ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《40.微 睡》

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――― 夢を見ていた。
小さなアレクと二人でクローバー畑を駆ける夢。
けれどその距離は、どれだけ追いかけても全然縮まらなくて、やがて私は疲れ果て息も絶え絶えにその場で座り込んでしまった。

(ああ、もう追いつけない……)

とにかく喉がカラカラで、水が欲しくて仕方がなかった。
すると何かがそっと唇に触れて、少しだけ喉の渇きを癒してくれた。

(私に触れているのは一体何?)

不思議な事に何も見えないのだけれど、何度も何度も私を包み込む様に唇に何かが触れては離れて行く。
お蔭で、やがて私の呼吸は段々楽になって来たけれど、その正体が何なのか全く掴めずにいた。
考えあぐねていると、今度は何処からが微かに声が聞こえて来た。

『……リー、マリー』

(……何? 何かが私を呼んでいる?)

『マリー、 マリー、返事をして。マリー?』

(……誰?)

『マリー……。頼むから、目を開けて……』

懇願するような男の人の声。
確かに何処かで聞いた事があるような気がする。
でも、一体何処で?

『マリー……』

切なげに告げられたその声に、胸の奥から何かが溢れて来る。

(この声は……)

心が揺さぶられた。
けれど早く気づいてあげなければと、気持ちが焦れば焦るほど上手く行かなかった。
唇に何かが触れる度に、そこから流れ込んで来る柔らかな水。
やがて、離れて行く瞬間、何かが鼻腔を擽った。

(あっ……。微かに漂う、このシトラスの香りは……)。

微かな匂いに、研ぎ澄まされていた頭の中で何かが反応した。

(何? ああ、これは彼の……!)

そう認識した瞬間、急に靄のかかっていた頭の中が鮮明になって来て、閉じていた瞳がパチリッと開いた。

「ああ、良かったマリー。ずっと意識を取り戻さないから随分と心配したんだ……」

告げるなり潤んだ瞳で行き成り抱き寄せられて、一瞬何が起こったのか理解出来なかった。

「……アレク……。私、如何したの? とっても変な夢を見て……」

追い駆けても、追い駆けてもアレクに追いつかないとても切ない夢。
けれどあれはやはり夢でしかないのだと心配そうに私を見つめる眼差しが、そう告げていてホッとした。

「脈も正常に戻ったし、意識の反応もあったから多分大丈夫だと思ってはいたけれど、目を開けてくれるまで気が気じゃ無かった……」

「アレク……」

あの夢は一体何だったのだろう?
アレクはずっと傍に居てくれたのに、今二人が置かれている状況が、もしかしたら自分の中の何処かで不安な気持ちを作り出し、見せたものなのかもしれない。

「もう、御免だからな……。こんなに心配させられるのはッ」

少し潤んだ瞳が不思議だった。

「……アレク?」

「……まさか、覚えていないのか?」

「何が?」

「何だ。ならば、あの時私も一緒……に……」

「えっ? 一緒に……、何?」

「ぁっ、いや、何でも無い……」

何かを言いかけて、モゴモゴと口ごもるものだから、アレクの言っている意味が掴めない。
アレクは何を言いたいのだろうか?

「……ぇっと、何だ。あー、湯場で倒れた事、覚えていないの? 」

「えっ!?」

告げられた言葉に一瞬呆然として、記憶の糸を手繰り寄せ必死に考えあぐねた結果、導き出された答えに慌てて飛び起きた。
が、飛び起きた途端自分がバスローブを羽織っただけで寝台に横になっていた事に気付き、思わず咄嗟に悲鳴をあげてしまった。

「きっ、キャァァ―――っ!! キャー、キャー、キャーッ!!! アレクの馬鹿ッ!!」

訳が分らず、涙目になりながら必死で前を合せた。

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NoTitle 

コマンド?

>にげる
 ふくをさがす
 はなす
 ひとをよぶ
 あきらめる
 おしたおす


……ワクワク(笑)

NoTitle 

ここ数話から読み始めたのですが、
なかなか良い雰囲気で素敵ですね。
ちょっと体力が戻ったら、
最初から拝読したいと思います。

NoTitle 

最後がぶち壊しにしたのか。。。
というのも意味深いですね。
まあ、それでも一生懸命思うことが大切だと教えてくれます。

ポール・ブリッツ様 

ぶっ、ぶっぶっぶっぶっ(爆)

二つ正解です♪
それが何かは辿り着くまで、再び妄想をどうぞお楽しみください(笑)

いつもコメント有り難うございます^^

Sha-La(なにわのねこ)様 

有り難うございます^^
まだ色々ありますが、やっと両想いになれた二人です。
これから少しずつ盛り上がって行くので、温かく見守って頂ければと思います。
少し長くなって来ているので、体調を見て無理なく読み進めて言って下さいね。

コメント有り難うございます^^

LandM様 

正直者が馬鹿を見る?
いえいえ、ここでへ垂れたらおしまいなので、きっと頑張ってくれている事でしょう(笑)

そうそう一生懸命が大切なんです。頑張れアレク!

いつもコメント有り難うございます^^
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