ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《30.追 憶2》

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それから暫くアレクと昔話に花が咲いた。
そして会えなくなってからの話も―――。

「母が亡くなった時、今となっては母の願いが何だったのかは計り知る事ができないけれど、少なくともあの時の私の願いは叶わなかった。結局私は母を救うことが出来なかったと当時は落ち込んだ。でも喪失感の中で、こんな時マリーなら何と声を掛けてくれるだろうかとも思った・・・・」

「アレクシス・・・・、まさか自分を責めているの?」

「いや、今は違う。分かっている。あの時は子供じみた願い事に縋りもしたけれど、今はそこまで子供じゃない。当時の医術では手の施しようが無かった事も理解出来る・・・・。でも、後悔はしているかな」

「聞いても良い? お母様は、何のご病気で?」

「心の臓が少しね・・・・。後で聞いた話によると私を妊娠中にも少し息苦しいと言う症状があったらしい。でも、妊娠による通常あるものだと思い込みそれが特別な病だとは思っていなかったらしい。私は普通に無事産まれて来る事が出来たしね。でも次の子を妊娠して成長して行く過程で、初めての発作が起きた。正式な病名が明らかになり、身の危険は免れないだろうと言う話になって、父は最初堕胎を勧めたのだそうだ。けれど私は認めなかった。私も母から妹か弟が生まれると言う話を聞いたばかりで酷い事を言う父を責めた。母の病の事は聞かされていなかったしね。結果、私は妹を失い、そして母の命も縮めてしまった・・・・」

「そんな言い方は良くないわ。知らなかったんだもの、それは仕方のない無いでしょ?」

「仕方が無いか・・・・。でも、あの時、私があんなにも生まれて来る妹の誕生を無邪気に喜ばなければ、母は考えを改めてくれていたかもしれないと思う事はある・・・・」

「そんなっ・・・・。私だってアレクと同じ立場だったらきっと同じことを言っていたと思うわ。弟妹が生まれると思えば喜ぶのは当たり前だもの。それに、それでもお父様は反対されていたのでしょう? だったら、それでもお母様が生むと決めたのならばそれはお母様の責任よ」

「母の責任か・・・・。成る程。やっぱり凄いやマリーは。誰も今までそんな事は言わなかった」

「言わなかったんじゃないわ。きっと言えなかったんだと思う。悲しみが大きすぎて・・・・」

「・・・・そう言えば、父が母に声を荒げる姿をあの時初めて見た気がする。本当に凄い剣幕で猛反対していた。溺愛していたからね。母の居ない人生はきっと考えられなかったのだと思う。でも結局は母の気持ちを汲んでおそらく父は納得した。だがその事が母の死の引き金になってしまったと思うと認めてしまった自分がおそらく許せなかったんだ。その後、父は私の事は全て家の者に任せ顧みる事もしなくなり、休日も取らずにがむしゃらに働いた。結果、身体を壊し倒れ母の死から2年後に後を追う事になった。けれど、もしかすると父はあれで幸せだったのかもしれないな・・・・。そう思えて来た・・・・」

「アレクシス・・・・」

「当時は父の事を酷いと思ったよ。けれどね、今は違う。分かるんだ、父の気持ちが痛いほどにね・・・・。もし、君に何かあったら・・・・。想像するのも怖い位だ・・・・」

「想像しなくて良いわ。私心臓は、かなり丈夫な方だから」

「そうか・・・・」

アレクを安心させたくて、そっとその胸に顔を埋めた。

「本当は、父が亡くなってから暫くは恨んでいたんだ。私は父に縋りたかったのに父は私を拒んでいたからね。母方の親戚や家の者は良くしてくれたけど母を失くしてから私は何処かずっと孤独だった。だが父の死後、ある日残された日記から父の私への深い愛情を知ったんだ。私はね、母が死んでから眠るだけにしか帰って来ない父は、私の事を嫌っているのだとずっと思っていたんだ。けれど日記にね『母に面差しの良く似たあの子を見るのが辛い。あの子から責められるのが辛い』そう書かれてあったんだ。父は父で母の死を自分のせいだと思っていたんだ」

「・・・・誰のせいでもないのに・・・・」

その日記を読んだ時のアレクを想像するだけで、胸が張り裂けそうだった。

「そうだね。そして母も父も亡くし何も無くなった私に残されたのは、この屋敷と領地と侯爵の家名と言う大きな重責だった。責務ばかりが重くて憤りしか感じていなかったある日、この母の懐かしい部屋へ久方ぶりに足を運んだんだ。すると、ここには母との想い出だけでは無くマリーとの想い出もたくさん詰まっていて・・・・。君はどうしているだろうか? そう思った時、私の夢は大きく膨らんでいった。だから君には本当に感謝しているんだ、マリー」

「そんな・・・・。感謝だなんて・・・・私は何も・・・・」

「君と言う人間がこの世に存在してくれている。そう思えるだけで、全てを失くした私にとっては救いだったんだ。だから死に物狂いで勉強もした。いつか君を迎えに行く時に恥ずかしくない自分である為にね・・・・」

「自分がそんなに大それた人間だとは思えないけれど・・・・、とても嬉しい言葉だわ。私もアレクに何時か会えたらいいなと思っていたし・・・・。まさか求婚して貰えるとは思っていなかったけれど」

「まだ、色々と直ぐには前に進められないけれど、必ずマリーが公の場でも私と認められる様にしてみせるから」

「うん。信じてる・・・・」

「マリー、必ず君を幸せにしてみせるから」

アレクは私の手を取ると左手の薬指にそっと口づけた。

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