パウリンの娘

パウリンの娘《第11章7》

 ←パウリンの娘《第11章6》 →パウリンの娘《第12章1》
ローレライが部屋を出て行ってから30分もしない内にゼロは呼ばれる事になった。

「お嬢様が不安がられておいでで、アイスラント様にお傍にいて欲しいとおっしゃっております」

侍女に言われてゼロは直ぐに隣の部屋へ向かった。
ゼロが部屋の扉を開けるとローレライは直ぐに腕にしがみ付いて来た。

「サンドラ様は本当にアイスラント様を信頼されているのですね」

ローレライが頬を染めコクリと頷くとゼロが苦笑いした。

侍女二人が出て行くとゼロはローレライをソファーに座らせ大丈夫だからとポンポンと頭を軽く叩くと手を腕から離しティーセットに手を伸ばした。
ゼロはローレライが事ある毎に紅茶を良く飲んでいたのを知っていた。
自ら紅茶を注いでローレライに差し出す。

「ダージリンだ。少しは落ち着く」

ローレライは注がれた紅茶を手にした。
ダージリンの爽やかな香りが心を溶かす様に一口毎に染み渡る。
思わずホロリと涙が溢れて来た。

「どうした!?」

心配そうに顔を覗き込むゼロ。

「違うの・・・・ただ嬉しくて・・・・」

ローレライは笑顔を作った。

“ああ、本当にこの人は何て優しい人なのだろう・・・・”

人に頼めば済む事も自らが出来る事はこうやって自分で動いて示してくれる。
傍に居るだけで恐怖感だけではなく心まで癒されていくのが良くわかる。
ローレライはこの傍から離れたくないと思った。

今日は色々あったから早く休んだ方が良いとゼロに言われた。
誰も来ないようにずっと居て見張ってくれると言うので一度は安心して自らベッドに入ったが、やはり一人で寝室に居るだけで怖くなってまたゼロを呼んでしまった。

「ごめんなさい・・・・」

「気にするな。眠るまで傍にいてやる」

ローレライはギュッとゼロの腕を握りしめてベッドに入った。
こうしていると本当に落ち着く。
自分はかなり我儘な事をゼロに強いている。
今はこう言う状況だから傍に居てくれるけれど、きっと時間が経ってしまえばこの腕は無くなってしまう。
ローレライはライサンドに触れられた時に初めて自分の心を知った。
あの時思ったのだ。
ゼロ以外の男性に触れられたくないと・・・・。
とても安心できる温かな腕。
ゼロの腕を頬に寄せ、安心するといつの間にか眠りに落ちて行った。


ゼロは自分の腕を頬に寄せ安心しきって眠るローレライの姿を見てもう耐えられないと思った。
こいつに触れられる腕はいつでも自分の腕でありたいと思った。

“愛しい・・・・”

こんなにも切ない思いは初めてだった。

若い頃とても好きになった人がいた。
恋い焦がれ、初めて知った想いだった。
しかし酷い形で裏切られる事になり、姉ですら女は信じられなくなった。
女とは所詮裏切る生き物なのだと言う事をその時知った。
媚び諂い、揚句に裏切る残忍な者だと思い続けていた。
辛すぎて思い込もうとしていただけなのかもしれない。

ローレライに出会い、こいつも同じ女だと始めは思った。
なのにローレライの人や生き物や物事どれに対する姿もとても新鮮なものだった。
今まで知らない未知なものに出会った感覚で、いつもその行動には驚かされる事ばかりだった。
清々しい気持ちを植え付けられ、いつの間にか傍に居なくては自分が安心できない存在になっていた。
あの時に知った恋はきっと本当の恋ではなかった。
恋に憧れ、甘い香りを知り、のめり込んで行った。それだけなのかもしれない。
ローレライと出会い、知りゆく中でそう思えてくる自分がいた。
これ程までに愛しさを感じる想いをこれから自分はどうやって押し込めていけば良いのか!?
今こんなにも辛い思いをして不安定な心のローレライに対し自分は何処まで気持ちを抑える事が出来るのか?
はっきり言って自信が無かった。
けれどこれ以上、決して傷つけたくはない。
それだけは確かな事だった。

そっと握られた腕から手を離し、その場を去ろうとする。

「・・・・ゼロ・・・・」

微かにローレライの唇から声が漏れた。
眠っているのに無意識に自分の字名を呼ばれ、ゼロは溢れ出す想いを押さえきれなくなった。
枕元に戻りローレライの髪をそっと撫ぜる。
愛しさが込み上げて、もぅ耐えられない。
ローレライの唇に指でそっと触れると自分の唇をかすかに押し当てた。

「私も奴と同類だな・・・・」

唇を離し苦笑いすると、愛しげにローレライを見つめながらそう呟いた。
額に再び唇を落とすとゼロはそっとその場を後にした。

良かったらポチッとお願い致します^^

にほんブログ村




総もくじ  3kaku_s_L.png パウリンの娘
総もくじ  3kaku_s_L.png 記憶の彼方とその果てに
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ&感謝
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【パウリンの娘《第11章6》】へ
  • 【パウリンの娘《第12章1》】へ

~ Comment ~

NoTitle 

ああ~~~ん!いいよぉv-238
きゅんツボですv-10
やっとお互い認めたけど、
まだ、だね~(笑)
でも楽しみ~~!!です♪

はのん様 

ツボにハマりましたか!?嬉しいですv-238
この場面は個人的にもかなりお気に入りです♪
書き始めた当初より早く書きたい場面ベスト3に入るエピソードでした^^
まだまだ二人色々あるんだけど、お互いの気持ちに揺るぎは無いから、これからも温かく見守ってくださいね(笑)
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【パウリンの娘《第11章6》】へ
  • 【パウリンの娘《第12章1》】へ