ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《42.心 情2》

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過日のロナルドとの事を思い出すと、実は未だに恐怖を感じる。
今でも身体が震え出す。とても怖くてたまらない。
そんな私が彼からの、このような提案事態を本来受け入れるべきでは無かったのかもしれない。
けれど、どうしてもアレクと離れたくなかったのだ。
こういう状況を示唆しなかった訳では無い。どんなに怖くても、もし触れられるのならばアレクが良いと思えてしまうのだから仕方が無いと思う。直ぐには無理かもしれないけれど……。
そんな思いを抱いたままここへやって来て何日が過ぎただろうか?
あの日から毎日顔を出してくれているアレクは、私とは毎日軽い口づけは交しても、ここに来てから今まで一度も故意に身体に触れて来ようとはしなかった。
きっと私の気持ちを察してくれていたのだと思う。
けれど、ずっとこのままではいられないだろう事は自ずと理解していた。

もし、アレクに触れられたら、自分は如何思ってしまうのか?
あの恐怖をまた思い出してしまうのか?
そうなればアレクを傷つけるのではないのか?

色々な想いが交差していて、ずっととても不安でいっぱいだったのだけれど、思いがけず不意に触れられたアレクの唇に全く恐怖は感じなかった。
ただ、恥ずかしくて戸惑ってしまったけれど、それだけだった。
それはきっと相手がアレクだったから……。
彼で無ければきっとその様な感情は持てなかったと思う。
だから、何があっても彼の想いを受け入れようと心に決めて身体も今日は急いではいてもいつも以上に丹念に洗ったつもりだった。
だが突如気付いてしまった現実に、アレクから如何思われてしまうのか?
その事だけが急に怖くなってしまったのだ。

自分の心は既に決まっているのにアレクから如何思われるのかと考えると、とても直ぐには湯場から出る勇気が持てなくなってしまった。
けれど突き付けられた現実は、ずっとその場に留まっておく訳には行かない状況だった。
結局思い直して、香油を手に取り湯船の傍まで行き数滴たらしてはみたものの、深いため息しか出て来なかった。
湯を何度かかきまわしながら、とりあえず浸からなければと思い、湯船に身体を沈めてはみたものの、色々これから起こるかもしれない出来事を想うと全く冷静でいられなかった。

(どうする? 如何するべきなの?)

悶々とひたすらその事だけを考えていると、今度は中々湯からも上がれなくなってしまって、気付いたらこう言う事になっていたのだ。

でも、もう……、きっと見られてしまった……。
だったらもう、とっくに失望されたのかもしれない……。

だからアレクは今この状況にあって事情の説明はしてくれたけれど、何処か表情も硬いままで、もしかしたらもう……、私に触れようとも思えなくなってしまったのかもしれない。
気付いてしまった現実に、不安で押しつぶされそうになり如何にかしたいと思った瞬間、咄嗟に言葉を口にしていた。

「……みすぼらしいと思ったのでしょう? けれど、それでも私は……」

「はぁ? ……」

惚けて見せてくれたのはきっと彼の優しさだと思う……。
けれどこれからおそらく向けられるであろう視線が怖くて、とても目が合わせられない……。
瞳の奥からじわりと温かいものが溢れて来るのを感じ、泣いては駄目だと自分に言い聞かせながら奥歯を噛みしめじっと耐えていた……。
けれどアレクからは何の言葉も無く、それはやはり自分の想像が正しかったのだと言う結論に至った。

「……私、普通の令嬢の様にもっと色々女性らしい体型になれる努力とか、真剣になってしておけばよかった……。まさかアレクとこんな事になれるなんて思ってもいなかったから、どう見られてもそれが自分だって簡単に考えていて……。所詮貴族の結婚なんて親が決めるものだから体型の事なんて今まで気にも留めた事も無かったの……」

「マリー?」

「なのに思いがけず、アレクの心が傍にある事に気付けて……。そしたら、その事でアレクを失望させている事が急に怖くなってしまって……。この事でアレクを失ってしまったら、私……っ」

言葉を紡いでいる内に、何だかとても自分がみじめに思えて来て、ハラハラと涙が溢れ出して来た。
ここで泣いては駄目だと……。アレクを責めるべきでは無いのに、そんなことをしてしまうのは卑怯だとさえ思っているのに、溢れ出した感情はもう止まらなかった……。

「何を言っているんだ!? はぁ……」

呆れたような言葉と共に深いため息が聞こえて来て、やはり彼を失望させてしまったのだと気付かされた。とても惨めだった。

「もし私が……、もっと豊満で女性らしい体型だったら、アレク……失望なんてしなッ! ……んっ!!」

言葉を紡いだ次の瞬間、不意に抱き寄せられ唇が塞がれた。 

「……もう、無理だッ」

「えっ?」

唇を離し、私を胸に掻き抱いているアレクの腕は少し小刻みに震えているように見えた。その姿は何処か苦し気で、最早私は如何して良いのかさえ分らず戸惑ってしまった。

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NoTitle 

アレク、行動に出た!?

でも、いきなり、「「……みすぼらしいと思ったのでしょう? 」なんて言われたら、
「はぁ?」ってなりますよね(笑)

Sha-La 様 

今日は。
何やら微妙な状況に気付いて頂けたようで良かったです(笑)

アレクにしてみれば正しくまさかのマリーの言葉です。
さぁアレクは如何畳掛けるのか?
引き続き楽しんで頂ければ幸いです。

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