突然、超SS劇場

突然、超SS劇場 ~その4~ 不毛な王太子(前編)/『記憶の彼方とその果てに-番外編-』後日談より

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ナチュリア国王太子セイラルは生まれたばかりの息子ラルフグレードには只ならぬ想いを抱いている。
アーリアの淡いグリーンの瞳に、自身と同じ抜け落ちた様に薄い色した柔らかそうな金髪の我が子は、正に二人の愛の結晶と呼ぶにふさわしい存在で、当初可愛くて仕方がないと思っていた。
アーリアのたっての願いで日中は夫婦の私室に預けられ、乳も乳母に頼らずにいる事も二つ返事で了承した。少しでも息子と共に居る時間が多く持てるのならば幸いな事と思っていたのだが、自身が部屋へ戻る頃にはアーリアの身体を休める為にと乳母に預けてしまう事が多い為、蓋を開けてみれば自身に利点はあまり感じられなかったのだが、それでもアーリアの満足げな姿を見、日々その日の様子を伝え聞けば、それはそれで良かったとさえ思えていた。
限られた時間の中でしか日々会うことがままならない自分には、乳母より伝え聞く息子の話よりも妃であるアーリアからの言葉の方が断然聞いていて楽しくはあるし……。だが、はっきり言って休日意外息子と中々ゆっくりと会う事も叶わず、かなり淋しいのも事実だった。
だから日々時間が少しでもできれば公務の間を縫って部屋へ戻り何度も様子を伺いに訪れていた。
会えたとしても眠っている事の多い新生児期は、中々目の覚めている我が子を目にする事も出来ないので、帰宅が早い時などはつい構いたくなり、見つめているとつい……、すやすやと眠る可愛らしい頬をつついて起こしてしまい、良くアーリアや乳母にも叱られる程だった。
そんな事を日々繰り返しながら気が付けば生後3か月。
子供の成長はもどかしくもあるが振り返ってみれば早い気もする。
近頃では起きている時間も多くなり、段々表情も豊かになって来て、以前よりも関われることも多くなって来た。
最近では私の姿を見るなり微笑むようになって来て、更にその愛くるしさは何と表現していいかわからない位だ。
正に天使と言うのは我が子の為にある言葉ではないかと思ってしまう程だ。
授乳の時間も少しずつ下がって来て、帰宅時間に重なる事も最近では多くなって来た。
少し前まで乳母から連れて行かれている時などに、いつも芽生えていた淋しいと言う感情が日々薄らいできているせいなのだろうか?
最近では少しだけ変わって来て、息子に対する違う感情が芽生えてきていた。

息子ラルフグレードにとってアーリアの乳は成長の源だ。
その事を十分に理解しているつもりなのだが、最近では悩ましい事に少しアーリアを取られた気にもなってしまうのだ。
それでも母乳をあげる事を持続し認めているのはアーリアの強い希望と、母乳には栄養価も高く病気のリスクも抑えられる成分が多く含まれていると聞いたからだ。
やっと巡り合えた我が子だ。少しでも元気にすくすく成長して貰いたいと思うのが親心と言うもので、それは理解出来るしもちろん自分もそう思っている。
だから今でも折れているのだが。
折れていたのだったが……、やっと侍医より夜の生活の許可が下り、待ちに待った久方ぶりのこの時、寝台に沈めたアーリアから告げられた一言で、いやがおうにも内に秘めていた感情がふつふつ顔を出しはじめ、ついにこの日、変貌を遂げてしまったのだった。

「いたッ! そこは駄目なの……。ラルフから噛み付かれちゃって……」

「えっ!?」

「実は昨日授乳の時……噛まれちゃって」

「かっ、噛まれた?!」

一瞬何を言われているのか、理解出来なかった。
噛むとはどう言う事なのか?
ラルフグレードはまだ生後3か月だ。

「何だかラルフ、成長が早いみたいで、もう歯が出てきちゃって……」

「歯が? もうか?! 流石は我が子だな。成長が著しい事は何においても我が喜びだ。では、もう離乳食も用意させた方が良いのか?」

「それは駄目らしいの。聞いた所によると稀に生まれて直ぐに歯が生えている報告もあるのだそうよ。だから異例と言う訳では無いのだけれど、そう言う離乳的食事は月例にのっとって行うものだそうだから……」

「そうなのか……。それは残念だな。早く一緒に食事が出来るようになると食卓も賑やかになるのにな」

「そうね。でもそれはもう3月程待って頂いて、今はとりあえず傷口からばい菌が入ってしまうと悪いから暫くは授乳も禁止なの。そう言う訳だから、そこはセイラルも我慢してね?」

「ッがま……。」

突然告げられた我が子の早き成長。
親として息子の成長はどんなに些細な出来事でも何においても嬉しい事に違いないと思っていた。
思っていたのだが……、まさか自分がこのような事で、これ程翻弄される事になろうとは夢にも思っていなかった……。

アーリアは胸を責められると、とても良い声で鳴く。
少し恥じらいながら、頬を染め、潤んだ瞳で見つめられ……。
その姿がやっと見られると思い、実は今宵はとても楽しみにしていたと言うのに!
口惜しさに、思わずッ。
……いやいやいや、ここは冷静にならなければ。大人げない。
乳は赤子にとって本来命を繋ぐ大切な食料である訳だし、目的は噛むものでは決して無いのだから、まさかこのような事態に陥る事になろうとは思っていなかったから正に不意打ち的状況となり、今は頭が少し混乱しているのだ。
だから冷静になろうと思っていたのに……。

「ぁん、ラルッ。そこも……。張って痛むの。触らないでッ!」

周辺も駄目なのか?!
衝撃的その言葉は、自身の中でもかなり大きく膨らんでいき……。
だから、つい……、魔が射したと言うか……、言ってしまったのだ。

「……ラルフは何故私のリアを傷つけるんだ?」

「えっ? せっ、セイラル??」

「……せっかく私が、これ程までに我慢してやっているのに……。ラルフは何故私の想いを分かってくれないんだッ」

「そんな、大げさだわ」

アーリアの全ては私のものだ!
例え息子とは言え譲れない感情があるのだと言う事に、私はこの時初めて気づかされた。

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後編UPについて。

「ずっと心に決めていた」完結後、若しくはストック切れの時に次回は投下を考えております。
少しお待たせ致しますが、ご理解くださいませ。
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~ Comment ~

NoTitle 

記念SS、お疲れ様です。

とりあえず、ラル、落ち着け。
アーリアが「大丈夫かしら?また始まったわ」とか思ってるぞ(笑)

ふふふ、前世の頃からアーリアにとってはもちろん、セイラルにとっても待ち望んでいたラルフ君、その子がすくすくと育つのを見ていくのは嬉しいことは間違いないはずなのですが、意外な落とし穴もあったようですね。

アーリアが子供を産んでからも独占欲は収まってませんねえ、息子にすら嫉妬するとは。
番外編でも思いましたが、結ばれた分、今までの反動か彼の溺愛ぶりが凄いです、前世で結ばれなかった分、もっともっと愛し続けて、独占し続けていきたいんでしょうね。

ラルフ君から見れば、前世でラルが命を落とした後、この子がリアを励まして、そして長い時を越えてやっと生まれたんだから、彼も母に甘えたいはずなんですよね。少しは母をゆずれってことでしょうか(笑)

改めて、3周年、おめでとうございます。
これの後編を始めとして、また続きを楽しみにしています。

yama様 

今日は。

初っ端から鋭い読み有り難うございます(笑)
そうなんですよ。もうラルははっきり言って板挟み状態なのですが、今の所アーリアへの愛情の方が少しだけ?勝っている模様です(笑)
これが、生まれたのが女の子であれば話は全然別物なのでしょうが……、それでもアーリアへの独占欲は続くでしょうね。
勿論ラルフの事は目の中に入れても痛くない程可愛いと思ってますし愛していますが、アーリアは特別枠なんでしょうね。おそらくあの溺愛ぶりが収まる事はないでしょう。(アーリア頑張れ(笑))

有り難うございます。これからも3周年に向けて頑張りますね♪
後編ではアーリアがそれに対しどんな態度になるか想像に難くないでしょうが、他の作品共々今後もお楽しみ頂ければ幸いです。

いつもコメント有り難うございます。

 

「どっちが赤ん坊かわかりゃしねえ」(「紅蓮の街」ガス・談)

ポール・ブリッツ様 

今日は。

本当ですねぇ。私もそう思います(笑)
後編で、彼の溺愛ぶりにアーリアはどう反応するのか?
ご期待ください(笑)

いつもコメント有り難うございます。

NoTitle 

織田信長は生まれたときから歯があったという都市伝説もありますが。。。という話ですね。
何にしても子どもが成長すると、養育するのが楽しみ・・・という心になっているのはいいことですね。
今日は更新されてないみたいだったので、こちらへ寄りました。

お忙しいようで頑張ってくださいませ。
(*^-^*)

LandM様 

今日は。

そうそう生まれた時に歯のある方っているそうですね。
実は生後3か月で歯が生えた話は実話だったりします^^;
うちの息子がそうで、当時こんな小さい子に口内炎が出来たのかと思い、担当の保健師さんに電話で問い合わせたら歯だといわれました。で、その後健診で見て貰いました。その時に報告では聞いた事はあるが実際にこの月齢で見たのは初めてと言われ、3か月も稀と言われました(笑)

中々忙しくて、本日早朝UPしました。
良かったら覗いてやってください。
いつもコメント有り難うございます。
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