ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《36.翻 弄》(アレク視点)

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如何考えれば今の私からその様な言葉が導き出されるのか教えてほしかった。

「んっ……あっ……、アレク……ぅんっ」

「私が……何だって?」

「えっと……あの……」

唇を離した途端、真っ赤になりながら口ごもる姿がまた可愛すぎる。

「その反対、滅茶苦茶可愛いと今思っているんだけど、如何してくれる?」

クスリッと笑いそう答えると、口をパクパクさせながら思いっきり胸板を叩かれた。

「あっ、あ、あ、アレクの馬鹿ッ」

「あっははっ、はい、はい。でも良かった。涙止まったみたいで」

「えっ!?」

「ねっ」

「ホントだわ!」

あれだけ泣いていたかと思えば、時折雷鳴に驚きビクリッと身体を震わせながらも笑顔が見え隠れしている。
自分が来た事で、少しだけ心に余裕が出来たのかもしれないと思うと何処か安堵した。
少し前には泣き叫んでどうしようもなかったのに、女の子とは本当に不思議な生き物だと思っていると馬車の近付く音がして、暫くするとカチャリっと扉が開いた。

「ああ、リレントが来たみたいだ。これだけ泣いたらお腹も空いただろう? 夕食にしよう」

「はいっ」

綻ぶような笑顔を見せる彼女の肩を抱き寄せ寝台を降りると食堂へ向かった。


傍まで来るとほんのりと香るコーンスープの香しい匂い。
保温したポットの中からリレントがスープを皿に注いでいる所だった。
既にテーブルの上には屋敷から用意されて来た夕食用のサンドイッチとフライドチキンが並んでいた。

「遅くなって申し訳ございませんでした旦那様。一応執事とも話しまして、他の家の者には旦那様は突如領地の有効活用にと考えておられた促成栽培についての立案を思い立たれ、その作業の為に別所にて籠られると言う事にして参りましたのでご安心を」

「流石だな。助かる」

「いえ、当然の事でございますから」

深々と頭を下げると『では湯の用意をして参ります』とリレントは下がっていった。
流石何事にも抜かりがない。
本当に彼は有能な従者だ。


その後二人で軽い夕食を取りながら話していると、マリーが突然話題を変えて来た。

「ねえ、アレク。ヨハンナさんは?」

「ああ、御免。まだ話してなかったな。ヨハンナは、今日は戻って来ない」

「えっ!?」

目を真ん丸にし、瞳を何度も瞬かせ小首を傾げる姿がまた愛らしく思わず頬が緩む。

「実は本邸へ向かう途中、雷鳴に慄いた馬が暴走したらしくてね。少し怪我をしてしまったんだ。大事を取って今日は本邸でゆっくり休ませることにした」

「まあ大変! それで、ヨハンナさんの具合は? 大丈夫なの?」

「ああ、幸い大事はない。軽傷と捻挫程度だ。最初マリーを一人には出来ないからと戻ると言い張っていたよ。責任感の強い人だからな。けれど説得した。それに私が行くのに無理をさせる必要も無いだろう?」

「ごめんなさい。私がこんなだからアレクに無理をさせてしまって……。アレクだって本当は雷が苦手なのに……」

「えっ!?」

「ヨハンナさんに聞いたの。子供の頃のトラウマがあるって話……」

ああ、また余計な事を!!

「はぁ……。信じ……られない……」

「えっ、何? ……アレク?」

「いや、何でも無い」

何故言うかなぁ。普通言わないだろう? 主の想い人に欠点ともなり得るトラウマの話なんて……。
絶対にマリーにだけは、知られたくなかった事だったのに……。

頭を抱えていると従者リレントが戻って来て彼も苦笑いを零していた。

「大丈夫ですよ、お嬢様。既に主には克服された事ですから」

「そうなの?」

またまた驚いた表情でこちらを振り返るマリーに『勿論だ』と告げると、リレントは少し笑いをこらえている様だった。
でも、克服したのは事実だ。例えそれがほんの少し前の出来事だとしても。
私は咳払いを一つしてリレントを見つめた。

「失礼致しました。では、旦那様。湯のお仕度も整い、暖炉の件も問題なく片付きましたので私は、本日はこれにて失礼させて頂きます」

「ああ、ご苦労だった」

一礼して下がって行く従者を見送っていると、マリーがまたまた小首を傾げて何やら考え事をしている様だった。

「何だ? 如何した?」

「いえ、ヨハンナさんの代わりに誰か侍女でも来るのかと思っていたから……」

「私が居るのに、それはもう必要ないだろう? 後は湯にゆっくり浸かって疲れを取って寝るだけだし、明日の朝にはまたリレントが来てくれるし、ヨハンナの性格から言ってもおそらくじっとしていられないだろから明日には這ってでも戻って来ると思うぞ」

「ええっ!!」

屋敷に二人きりだと言う事実にか、はたまたヨハンナの取るであろう行動に驚いたのか? 目を思いっ切り見開き、急にオロオロし始めるマリエッタの姿が、また一掃可愛く見えて仕方がなかった。

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