ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《74.造 言2》

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泣く時は、少し俯き加減にさりげなく、疑われるかもと言う先入観を持たず、大げさには決してしない……。
それが先程母から受けたばかりの教えだったのだが、実行するにあたり私の心の内は心臓が口から出そうなくらい大きく脈打っていた。
すると……。

「そっ……、そう言う事でしたの? まだ申請が正式に受理されていなかったとは私、全く思ってもおりませんでしたわ」

「……本当でしたら本日も心痛でここへ来られる状態では無かったのですが、陛下の誕生を祝う会ですもの。健気にも参加すると決心してくれた娘を、周囲が何と言おうとも私は誇りに思いますわ」

「そうね。マリエッタさん、貴女ご立派よ」

「……有難う……ございます……」

どうやら上手く母の掌に乗り始めている伯爵夫人の言葉に何処かホッとして、気が抜けたら本当に涙が溢れて来た。
どれだけ緊張していたのか……。思わず鼻を啜っていると。

「あら、あら、可哀想に……。本当に殿方と来たらせっかちなのね。そういえばロナルドも昔からそう言う所があったかしらね。どちらかといえばアゼレーゼも先走って物事を口にするタイプだし。私も直ぐに鵜呑みしてしまうからいけないのだけれど……」

「いいえ、マグノリア伯爵夫人はお優しい方ですからお心を絆されるのですわ。本当に有難いですわ。ね、マリエッタ」

「はい……」

「まあ、そんな。けれどそう言って頂けると私も嬉しいですわ。私でお役に立てるのでしたら何でも仰って。苦しい胸の内でも他の相談事でも何でも聞いて差し上げてよ」

「ああ、本当になんてお優しい方なのかしら。……では、お言葉に甘えて……。実は私、如何してもわからなくて……」

「まあ、それはどのような? 私にお答え出来れば良いですけれど……」

「娘は何があって婚約を正式に受理されないのでしょうか? 私こう言う事にはお恥ずかしながら全く疎いものですから、娘の為に何の力にもなれなくて心苦しいのです。ですから、これ以上娘を苦しめるのならば私……いっそこのお話しは反故にした方が良いのではないかとさえ時折考えてしまいますの」

「それはいけませんわ! 色々と心穏やかでいられない事は分りますけれど、相手あっての事ですもの。そう簡単に反故になど出来よう筈が有りませんわ。それにロナルドは御令嬢に執心していると聞いておりますし……」

私には何処か意地になり、執着しているにすぎないように思われてならない。

「ですけれど、娘の気持ちを考えると……。マグノリア伯爵家にも確か来年社交界デビューなさるお嬢様がお有りだとか。こう言う事は軽々しく口にするものでは無い事も重々承知しておりますの。ですが伯爵夫人があまりにもお優しい方でしたから今回思い切ってお願い致しますけれど……、同じ年頃の娘を持つ母としてのお考えを是非お聞かせ頂きたいのですわ。殿方に振り回されて苦悩する娘の姿を見るのは、正直申しまして私もう限界なのです。もしお嬢様が同じお立場でしたら如何なさいます? 私こうなると分かっておりましたら、娘にこのお話を絶対に勧めてはおりませんでしたわ」

再び目頭を押さえる母に伯爵夫人はとても同情的で、どうやらロナルドのお母様とは懇意にはしているものの、婚約が未だに正式に受理されて居ない事実は聞かされていなかったらしく、こちらに酷く同情的だった。

「それは勿論ですわ。こう言う事で待たされ、悩まされるのはいつも女ですものね。事情も掴めずにそれは不安だと思いますわ。けれど……、ああ、如何致しましょう……」

おそらくドワイヤル伯爵夫人との関係もあり、こちらに靡く事を悩まれているのか?

「心痛で、食事も喉を通らず日に日に瘦せ細って行く娘の姿を見るのはとても辛いものですのよ……。この子の為に何か出来るのならば、何かしてあげたい……。そう思うのは親のエゴでしかないのでしょうか……」

「いいえ、その様な事があるものですか! 当然ですわ。けれど……そうね……。色々言う輩には私がきちんとお話して差し上げますわ。勿論このお話が正式に決まりましたらそれは喜ばしい事ですけれども、周囲にとやかく言われるものではありませんものね。マリエッタさんも気をしっかりね。ですけれどこう言うお話、私も稀に聞きますのよ。場合によっては話を反故にする場合もあるようですけれど……。いえ、勿論ロナルドに限って何の心配もいらないと信じてはおりますけれどね。……けれど、もしもの時は私も素敵な婿となる殿方を一緒に探してあげますからね。そう気落ちなさらずに心を大きくお持ちになってね」

「……はい……」

「ああ、夫人にお会いできてようございましたわ。私、憑き物が落ちた様に心が軽くなりましたわ」

「まあ、ホントに? 私もお話し出来て良かったわ。理由も知らずに口を挟めば、また危うく主人に叱られる所でしたもの。先日も社交の場ではもう少し口を慎めと叱られたばかりですの」

「まあそのような事を? お気になさる事ございませんわ。私、今日は娘共々本当に救われましたもの」

「そうかしら」

「はい。それにこう言う事をあからさまに申し上げるものでも無いのかもしれませんが、これも貴婦人の嗜みと思いますの。こう言う関係での情報源も殿方を支える土台となり得る事もございますもの。殿方には殿方の役割がありますように、私共にも社交夫人としての役割がございますわ。全ての殿方に理解して頂こうとは思っておりませんが、それでもやはり気になるものは気になりますもの。それにずっと内に秘めているばかりでは私、きっとまた色々と悩んでしまいそうで……。今回はお蔭様で気分も幾分楽になりましたけれど、この際ですから今日は私色々と発散しようかと思っておりますの」

「まあ、それは良い事ですわ! 殿方は何と言うか分りませんけれど、私もそのお考えに賛成ですわ」

すっかりドワイヤル伯爵夫人と懇意にしていた筈のマグノリア伯爵夫人と2度目の親睦にてまるで旧友の様に親しくなっている母。
きっと我がマニエール男爵家を根底でしっかり支えているのは母であるに違いないと、この時私は確信した。

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~ Comment ~

NoTitle 

更新、お疲れ様です。
お母さんすげえ、って思いました。
社交界ではこうして話術を交わして情報を手に入れながら、自分を害するものから身を守り、そして今回、マグノリア伯爵夫人のように味方を増やすことも大事なこと。
マリーもこういう術は身につけなくてはなりませんね。さすがにどうしようもないクズ女どもは相手にしなくてもいいですが、こういうのとは上手に相手をすることもしなきゃいけませんしね。

売国奴に関してはもはや意地と執着でしかマリーを思ってはいないのでしょうね。
これが犯罪をしておらず、マリーに対して愛情があったなら、よくあるすれ違いもののヒーローですが、結局はただの売国奴ですのでアレク達上昇部がどんなふうに追いつめるのか楽しみです。

さて、試練はまだまだ続くはず、マリーはアレクの言葉を信じて、その試練を乗り越えられるのか、次回を楽しみにしています。

yama様 

今日は。

社交界では高貴な身の上で無い者は、ある意味話術が頼りになります。話術に長け、その上身分も高ければ更に周囲は付いて来るでしょうから何れマリエッタもある程度の話術は身に付けて行かなければならないと思っています。
社交界に出てからまだまだ浅いマリエッタ。
けれど傍に心強い母の存在があるので、何れある程度の習得はしてくれると思っています。(今は相槌打ったりが精一杯ですが^^;)

ロナルドの件は色々話が今後絡んで来ます。
まだ詳しい事は言えませんが、今母がしようとしている事はいわば事件解決の為の種まきのような状況でもあるので、これから如何なって行くのか、今後も楽しみにして頂ければ幸いです。

いつもコメント有り難うございます。

NoTitle 

そういえばタイトルが造言だった。
(*´ω`)
ううむ。そのタイトルにふさわしい話の展開だ。
私はタイトルを適当につけているから
深い意味を持たせるのが素晴らしいです。
(*^-^*)

LandM様 

今日は。

はい、タイトル造言ですよ♪
私は結構2文字タイトルの時は拘りを持って付けています。
話は出来ているのに良いタイトルが思い浮かばず中々UP出来ない事も多々あります(笑)
前作で結構大変だったので「次回からするものか!」と思っていたのに何かまたやってしまって……。
そう言って頂くと苦労が報われます。

いつもコメント有難うございます。
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