ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《67.追 及2》

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怒らせてしまった……。
けれどあの指輪の事を『形だけの物』だなんて、私にはどうしても思えない。
何よりあの指輪はアレクにとっても母の形見である以前に、グラッセ家を継承する者にとっても、軽んじる事の出来ない指輪な筈だ。

グラッセ家は建国当初からある名家で、王家とも近しい関係にあり侯爵位を賜った家柄だ。何代か前には降嫁した王女も輿入れしたと言う噂もあり、その噂が本当ならば王家とは血族であると言う事になる。
アレク自身とは二人の会話の中でその事に触れる事も無かったが、それが事実か如何かなんて私にとっては如何でも良い事だった。
けれどアレクがこの指輪を送ってくれた事により、その話も見過ごせなくなってしまった。ヨハンナさんから正式に近い将来を見据えてグラッセ家の歴史について学ぶ気は無いかと問われたのはアレクが城に泊まり込む様になって間もなくの事だった。
私としては既に心が決まっていた事も有り、二つ返事でその事を了承した。
それにより過日より色々とグラッセ家の起源からの歴史についてをヨハンナさんより教えを受けて行く中で、先日アレクから送られた指輪の経緯を聞く事となった。
私は指輪の出所を聞いた時、一瞬自分は今とんでもない物を手にしていると言う事を知り怖くなり、思わず指輪を仕舞おうとしてしまった程だった。
実はアレクから送られたあの指輪は唯の世継ぎの指輪として登録されているだけでなく、その噂にあった降嫁した王女様が父王より嫁入りの際に持たされたもので、その後当時のグラッセ侯爵が正式に世継ぎの指輪として承認登録を申請されて以来ずっとグラッセ家に受け継がれて来た物だと言うのだ。今から4代前に遡ると言う。
品としても確かに今まで目にした事も無い程立派なものだったが、歴史的価値としてもおそらく値段の付けられるような代物では無い事に気付いた。
だからヨハンナさんに諫められ、何とかずっと身にはつけていたものの最初の頃は嬉しいと思いつつも少し恐々だった。
だからそれだけの品を私は失くしてしまったと言うのに『形だけの物』と軽く言ってのけたアレクの神経が信じられなかったのだ。それなのに……。
アレクのこの反応をどう捉えて良いのか分らない。
私としては、経緯は如何あれ指輪を無くしてしまって、とてもそのままにしておける筈も無く、探しに行く事も許されないのであれば謝る事しか出来なかったし、何を言われても弁解の余地は無いと思っていた。だから謝るしか無かったのだけれど……。

「ごめんなさいッ。えっと……、でも指輪を失くしてしまった事以外は、これと言って怪我をさせられた訳では無いし、私の身に起きているのはその事実だけで……」

あの時起こった出来事を、戸惑ってしまいアレクにどう伝えて良いのかさえ分らない……。
それに今は話し始めれば、またやっと引っ込んだ涙が溢れてきそうで、アレクの優しさに甘えてしまいそうで怖くて告げられない。
最早これ以上如何話せばいいのか分らず途方に暮れていると、更に呆れ返っているようなアレクシスの眼差しが感じられて、とてもそれが鋭くて痛く感じられた。
身から出た錆とは言え、探しに行く事も許されそうにない状況で、きちんと話も出来ないままで居る事は今の私にとってもかなりキツイものだった。
アレクとの間を如何保てばいいのか戸惑ってしまい、横目でチラリと母に救いの目を向けた途端、突如頭の上から大きな溜息が吐き出される音が聞こえてきて、思わず身を硬くした。

「はぁーっ……。マリーは何も分かっちゃいない……。私の事を見くびらないでほしい。だいたいマリーはさぁ……」

いきなり何だかとっても砕けた感じで言葉を紡ぎ出され、これをどう捉えたら良いか更に分らなくなってしまう。
けれど、何となく……、私が思っている程アレクは怒っていないのかもしれないと思えて来た……。

「えっと……、分かってないって言われても……。ぁえっ!? 」

小首を傾げてアレクを見つめ上げていたら、いきなり今度は抱きしめられた。

「ああ、駄目だ……。これ以上マリーに小言なんて言いたくない。マリーをもっと感じたい。限界だッ」

「ええっ?」

「言葉を託せる状況で無かったから、代わりに指輪だけでもと思っただけだったのに……」

「えっと??」

「マリーをこんなに悩ませる事になるのならば、もっと何か別の物にすれば良かったな……。けれどあの時はアレ以外思いつかなくて……」

まさかのアレクの発言に、呆気に取られた……。
何処まで破天荒な考え方なのだろうか?
何処か脱力している自分に気付いた。その時――。

「マリー、貴女の負けね」

思いがけない母の介入に、二人して咄嗟に視線の矛先を移動した。

「お母様!」
「御母君?」

「マリエッタはともかくとして、侯爵はすっかり私の事なんて眼中になかったようですし、もうやってられないわ。とにかくマリエッタは物に囚われすぎね。侯爵は侯爵で今のマリエッタにはアレぐらいが良い薬だと思って見ていれば、結局は絆されちゃうし、こんな事では何れマリーは付け上がってしまって我儘な娘にならないかと私は心配だわ」

二人して如何いう訳か母からの説教じみた話を聞く事になってしまい、何となく気まずい雲行きになって来て、如何したものかと思っていたら、それを打破してくれる人物が現れて互いに目を合わせてホッとした。

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~ Comment ~

NoTitle 

更新お疲れ様です。

グラッセ家の指輪、確かにその指輪の経緯を辿ると、それこそただの物扱いじゃすまされなさそうなものですね。
とはいえ、それを簡単に投げ捨てたクソ女は、取り巻きとマリー以外が見てないため証人がいないけど、『そういう行為をした』ということが伝わったら貴族会で大打撃間違いなしのものですねえ。
アレクとマリーの恋愛事に関しては気持ちを伝える為の『道具』にすぎませんが、他者にとってはそうではないかもしれませんからね。

そんな凄いものを気持ちのを伝えるために使った程、アレクの気持ちはわかりますが、そんなアレクの破天荒ぶりにはさすがにマリーも呆れているのかな?
あとなんだかんだいって、抱きつくという体を使って気持ちを表現したのもあいまってマリーも冷静さを取り戻した模様。
マリーみたいな深く考えすぎる子に関しては、相手の気持ちを考えたうえで体で強引に伝えるってことも解決手段の一つってことでしょうかね。

マリーのお母さんも二人の痴話げんかっぷりをまとめようとしてお疲れ様です♪
周りから見れば、綱渡りっぽい危険な恋だけど思わず助けてあげたいって思わってるんでしょう。
私もそういうおせっかいな第三者の目でこの二人を見守っていきたいですね。

yama様 

今日は。

指輪には実はこういう経緯がありました。
これを実はずっと明かしたくてうずうずしてました(笑)
この指輪が関連してちょっと色々ありますが、これはまだ明かせません。
アレクにとっても指輪は勿論簡単に失くして良いものではありませんが、そこは彼の中で何が最も大切なのかと言う事が重要になってくるので、結果としてこういう事になりました。ホントに溺愛してるので。
マリーを一番冷静にさせるにはアレクの深い愛が一番重要だと思っているので、まだちょっとゴタゴタがあったりしますが、マリーは何においても強い気持ちを持ってアレクを信じる事!
それが今の彼女には一番重要だと思います。

思わず手を差し伸べてあげたくなる二人ですが、これからも今まで道理温かく見守って頂ければ幸いです。

いつもコメント有り難うございます。

NoTitle 

恋に悩むは少女の特権か。
確かに美しいものですね。
社会でいきるには色々ありますがね。

LandM様 

今日は。

確かに特権と言われれば、特権かも(笑)
美しいですか? 全然そんなことは考えずに、性格から来る反応しか考えていなくて書いてますが、そう言って頂けると嬉しいです^^

そうですね。社会に出たら色々ありますよね^^;
マリーもこれから色々ありますよ(笑)

いつもコメント有り難うございます。
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