ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《26.告 白2》

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突然の私の潤んだ瞳にアレクは何を感じたのだろうか?

目を見開き、とても驚いたような眼差しを私に向けると、少し戸惑ったような表情を覗かせていた。

「まっ、マリー? あの、ごめん。驚かせるつもりは無かったんだ。けれどあの日ついに君が社交界へデビューするのだと思うと、ずっと胸に秘めていた想いをどうしても何かの形にしたくて我慢できなかった・・・・。男爵からはまだお許しも貰っていない段階だったから、敢えて名は伏せた。不躾な真似をしてしまった事は謝る。でも、どうしてもあの日の為に・・・・、マリーの大切な日の為に育てて来た薔薇の花を、受け取って貰いたかったんだ・・・・」

私の涙の意味を履き違え、突然オロオロしはじめたアレクの姿が何故か可笑しくて、思わず吹き出してしまった。
私の一喜一憂する姿に何処か戸惑っていたアレクの表情が一瞬真顔になったかと思うと、今度は何処か困惑するような眼差しで私を見つめていた。
アレクがここまで何かに翻弄される姿を見るのは、出会った頃の8年前の出来事以来だった。
当時はお母様に告げられた四葉のクローバーの事が分らず戸惑っていた。けれど今は母では無く、好きだと言ってくれた私に振り回されている彼の姿がたまらなく愉快だった。

「まっ、・・・・マリー?」

「御免なさい。違うの。ただ、嬉しくて・・・・。それに私の為にアレクが育ててくれた薔薇だったなんて、こんなに嬉しい事は無いわ」

するとアレクは深いため息と共に額に手を添えた。

「・・・・一人の者に、これだけ翻弄させられるのはマリーが初めてだ」

「アレクシス・・・・」

「あの舞踏会の会場でも、マリーを見つけた瞬間に翻弄させられた。最早私の目には他の者の姿など入っていなかった。吸い寄せられるように君の許へと近付いていた。これでやっと君へ正式に求婚ができるのだと思うと、本当に嬉しくて仕方がなかったんだ・・・・」

「・・・・ではあの時、皆が噂していたアレクの求婚相手って・・・・」

「勿論君だよ、マリエッタ。私はずっと君を忘れる事が出来ずに再び求婚し、そして断られたんだ・・・・」

神妙な眼差しを突如向けられた。

「違うわ! わたしッ」

「うん、分かったから。やっと確信が持てた。全ては仕組まれた事だったんだよね。誤解だったらしいと言う事も理解出来た。私への求婚に対するあの答えも、お父上である男爵の独断で決められた事だったんだね」

「そうよ。私はアレクが我が家へ訪ねて来てくれた事さえ知らなかったわ。もし、知っていたら絶対に断るなんて事はしなかった。いえ、させなかった。それに父が反対している事に気付いていたら、もっと早くに家を飛び出していたと思うわ。でも、そんな事とは知らなかったから・・・・、私の方こそアレクがとある令嬢に求婚したと言う話を聞いて、どれだけ心を痛めた事か・・・・。失意の中で帰宅してみれば今度はいきなり父からロナルドとの縁談話。既に勝手に話しが進められていて私に拒否権は無かったわ。一度も了承をした事は無かったけれど、所詮貴方への想いが届く事等ある訳が無いのだと思っていたから、結局は家の為に『我慢しなきゃ』って自分に言い聞かせてしまって・・・・」

アレクに今度こそ誤解して欲しくなくて必死に思いの丈を告げていると、突如ニヤリッと笑みを含んだアレクの表情にハッとした。

「・・・・あっ、アレク?」

「やっと言ってくれたね。もっと言って。叔母からの話を聞いて、多分君も私の事を思ってくれているのではないかと、期待はしていたけれど、中々告げてくれなかったから随分と気を揉んでしまったよ。ずっと君からその言葉が聞けるのを私は心待ちにしていたんだ」

「ああ、アレク・・・・」

思わずその胸に縋り付く私を、アレクはその腕に優しく抱き止めてくれた。
そして、私を食い入るように見つめると一言呟いた。

「続けて」

きっとアレクは、あの時私の身に起こった全ての事を知りたがっているに違いないのだと思う。もし、私がアレクと同じ立場だったならば、きっと好きな相手の事ならば、どんな些細な事でも何があったのかを知りたいと思うから・・・・。

「でも、やっぱりアレクの事・・・・、諦めきれなくて・・・・。ロナルドに迫られて・・・・逃げ出してきちゃったの・・・・」

「それがあの日、ここで遭遇した時か?」

「・・・・・・」

目線を少し逸らしながら、私は小さく頷いた。

「こんな事になるなら、もっと早くに逃げ出せばよかった・・・・。ずっと夢見ていたのに・・・・、もう、失くしちゃった・・・・」

私は唇を何度もドレスの袖口でゴシゴシと拭き続けた。
その態度でアレクは何か感じ取ってくれたのか?

「!!・・・・マリー・・・・」

とても苦しげな表情で見つめられた。

「初めてだったの・・・・」

「マリー、止めてッ」

何だかアレクに申し訳なくて、唇を擦る動作を止められない。
それ所か擦り過ぎて、終いには血がほんのりと滲んで来ていた。

「止めるんだ、マリー!!」

アレクは幾ら止めても止まる事の無い私の動きを、腕を掴んで制止した。

「もう、汚れちゃった・・・・、それに・・・・」

言葉を告げた瞬間、瞳からは大粒の涙が溢れ出して来た。
唇だけでは無い。ロナルドから触れられてしまったのはッ・・・・。
何処か後ろめたくてアレクの顔を正視することが出来ずに、思わず背けてしまう。
己の馬鹿さ加減につくづく嫌気がさして来て、最早彼の顔を真っ直ぐに正視する事が出来なかった。

目を逸らし俯く私の両頬に、アレクはゆっくりと手を添えた。
その手は優しく・・・・、とても暖かくて、それが更に私の心を酷く乱した。

「マリーは汚れてなんかいないッ。もっと早くに私が君に想いを告げていればこんな事にはならなかったんだ。体裁を気にして何も言えずに辛い思いをさせてしまって済まなかった。けれどもう・・・・、何があってもマリーは私が誰にも触れさせない! 私がマリーを守る。 マリーは私だけのものだ!!」

「・・・・アレッ、・・・・ん・・・・っ」

奪う様に荒々しく求められた口づけは、初めての口づけはとても比べものにならない程に私の身を震わせた。
好きな相手との・・・・、心の通い合った者との口づけがこれ程胸を熱くするものだと言う事を私は初めて知った。


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~ Comment ~

NoTitle 

・・・ま、恋愛なんて交通事故みたいなときもありますからね。
私も会って3日で恋人関係になるぐらいですから、
恋に急展開はつきものですからね。

LandM 様 

そうですね。恋に急展開はつきものですね。
一気に進むときは進みます。
二人の場合中々解決しない問題もあったりしますが、それはこれからアレクがきっと頑張ってくれると思います(笑)

いつも有り難うございます。
引き続き楽しんで頂ければ幸いです。
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