ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《28.懐 抱2》(アレク視点)

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私の提案に瞳を凝らした後、何度も瞬きする驚きに満ちた表情の何という愛らしさ。
だがその直後、少し戸惑ったような様子を見せるとそっと瞳を伏せてしまった。

「で、でも、そのような事をすれば、今度はアレクに迷惑がかかってしまうわ。もし、訴えられでもしたら・・・・」

「何があっても迷惑だなんて事は絶対に無いから。それに、まだこれは現時点で告げるべき事では無いんだが、実はマリーと奴の婚約申請書は直ぐには受理されないらしい。どちらに転んでも少々時間がかかる筈だから今後直ぐに事が動く事は無い。だから周囲が色々と騒ぎ立てているようだがその点は何も心配しなくても良いから。故に今マリーが姿を消した所で公的にはそう大きな問題にはならないと思う」

現状を掻い摘んで、出来るだけサラリとそう告げた。

「えっ!? ・・・・それは如何言う?」

「だから、それは詳しくは話せない。ただ何となく、マリーが奴との婚約を望んでいないのならば直ぐに支障はないと言う点だけは理解して飲み込んでくれればそれで良いから」

そう告げてもマリーは依然まだ戸惑っている様だった。
このような曖昧な答えではやはり納得できないのだろうか?
けれど、現時点でこれ以上の事は明かせない。

「私の言う事が信じられない?」

「あっ・・・・。決してそう言う訳では・・・・」

戸惑っている・・・・のではなく、もしかして困惑しているのか?

「マリー? 何? もしかして、まだ他に何か抱えている問題でもあるのか?」

一瞬驚いた表情を見せていたが、その後とても不安そうに瞳を伏せると、呟くような声が聞こえて来た。

「・・・・実は・・・・、そうなの。・・・・それだけではないの・・・・」

「何? 話して。マリーの事なら何だって受け入れる準備は出来ているから」

マリーを安心させるように優しく囁いた。

「・・・・あっ・・・・、あのね・・・・、これは先程聞いたばかりの話なのだけれど・・・・」

もじもじと、まだ何か言う事を躊躇っていると言った正にそんな風だった。

「うん。良いよ。マリーに関わる事なら何だって知っておきたいから」

「・・・・どうやらロナルドの話だと、お父様・・・・、随分とお金に困っていた様なの。既に婚姻の為の支度金としてお金を受け取っているらしいの。だから私ッ」

「・・・・何だって!? で、額は?」

全く寝耳に水の話だった。

「半額で50万リーベ・・・・。私、お金の事なんて全然知らなくて・・・・。私的財産を売ってもそんなお金にはとてもならないだろうし、こんな状況でアレクの所へ行ってしまえば今度は貴方に迷惑がかかってしまうと思うの・・・・。父が催促されるなら未だしも、もしアレクの所に話しが行く事になってしまったら・・・・」

「・・・・まさか、既に金が動いているとは思わなかったが・・・・、そうか・・・・。でも、それ位ならば何の問題も無いよ。我が家の資産はそれ位で揺るぐことは全くないから。金ならば50万リーベだろうと、例え婚約を認める正式な書類が届いた後で不履行を訴えられて高額請求をされる事になろうとも、それは私が用意できる額だから心配する事は何もない」

「・・・・アレク・・・・」

「けれど、とは言えそれは少し解せないな。以前色々調べてどうやら金策に困っていると言う報告が上がって来たから、実は少し失礼と思ったが私も以前融資を申し出た事があるんだ。だが、男爵は一向に話しにのって来なかった」

やはり、男爵とロナルドの関係はマリーとの結婚話のそれだけでは無かったと言う事か・・・・。
 
「えっ!?」

「それに私の調べでは、ロナルドは本来かなり金には五月蠅い人物らしい。その奴がまだ正式な書類も届いていない現段階で支度金と称しても50万リーベと言う大金を男爵に支払っていると言うのも驚きだな。動いた金の額も婚約に際する支度金としてはかなり破格な額だし、奴の執着の程が良く分かるな」

「そんなになの!? 私、相場なんて全然知らないから、高額だとは思っていたけれど・・・・」

「あれで半額ならば相場の3倍にはなるんじゃないかな」

「さっ・・・・3倍!?」

聞いた途端、マリエッタはその場で腰を抜かしかけてしまった。

「大丈夫か!?」

慌ててその身を支えた。

「どうしよう・・・・アレクッ、私・・・・怖い・・・・」

マリーの身体はこの時、小さく震えていた。

「大丈夫だ。私を信じて。何があっても私がマリーを守って見せるから!」

「アレク・・・・」

マリエッタを抱きしめる腕に更なる力を込めた。
彼女には言わなかったが、この相場の3倍を超える金が動こうとしている事にやはりどう考えても不信感は否めない。
やはりこれはただ事では無いのではないかと言う思いが更に心を霞めた。

「家に来るね? 来ると言ってくれ!」

私の胸に顔を埋めて震えながらもこの腕を握って離さず、小さく頷く彼女が愛しくて仕方なかった。
そのまま彼女を抱き上げると、私は叔母に手配を頼んでおいた馬車の待つ通用門へ続く裏道を急ぎ突っ切った。
中には既に従者リレントが待機しており、腕の中の彼女の姿を見るなり彼は『ようございました』と満面の微笑みを浮かべながらそう告げてくれた。

急ぎ乗り込むと、馬車は一目散に我が侯爵邸に向けて走り出した。

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NoTitle 

貴族に金はつきものですかね。
まあ、それ以外でも勤しんでいくのが貴族の務めであろう。
・・・というのがまあ、思いつくことですが。
豊かだからこそしなければならないことも多くありますからね。
貴族は。

LandM 様 

まあ、本来貴族とはそういうものですよね。
けれど今回の事はアレクにとって人生の岐路。そんな事は言ってはいられません。
アレク自身は侯爵だからと言って浪費癖がある訳でも無くどちらかと言うと慎ましく過ごしている方だと思います。
将来の事も考えて蓄えもある方なので、お金はそこから捻出するようです。

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