ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《35.雷 鳴》(アレク視点)

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空には稲光、雷雨を伴う豪快な雨だと言うのに不思議とそのような事は全く気にならなかった。
唯々慣れないこの場所で、マリーが一人で如何しているのか?
それだけが心配でならなかった。

必死に馬を走らせ、やっと別邸が見えては来たが明かりが灯っている様子は何処にも無く、静まり返った様子に一瞬息を飲んだ。
愛馬を急き立て一分、一秒でも早くと尻を鞭で叩いた。
到着し、邸の外観にある屋根伝いの柵にそのまま馬を繋ぎ止めると、慌てて扉の鍵を上着の内側から取り出し差し込んだ。

「クソッ!!」

こういう時に限って鍵は中々開いてはくれない。

「マリー!? 居るのか? 居たら返事をしてくれ!!」

扉を叩きながら叫ぶが一向に返事が無い。
『無事でいてくれ!』と懸命に祈りながら、やっと何とか鍵を回すことが出来、急ぎ扉を開け放った途端、稲妻が駆け抜けたかと思うと、ほぼ同時に天をも引き裂くかのような地鳴り交じりのバキバキバキッと言う雷鳴が響き渡った。近くに落ちたに違いない。
それはまるで子供の頃に見たあの光景を彷彿させるものであったが、全く恐怖は感じなかった。
それよりも、唯々マリーの事が心配でならなかった。

「キャ―――ッ!! いやぁ―――ッ!!」

泣き叫ぶマリーの悲鳴が響き渡った。

「マリーッ!!」

良かった。とりあえずは無事でいてくれた。
扉をこじ開けた様子も無かったし、別邸の周辺に物々しい様子も無かった事から恐らくは大丈夫であろうと思ってはいたものの、声を聞くまでは安心できなかった。

「ぃやぁ・・・・・・、ぅっく、アレク・・・・・・アレクぅ・・・・・・ひっく・・・・・・」

咽び泣く声が聞こえているのは母が私室としてずっと使っていたあの部屋の辺りか?
其処は今、マリーの寝室として提供している場所だった。

雨に濡れたコートを玄関先に引っ掛けて急ぎ部屋へと向かった。

「マリーッ!!」

扉を開け放ち駆け寄ると、マリーの顔は涙に濡れてもうぐちゃぐちゃだった。

「ひっく・・・・・・ぁ、アレ・・・・・・クぅ・・・・・・」

マリーは寝台の上で掛布を頭から被せたまま、ブルブルと震えながらしゃくり上げて泣いていた。

(ああ、やっぱりマリーは雷が苦手だったんだ・・・・・・)

今まで気付いてやれなかった事を後悔した。

「マリー、もう大丈夫だから。ずっと傍に居るから・・・・・・」

そう告げ寝台の上に腰を下ろすと、掛布の上からマリーの身体を抱え込む様にそっと抱きしめた。
すると、掛布の脇から顔をそっと覗かせて、潤んだ瞳で私を見上げた。

「ぁっ、アレク・・・・・・、わたし・・・・・・、わたしぃ・・・・・・、うっく・・・・・・」

「一人にさせて済まなかった。もう大丈夫だから」

「わぁーん、アレクッ、アレクぅ、怖かったの・・・・・・、ひっく・・・・・・、ひとりで・・・・・・、とっても怖かったのぉ・・・・・・」

「分かったから。これからは私がずっと傍に居るから。ねっ、さあ顔を見せて」

背中を擦りながらそう告げた。

こんなにも一人で心細い思いをさせて本当に済まなかったと、自分の配慮が足りなかった事を酷く後悔した。

「ぅ・・・・・・、ひっく・・・・・」

「ああ、こんなに泣いて・・・・・・、せっかくの美人が台無しだ」

あまりに可愛すぎで、苦笑いしながらそう答えると、とんでもない言葉が返ってきた。

「そ・・・・・・っ、ひっく・・・・・・、そんなに・・・・・・ひどい? も、もう・・・・・・きらいに・・・・・・なった? うっ、うっく・・・・・・」

「はぁ?・・・・・・。何を馬鹿な事を・・・・・・」

深いため息をつき、脱力した。
雷鳴の恐怖に慄いて悲観的になっているのか何なのかは知らないが、その雷鳴を物ともせずに走り抜けて来た私に言う言葉がそれだと思うと信じられない思いだった・・・・・・。

「ん・・・・・・っ!!」

それ以上マリーからの酷い言葉を聞きたく無くて、顎に手を掛けるとその唇を自らの唇で有無を言わせぬ様に塞いだ。

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~ Comment ~

NoTitle 

まだ駆け出しのブログに何度か寄っていただいてありがとうございます。
とても優しい独特の雰囲気ある文章で癒されますね。
これからも遊びに来ていただけると嬉しいです。
ちょくちょくお邪魔して読ませていただきます。

NoTitle 

・・・。
・・・・ここまでくると二人で逃亡した方が早い方が。
と思うのですが。
まあ、それはそれで責任放棄ですかね。

ようやく出張から帰ってきました。
またよろしくお願いします。

(*^-^*)

藍澤響平様 

初めまして。
以前着信履歴でサイトを知り、王道・ファンタジー、と言う言葉に心惹かれ時々お邪魔させて頂いておりました。

>とても優しい独特の雰囲気ある文章で癒されますね。
いやぁ、お恥ずかしいです。でも、そのように言って頂けてとても光栄です^^
こちらこそ時々寄らせて頂きますね。
これからも宜しくお願い致します。
コメント有り難うございました。

LandM様 

今日は。
ふっふっふっ、二人で逃亡ですか?それはちょっと不味いでしょう。
確かに手っ取り早いですし、私も楽でいいですが(笑)
とりあえず色々な意味で責任と言うのもありますし、そこは頑張って解決して頂いて、二人にはハッピーエンドになって貰いたいと思っております。

出張お疲れ様でした。こちらこそ宜しくお願い致します。
21日から活動再開ですね。楽しみにしてます^^/
いつもコメント有り難うございます。
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