!!」

アレクの怒りの矛先が自分に向けられて行く事に段々耐え切れなくなりそうだった。
目線を逸らし涙目になっている私に気付いたのかアレクは少し途惑っている様だった。

「翻弄なんてさせていないだろう? むしろ翻弄させられているのは私の方だ! 二人で居る姿を目にする度にどれだけ心が痛んだ事か……」

「でも、それは私のせいでは無いでしょ。アレクの心の問題じゃない!」

「……そうだな……。私の心の問題だ」

「分かっているのなら、もう私を巻き込むのは止めて! アレクが求婚を断られた事と私は、何の関係もないんだから!」

「本当に……、そう思っているのか?」

「だって、実際にそうでしょ!?」

「……」

アレクは少し考え込んでいる様だった。
何を今更考え込む必要があるのだろうか?
そして、ゆっくりと口を開いた。

「一つ聞くがマリー、君は私が誰に求婚したと思っているんだい?」

「今更だわ。ベルマール嬢でしょう? マストラーゼ伯爵のご令嬢の……。もっぱらの噂だわ!」

「……何……だって!? ……」

肩を項垂れ大きな溜息を一つ零すと、アレクシスが頭を抱えて私を見据えた。

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