ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《31.回 視1》(アレク視点)

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マリエッタとドワイヤル伯爵家の子息ロナルドの婚約目前の噂を耳にするようになって、私は傷心を胸に24歳の若さで警務騎士団統帥長にこの度就任したばかりの友人パウウェルに、彼の身辺を含む素行調査を私的に依頼した。
国防尚書を父に持ちサンドール公爵の長子と言う彼は、今では若くして城でも一目置かれる存在の一人だ。
だが仕事中に私的に調べ物は流石に出来ない為、非番や時間外を利用して少しずつ奴の素の表情を探ってくれていた。
調べ始めて数日後、ロナルドが昨年まで隣国に滞在しており、その滞在先の国で有力者の一人とされる鉱石王と称される者と、帰国後も頻繁に交流がある事が分かった。
現在も毎月数度隣国ステガルドへ定期的に出国しているらしい。
その鉱石王とロナルドの間にどの様な関係があるのか?

ステガルドと我が国は昔から互いの国で産出量の多い複数の鉱石の取引が頻繁に行われている間柄だ。
我が国からの輸出の最たるは工業的に使用される鉄鉱石が支流だが、同時に宝石となり得る鉱石の取引も幾つか行われている。
ロナルドのステガルドでの調査を開始して更に数日が過ぎた頃、鉱石王との関係について深く調べを進めていると、どうやら我が国から輸出される鉱石の中に、ある一部の地域で採れるものの中から現在まだ取引の認められていない天然石として希少価値の高いアクアローズと言う宝石の原石が含まれている事が今回の調べで明らかになった。
この事実に知らせを受けた仲間からは、一瞬緊迫した空気が流れたのだと言う。

アクアローズは我が国特有の希少価値の高い宝石で、原石はおろか加工品ですら他国への商品としての輸出はまだ行っていない。この国へ訪れた者だけが購入理由を明確にし、所在を明らかにした上で初めて手にする事の出来る国宝石なのだ。
隣国ステガルドの鉱石王はあらゆる鉱石の流通に関わり、宝石類の加工も一手に手掛けていると言う。
その鉱石王と関わりのある者が帰国するなり半年余りで今回の調べで明らかになった、ある一部の地域と称される鉱山を領地に持つマニエール男爵家の一人娘マリエッタとの婚約話にまでこぎ着けると言うのは何処か出来過ぎていないだろうか?

私の抱いた疑問は勿論パウウェルも直ぐに感じた様で、国ですら知り得なかった事実をロナルドが知っていたのか否か。更には領主となるマニエール男爵がその件に何処まで関わっていたのかと言う事だった。
今回発掘の為の資金となり得る金を男爵に婚約の支度金として手渡し、その先に話を進めようとしている事に違法性は無いのか等あらゆる事を視野に入れ、今その先についても引き続き調査をしてくれていると言う。
元々の依頼は、現在渦中の存在となっているロナルドが本当にマリエッタを幸せにしてくれる者なのかどうかの私的調査だけの筈が、今やその依頼内容を通り越し、とある事件性を含む事に発展しようとは、おそらく誰一人として思っていなかっただろう。
一個人の些細な依頼内容が、今や国をも巻き込む大事件に成り得る可能性を秘める事になろうとは、当初私ですら想像し得ない事だった。


私がマリエッタと初めて口論となり、打ちひしがれながらも叔母に尻を叩かれわずかな期待を抱き再びマリエッタに声をかけたあの日、父親であるマニエール男爵との間に割って入った友人が私の耳元でこう囁いた。

『奴はとんでもないぞ。今回正式に警務騎士団が関わる事になった。良かったな』

あの時告げられた言葉が、私にどれだけの救いをもたらしたか分かって貰えるだろうか。

正式に警務騎士団が乗り出すと決定したと言う事は、おそらく何らかの事件性のある容疑が既にロナルドに掛けられた事を意味する。
となれば、現在申請されていると言うマリエッタとの婚約申請書の書類は正式にある機関で一時預かりとなり、容疑が固まればその場で直ちに申請自体が取り消される。
自分にとってはとても喜ばしい事ではあるが、だがマリエッタにとってみれば相手は仮にも自分が結婚まで視野に入れ考えた人物だ。彼女の気持ちを考えれば素直には喜べない。
それでも、正式に婚約が調う前に事が分かって良かったのだと。その方がマリエッタの傷が癒えるのも、きっと早いだろうと私は己に言い聞かせた。


マリエッタと別れてから、本格的に警務騎士団の調査が入った事により更に次から次へと明るみになって行くロナルドの隠された一面。
本当にこの男に、自暴自棄になり何もしないままマリエッタを委ねようとしなくて良かったと、心の底からそう思った。


その数日後、叔母からも珍しく書状が届いた。


『壮健で居て? アレクシス。
今事情がありマニエール男爵夫人とお嬢様を我が邸で預かっているの。3日後に行われる王宮舞踏会、貴方は出席しないと言っていたけれど、マリエッタ嬢は行けば貴方に会えると思っている様子よ。如何するの? 当然の事だけれど多分舞踏会にはマニエール男爵も例の婚約予定の者も来ると思うわ。貴方が手を拱いて何もするつもりが無いのであれば、出席する必要は無いと思うけれど、後で色々言われるのも嫌だから一応知らせてはおくわ』


叔母からの少し挑発的な文章に乗せられるのは面白くないと思いつつも、マリエッタが私に会いたがっていると言う文面と、あのロナルドがマリエッタと再び接触するかもしれないと思うと、最早じっと等して居られる筈も無い!

「本当は、今はこちらも手いっぱいで舞踏会になど顔を出している余裕等無いのだけれどな・・・・」

溜息をつき、そう呟きながらも既に行く事は決めていた。と同時に、私は叔母からの書状をその場で握り潰していた。


舞踏会当日、本来仕事は非番だ。
けれど、事大きな事件が起こると休日など無く働くのが警務騎士団だ。
今回私の依頼が無ければ表ざたにならず、今日の休日をゆっくり楽しんでいる筈のパウウェルを始めとする警務騎士団の者達の少でも助けになりたくて、私は休日返上で警務騎士団事務室に居座り、集められた資料を纏める手伝いをしていた。
それでも集められた莫大な資料は中々片付かずないまま、舞踏会開始の時刻は刻一刻と迫っていた。気遣い早く上がれと言ってくれる友人に感謝をし、私は予定の時刻より少し遅れたが警務騎士団事務室を後にした。

マリエッタは遅れた事を怒っていないだろうか?
少しだけその事を心配しつつ、待ち合わせの場所に目を向ければ、直ぐ側にあまのいまいましいロナルドの姿を発見した!

私は全速力で彼女の背後から近づくと、その腕を掴んでその場から急ぎ立ち去った。

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