ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《65.窮 地》

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誰が知らせてくれたのか?
控の間の扉の前で、崩れ座り込んでいる私を抱きしめてくれたのは母だった。

「おか……さま……っ」

「マリエッタ……」

「私……、わたし……っ! ぅわぁーーんっ!!」

母に縋り付き、声をあげて泣きに泣いた。
母はこちらに視線を向けながら通り過ぎて行く貴婦人等に目もくれる事無く、人目もはばからずに咽び泣く私を唯々抱しめ、優しく背中を何度も擦ってくれていた。

「大丈夫だから、マリエッタ。何も心配する事ないから……」

母はそう言って慰めてくれたけれど、テラスから投げられたあんな小さなモノが早々見つかるとはとても思えなかった。
それに、母が事情を知っているのかも皆無だった。

「さあ、マリエッタ。人目もあるし、とにかくずっとここに居る訳にはいかないわ。何処かゆっくり出来る場所へ移動しましょう? それから話を聞かせて。ねっ?」

母にそう告げられて、小さくコクリと頷いた。
支えられながらとにかく立ち上がると、私はある静かな場所を母に指定した。


母と向かった先はアレクと待ち合わせをした場所。
時間にはまだかなり早いが、ここならば人も滅多に来ないし、ゆっくり落ち着いて話が出来ると思った。
それにアレクとの……、二人の想い出の場所でもあるし、正面の噴水から流れ出る水音が何処か心を落ち着かせてくれそうな気がした。

「さあマリエッタ、顔を見せて。そして何があったのか、お母様に全て話して」

優しく尋ねられ母の顔を見ると、思わずまた涙が零れそうになってしまう。
けれどそれをグッと堪えて、今おこってしまった全ての辛い出来事を、私は母に包み隠さず口にした。

「……何ですって!? そのような酷い話は聞いた事が無いわ。例え兄の為から来る正義感だったとしても、酷すぎるわね。あのテロネーゼがその様な娘だったなんて……」

母から見れば、おそらく信じられない出来事だろう。
何も知らない母のテロネーゼに対する印象は、今まで好意的なものの様だったから……。
彼女の第一印象は、決まって好印象らしい。見た目には天真爛漫で元気な娘と言うとても明るい印象だ。人見知りもせずに誰とでも話すし、とても気さくで話し易く、初めて会った者は先ず好印象を持つだろう。私自身もそうだった。
初めての舞踏会で何も知らずに戸惑っていた時、最初に話しかけてくれたのはテロネーゼだった。
お蔭で何処か緊張が解れて来たのも事実で、最初は私もとても感謝していた。その印象があったからか、アレクから声を掛けられて以降の彼女の反応が、あまりのあからさまで信じられなかった。
本当の彼女はとても自分に自信のある人で、何事においても自分が先頭に立たなければ気が済まない性格のようだ。
最初から、あからさまにその素顔は覗かせないが、ターゲットに定めたものに対する執着はかなり固執しているようで、マリエッタがアレクシスからデビュティ後に話しかけられた前からと後では態度があまりにもあからさまに違いすぎて、最初はかなり戸惑ってしまった程だった。
それ以降に彼女がアレクの取り巻きの中でも最たる人物であるのだと言う事を聞く事になり、以降完全に無視を決め込まれていると思いきや、人目のある所では急に親しげな態度を取られたり、かと思えば周囲の目の無い所ではネチネチとアレクとの関係を根掘り葉掘り聞かれたりして、陰湿極まりない態度を取られるようになって行った。
何なのだと思っていれば、母と一緒に居る時等はあちらからあからさまに声を掛けて来る事もあり、更にはロナルドとの婚約話が浮上しアレクとの関係が疎遠になって行ってからは、更に態度が一変した。
今度は急に親しげな態度を取るようになって来たのだ。
初めて『お姉さまと呼ばせて下さい』等と言われた時には背筋が凍る思いだった。
今振り返ってみれば、全てはアレクの事が好きだったからなのだ。

「私……、探さないと……」

まだ薬指に残る指輪の跡を触りながら、グッと奥歯を噛みしめた。

「えっ!?」

「見つけないと……。こんな所には居られないわ。私……、アレクシスには会えない……。合わす顔が無い……」

「何馬鹿な事を言っているの? きちんと事情を話せばきっとグラッセ侯爵も分かって下さるわよ」

「そんな事……ッ」

アレクなら……。もしかしたら許してくれるかもしれない……。
けれど、私は大切な指輪を守れなかった自分自身がどうしても許せなかった。

「……とにかく、探さないと……。このままになんて出来ない! だってあれはアレクが私にくれた、たった一つの証だもの!!」

「マリエッタ……」

「ごめんなさい、お母様。お母様はここに居て、アレクには適当に何か……、具合が悪くなったとか何でも良いから、私はここに来れなくなったと伝えて。出来れば事情は話さないで欲しいの。心配をかけたくないから……」

「何を言っているの? そんなの無茶だわ。冷静になりなさい!」

「無茶でも何でも、今はこれしかないのよ!」

とにかく指輪を探さなければアレクとの未来は有り得ない!
私は頬に伝った涙のあとを拭い取ると気合を入れ直し、座っていた椅子から立ち上がり母の腕を振り切った。

「マリエッタ、待ちなさい!!」

「とにかく後は頼んだわよ、お母様! アレクには上手く言っておいてね」

母に振り返り念を押し、前を向いて足を進めようとしたその時だった。
目の前に急に大きな壁が立ちはだかった。

「えっ!?」

……嫌な予感がし、おそるおそる目の前にある壁を見上げてギョッとした。

「あっ……」

「『アレクには上手く言っておいてね』って何だ!?」

そこには、険しい表情をしたアレクシスが仁王立ちしていた。

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~ Comment ~

NoTitle 

更新、お疲れ様です。

指輪を失ったことで冷静さを失ったマリーの必死さが痛々しいほどに伝わります。さっきまでの自信が嘘のようです。
だからこそマリーの指輪をとても大事にしてたことがよくわかります。
以前の私自身もクソ女に憤ってましたが冷静になってみると、
この時のマリーの頑固さが悪い意味ですれ違っている時のマリーと同じに見えてちょっとまずいなと思いました。
よく考えてみると指輪はあくまで証。
あの指輪にマリーを喜ばせたのは指輪そのものじゃなくてそれを送ってくれたアレクの気持ちがあったから。自分で考え行動することは大事ですが、それを忘れて今ここで無謀なことをするのはアレクも望んでいないはずです。

アレクにちゃんと正直に話したうえで、マリー自身が今取り戻したいのかどうか話し合うことが今一番するべきことのはず。

今目の前にいるアレクへのお互いの愛情は変わらないはずですからそれを信じて、向き合うんだ、マリー。

NoTitle 

証しか・・・あまり頓着がないですからね。
証しなんてまた買えばいいのです、ってそれは現代っ子の考えか。。。
しかし、「失くしました~~」なんて言ったら怒られるかな。
どのみち。

 

間の悪い男だアレクくん……。

というか怒る相手が違う。宰相になろうかともいう人間がそんな単純直情径行でどうする。

この一連の流れがロナルドの変装作戦だったら、それはそれでかいしんのいちげきでしょうが……。

どうなるか続きが楽しみ。

yama様 

今日は。

本当に、嬉しくて嬉しくて。だからマリーの痛手は相当のものだと思います。

そうなんですよ。意味合い的には深い所もありますが、あくまでよく指輪は単なる証でしかないんです。
その事に気付いて下さってきっとアレクも共感している事でしょう(笑)
マリーも気を強く持ってしっかりしないといけませんね(苦笑)
指輪は取り戻すにしろ如何するにしろ、ある意味これが実は一つのキーだったりします。
まだ詳しくは現段階では話せませんが、今後の展開を温かく見守って頂ければ幸いです。

いつもコメント有り難うございます。

LandM様 

今日は。

>証しなんてまた買えばいいのです、ってそれは現代っ子の考えか。。。

これについて次話で話がありますが、本当に愛している人相手だと、こういう場合どうなるかって事なんですよ。
相手は家よりも何よりも大切な人なんですから、如何なるのかな~アレクは?と言うのが次回の答えです(笑)

いつもコメント有り難うございます。

ポール・ブリッツ様 

今日は。

本当に間の悪い……。
でアレクは何に対して怒っているのか?は次回分かります。
ただ、アレクの為にフォローしておくと、ただ嘘ついて居なくなろうとしたことにアレクは怒っている訳ではありません(笑)

>この一連の流れがロナルドの変装作戦だったら、それはそれでかいしんのいちげきでしょうが……。

えっとぉ……。のっ、ノーコメントで^^;
でも、全くって事は……無いかなぁ(苦笑)

いつもコメント有り難うございます。

NoTitle 

こんにちは。
あの大切な指輪を放り投げられたとすると
無茶でも探したくなりますよね。
あの指輪に込められている意味を考えると…。

そして、タイミングが良いのか悪いのかアレクの登場。
指輪は象徴であって、アレクのマリーへの愛は変わらないということを
マリーには分かってもらいたいところです。

と言っても、自分が同じ立場だったら、
気の狂ったように指輪を探すと思います(笑)

Sha-La様 

今日は。

マリー的には大切な指輪です。投げられたと思っていれば必死になって探さずにはいられない心境なのだと思います。

アレクのタイミングはホントに良かったのか悪かったのか^^;
例えアレクが来た時にマリーが居なかったとしても、おそらく彼はそれを見透したと思います。で、探して連れ戻す。どのみち結果は同じだったかな(笑)
そうですね。マリーは今テンパっているので、物事を冷静に考えられませんがもう少し冷静になって気付いて貰いたいですね(苦笑)

いつもコメント有り難うございます。
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