ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《29.追 憶1》

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馬車は郊外にあるグラッセ侯爵家の屋敷の大門前を通り過ぎると細い脇道へと入って行った。奥には更に細い小道が続き、馬車が通るのがやっとの道幅だった。
だが、やがてその行く手には周囲を花々に囲まれた可愛いお邸が建っていた。
そこで馬車が止まると、アレクが私の手を携えた。

「ここは?」

「亡くなった母が趣味の為に造らせたのもので、少し・・・・、いやかなり少女趣味の手狭な別邸で申し訳ないんだが、私も時折息抜きにやって来ている場所だから一応管理もしっかりされているし住む事も可能だから・・・・」

「お母様の・・・・」

「すまない。本来ならば本邸に連れて行くべきなんだろうけれど、もし全ての事が片付く前に変な輩に乗り込んで来られても不味いから・・・・。ここなら一応我が屋敷の敷地内だから表からだと遠く感じるけど裏の抜け道を使えば本邸とはそうでも無いんだ。今ではもう古くから勤めている一部の人間しか知らない場所だから、そう屋敷の者が出入りする事も無いし、暫くはここで我慢してくれると嬉しい」

アレクは少し遠慮がちにそう呟いた。

「そんな! 我慢だなんてとんでもないわ。とても素敵。お母様、良いご趣味をなさっていたのね。でも、私なんかが大切なお母様の想い出の詰まったお私邸をお借りしても良いのかしら?」

「何だよ、それ・・・・」

「えっと・・・・、アレク・・・・シス?」

何やら急にアレクの表情がいきなり険しくなって戸惑った。

「私なんかって何だよ! マリーだからここに居て欲しいんじゃないか。大切な人だからこそ、この場所を共有したいんじゃないか! 母もきっと喜んでくれる。そう思うから・・・・。それに母は子供の頃いつも君と会った話をすると、とっても嬉しそうだったんだ。『私も会ってみたいわ』っていつも言ってくれていた。ここに来るといつも母の温もりを感じるんだ。私は母の魂は今もここの何処かに眠っているのではないかと時折思うんだ。だから、その・・・・。ここにマリーを連れて来たのは、母に紹介したいと言う意味合いも実はあるんだッ」

「アレクシス・・・・、有難う。喜んでお借りするわ」

思わず熱弁してしまった事が恥ずかしかったのか、アレクは少し伏し目がちに目を泳がせながら、私を導きお邸の扉の取っ手を回した。

「さぁ、マリエッタ入って。気に入ってくれたのなら遠慮なんかしないで」

亡くなったお母様の趣味のお邸は、中流階級の一般家庭程の広さの本当に小さなお邸だった。アレクは手狭だと言っていたけれど、私がお世話になるには十分すぎる広さを持っていた。
中へ入るとほんのりと甘酸っぱいポプリの香りが部屋中に満ちていて何処か懐かしさを覚えた。

「この香り・・・・、昔のアレクの匂いだわ」

「昔の私の? ああ、そうか。あの頃は良くここに入り浸っていたから。母は晩年この部屋で寝起きをしていたから・・・・」

「そうだったの」

中に入って見渡せば、そこには懐かしいものが飾られてあった。

「アレク・・・・これ・・・・」

「うん、あの時マリーが一緒に見つけてくれた四葉のクローバーだ。2枚とも母と一緒に押し花にして額に入れたんだ。母がいつまでも想い出が残せるし、願いも込められるからって」

「私も。私はお守だけど・・・・」

懐の中からガーゼに包んでいつも持ち歩いている、台紙に押し当てて保存している四葉のクローバーを取りだした。
アレクはかなり驚いた表情をしていた。

「最初にマリエッタに会った時、初めて出会った気がしなかったんだ。もしかして、妹が生きてくれていたらこんな娘だったのかなとか当時は漠然と考えたりもしていたけれど、でもその内そんな事はすっかり忘れてしまって、ただ二人で打ち解けて楽しく過ごしていたと思う」

「妹さんが・・・・いたの!?」

「・・・・うん。随分予定より早くに生まれてしまってね。生まれて数時間しか生きられなかったけど・・・・」

「そうだったの・・・・」

何だか不味い事を聞いてしまった気がした。俯き、口を閉ざしていると、アレクがフッと微笑んだ。

「何?」

「いや、そう言う所。昔のままだなって」

「昔の・・・・まま?」

「ほら、あの頃も私の立場になって色々と親身になって心配したり、考え事もしてくれたよね。親族や家の者以外で私の事をこれ程親身になって考えてくれる人は他にはかったからとても嬉しかったんだ。でも、それがいつの間に傍に居るのが当たり前で、会えなくなってしばらくして初めてその存在の大きさに気付いた。当時は何故気になるのか分らなかったけれど、今思えばこう言う何気ないマリエッタの純粋な人を気遣う心や共感できる感覚とか、それもきっとあったんだな」

「何だか自分では良く分からないのだけれど・・・・」

何やら感慨深げに昔の事を懐かしむアレクシスの言葉が少しこそばゆかった。

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~ Comment ~

NoTitle 

おひさです~。

誤解は解けたようだけど話がややこしくなるのはまたこれから、という気もします。ロナルドが黙って指をくわえて見ているだけとは思えません。

宮廷ものはそこが面白いんですけどね(^^) 期待してます(^^)

ポール・ブリッツ様 

お久しぶりです。

はい。その通りでございます(笑)
誤解は解けましたがね、やはりこう言う裏の事とか私は書きたい人なので少しずつ暴かれて行きますよ^^

ご期待頂けている内容になれるように頑張ります♪

いつもコメント有り難うございます。
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