ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《64.試 練》

 ←突然、超SS劇場 ~その4~ 不毛な王太子(前編)/『記憶の彼方とその果てに-番外編-』後日談より →ずっと心に決めていた《65.窮 地》
私の心臓は、大きく脈打っていた。手を添えたのに中々取っ手を回す事が出来ない。
中に居る貴婦人や令嬢等に、どの様に言葉で話しかけられるのか不安で今にも押しつぶされそうだ。
たかが扉を開けると言う行為に、これだけ自分が恐怖を感じる日が来ようとは夢にも思っていなかったけれど、一歩前へと踏み出さなくては何も始まらないのだと自分に言い聞かせ、勇気を振り絞って扉を引こうとした正にその時、押されるように扉が開かれ慌てて取っ手を手離した。

「!!」

「まぁ! 誰かと思えばお噂の方じゃない」

「……テ、テロネーゼ……さん……」

何と間の悪い……。
彼女はロナルドの妹にして、アレクシスの取り巻きの最たる人物で、私はロナルドとの話が出てアレクと疎遠になってしまったあの時期まで、かなり今一緒に居る彼女たちと共にやっかみから意地悪をされていた。
ロナルドとの話が決まってからは、表面上は何事も無くやり過ごせるようにはなっていたけれど、彼女は今自分が最も会いたくないと思っていた人物の一人だった。

「皆様、覚えていらして?こちらが近頃流行病で臥せっていたと言う例の下の兄の婚約者様ですわ。御機嫌ようマリエッタさん。お元気になられたのね、良かったわ」

「まあ、ご病気でしたの? 私、てっきり雲隠れなさっているのかと」

「何処ぞの殿方と消えていなくなったと言う噂もございましたが、その真相は如何なのかしら?」

「あら皆様。我が兄の婚約者に失礼ではありませんの。けれど、もし、貴女が我が兄を愚弄したのだと致しましたら私は、決・し・て・許しません事よ!」

こちらに向けられた鋭い眼差しに、思わず一歩後退してしまった……。

「いっ、いえ、私は別にロナルドとは、正式に婚約していた訳では……」

「あら、今更何を言っているの? 既に支度金を受け取っておいてそのような事がまかり通るとでもお思いなの? それこそは随分な話だわねぇ」

「それは私の預かり知らぬ事だわ! 父が勝手にッ」

「まぁ、それは酷い話ですわ! あれだけ兄に連れられて夜会へも多く顔を出しておきながら、今更その様な事がまかり通るとでもお思いなの?」

「それはッ!」

「ねぇ、これってもしかして、新手の詐欺ではありませんの?」

「詐欺ですって!? まあ、恐ろしい……」

「ああ、お可哀想なお兄様……」

自分等で勝手に話しを作って完結してしまっている……。 
でもこの様子だと、きっと彼女は粗方話を知っているのだと思う。
母から受け取った手紙では表向きは流行病で臥せっていると言う事にしている様だが、かなり色々な噂が蔓延っていると聞いている。
中には若い男に抱きかかえられ逃げたと言う話もあるらしく、きっとあの時誰かにアレクと逃げる後姿でも見られたのかもしれなかった。
テロネーゼはと言えば、挙句の果てに『よよよっ』とわざとらしく泣き崩れるように膝をつきいている。
呆気に取られて眺めていると……

「傍に居るのに手を差し伸べもしないなんて、何て冷たい方なの?」

等と周囲の令嬢等から罵られ、溜息をつきながら、しぶしぶ手を差し伸べた。
すると途端に何処か彼女の瞳が怪しく光っているような殺気を感じ、咄嗟に捉えていた腕を離そうとした正にその時、指輪を嵌めていた腕を鷲掴みにされた。

「あら? この指輪は如何なさったの?」

アレクシスから送られたアクアローズの指輪を凝視していた。

「いえ、あのこれは、きちんとお話ししなければならない事なのですけれど、私はッ……キャッ!」

咄嗟に指輪が指から引き抜かれてしまった!!

「かっ、返して!! お金は何としてもお返しする様に致します。ですから、この指輪だけはッ」

指輪を奪い返そうと必死に藻掻くが、テロネーゼの取り巻きに押さえられ取り返す事がままならないッ。

(如何しよう……)

「やっぱり他に男がいたのね。落ちぶれ貴族の小娘の分際で生意気なのよ! 元々気にくわなかったけど、我が伯爵家も舐められたものね。どうせ金目のものに目が眩んでの事なんでしょ。あー嫌だ嫌だ、貧乏貴族の小娘はこれだから嫌なのよ!自分が恥ずかしくないの!?」

「そんな事!! お金なんて関係ないわ。私は心から彼を愛しているからッ!」

「愛!? ハッ、笑わせないでよ! この貴族社会の一員ならば親の言う事に従いなさいよッ。それにお前如きの地位の者が、愛だのと語る事事態生意気なのよ! 今ここでその馬鹿な相手が誰なのか、暴いてやるわ!」 

指輪を透かしながら内側の紋章を覗き見ている姿に更に慌てた。きっと相手が誰か分かってしまえば、大変な事になりそうな予感がしたから……。

「ッ! お願い……、返してッ! その指輪だけは……、お願いッ!!」

必死に手を伸ばそうとするが全然届かない。

「何!? これ……。この紋章……まさか……」

「お願いっ!!」

「……許せない……ッ。あの方のお相手がお前だなんて、私は絶対に認めない!!」

指輪を拳の中に握り締めながらテロネーゼの表情は、今までの意地悪な小姑の様な表情から、憎しみを帯びた怒りに満ちた表情に変わって行った。

そう告げるなり、テロネーゼはテラスに向かって走り出し、立ち止まると外に向かって何か光るものをその手から放り投げた!

「うそ……、そんなッ……」

崩れるようにその場で倒れ込む私は、やっとテロネーゼの取り巻きに解放されたが、もう何も考えられないし一歩も動けない……。

「良い気味!参りましょう皆様。夜会に遅れては大変ですわ」

テロネーゼと取り巻きが去って行く中で、私は何も言えずにその姿を見送る事しか出来なかった。

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~ Comment ~

NoTitle 

更新、お疲れ様です。

男の視点から見るとこういうクソ女の態度はやっぱり腹が立ちますねえ。
この売国奴妹のクソ女は態度を見ると本気でアレクが好きみたいですが、これが正々堂々と戦う女だったらアレクも振り向く可能性があるのに自分は安全な所で媚を売り他人を蹴落とす女はやっぱり同じ男から見てもたとえ美人でも金があっても身分が高くてもごめんです。男はこういう女にひっかからないよう注意しないといけませんね。

まあ、こういうヘイトは売国奴がどん底に落ちる時に読者をすかっとさせる映写を見せていただけるとすっきりしますので、それは涼音様がこういう女の断罪をちゃんと書けるかどうかに期待します。
記憶の彼方にでもアーリアを傷つけた令嬢の目に見える形での断罪がなかったのは気になったのでヘイトはやっぱり解消してくれた方が読者としてはすっきりします。

しかし、アレクから貰った指輪を投げ捨てられたマリー、自信の源をいきなりなくし気落ちしているところですが、逆にいえばここが正念場。
ここで落ち込んだままだと以前と変わらないぞ。
これで彼女自身が、泥まみれでも指輪を探して見つけたら今度こそクソ女は何も言えなくなるでしょうから、それくらいの気持ちでがんばれっ!

yama様 

今日は。

クソ女ついに登場しました(笑)
3話でロナルドがマリーに「何だ。・・・・君も彼の信者だったの?」
と言う言葉がありましたが、実はそれはここに繋がっていました。
彼女はかなり表裏のある性格設定です。(ロナルドに似てます)
嫌われキャラなのでそう言って頂けて良かったです。

前回は長すぎてカットしまいましたが、今回の彼女は一応今の所ギャフンと言わせる予定です。(そうしないと次の場面で話が弱くなってしまう設定なので^^;)

指輪の件はこれから少しばかり翻弄されて色々ありますが、次の事件解決にも繋がる一歩となる予定なので、何か色々と今語れないのでもやもやなんですが、私的には二人には互いを信じて頑張って貰いたいと思っています。

いつもコメント有り難うございます。

NoTitle 

うわ……。
マリーを待ち受けていたのはこんな試練だったんですね…。
言葉の暴力だけでも相当傷ついたでしょうに、
よりによってあの大切な指輪まで……。
まさに、「何も考えられない」頭が真っ白の状態かと思います。
でも、指輪はなくとも、アレクの愛は変わらないから…
どうか立ち直って欲しいです。

Sha-La様 

今日は。

はい。マリーを待ち受けていた試練はこう言う事だったんですよ^^;
何かマリーには過酷な事が続くんですが、頑張って乗り越えて貰って……。
やはり、今までの風習的な状況を覆そうと、(それも婚約間近の状況で逃げ出した状況の彼女なので)それなりの試練はあってしかりと思うんですよね。
なので頑張って貰いたいですね。これからも。アレクを信じて!(ここ、重要(笑))

いつもコメント有り難うございます。

NoTitle 

まあ、この程度の試練で済むのならあまり問題はなさそうですが。。。と思う次第ですが。
私はどちらかというとテロネーゼの気持ちの方が分かるかな。。。浮気相手がいるのかよ!!って私でも驚く。本気で愛しているって余計に性質が悪い。。。

LandM様 

今日は。

この程度の試練でで済むのかどうかはこれからを見て頂くとして(笑)
テロネーゼはかなり思い込みの激しい人ですからね^^;アレクもかなり今まで迷惑していました。
まあ、彼女あのロナルドの妹ですからね、一癖も二癖もあります。

>本気で愛しているって余計に性質が悪い。。。
確かに・・・・。で反撃、頑張って貰いましょう(笑)

いつもコメント有り難うございます。
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