ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《78.観 察》

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撒いた噂の種は、その直後から凄い速さで場内に散らばっている様だった。


「社交界って本当に噂話が好きな方の宝庫だわね」

今の母に他人事のようにそう告げられても、全く説得力が無い。
何と返答して良いやら、困ってしまう……。
今までの母は、邸でも他人の噂話等殆ど口にした事が無い人だった。
本来は家族以外の他人のする事にいちいち口を挟む人では無い。
けれど今日はまるで人が変わった様に嬉々として方々で噂話をして歩く姿を見てしまい、内と外では違うのだと……、社交夫人の何たるかを少しだけ教えて貰えた気がする。

壁際で取って来たフルーツを摘まみながら、母と二人で自分たちの蒔いた種がどの様に広がって行くのか経過を伺いながら一息ついていると、方々でアレクに関わる色々な話が噂となってどんどん広がって行くのが伺える。
しかし告げた内容は時間の経過と共にどれ一つとして正確に母が告げた通りに広がっているものは無く、徐々に徐々にと異なった内容へと変貌を遂げていっている様だった。
人伝に話が伝わる事に危機感をこの時初めて肌で感じた。
大切な事柄は信頼のできる家人を通じて……いや、出来るだけ直接本人に伝えるべきだと思った。

母が噂として広げたのは、一貫してアレクが花嫁探しをしていると言う内容を関連付けたものばかりだったのだけれど、いつの間にか指輪の呪術の話が混同されたらしく、呪術に関しても話が捻じ曲げられて伝わってしまったようで、本来の持ち主以外の者が嵌めれば途端苦しみながらその場で息絶える等と言う話にすり替えられており、その為に今まで結婚を躊躇していたと言う話しもあれば、実は男色家と言う事実を隠す為に敢て重い腰を上げたのだとか、はたまたかつて噂になっていたマルベール嬢を今も思っていて、彼女を忘れる為に結婚相手を探しているのだとか、告げた内容に尾ひれはひれがつき、良くもまあこんな話が出来上がったのかと思わず感心したくなってしまった。
勿論私との噂も消える事無く囁かれている様だったが、これだけ話題に事欠かない面白そうな噂がはびこれば、私との話など何れ誰も話題にもしなくなるかもしれない。
母やこの計画を立てた者は、そこまで考えての行動だったのだろうか?
もし、そこまで示唆して話を広げているのだとしたら、とんでもない策士だと思った。

アレクから告げられた『何があっても裏切る事は無いから私を信じてくれ』と言う言葉が何を意味しているのか?
内心かなり複雑だったが、その話しがこの花嫁探しと言う事ならばかなり冷静に受け止められると思っている。
二人の関係が公表できない以上、聞かれ問われた所で何も答えられないのだから、そう言う方向でかわすのは適切な事だと思う。
それでも問い詰めようとする物好きな輩はいるもので、困惑していれば今は母が適当に対応してくれるのでとても心強く思っていた……、のだが……。

「奥さま、陛下への挨拶の順番がそろそろかと。旦那様もあちらでお待ちですので……」

少し申し訳無さ気にこちらの様子を伺いながら問い掛けて来る家人に呼び止められ、言われた方角を見て見れば、遠目に父の姿……。
目があってマズイと思っていれば、何故か愛想笑いをしながらこちらを見ている父に、私は思わずプイッと顔を背けた。
今更父と笑顔で話す気には到底なれない。
何処か物寂しげな父の姿に。

「良い気味。あら、失言」

と追い討ちを掛けるような母の言葉……。
告げながら扇を取り出し口元を少し隠す母の姿に、少しだけ……、ほんの少しだけ父に同情した。

「お母様……」

「けれど、幾らなんでも陛下へのお祝いの挨拶は無視できないわね……。マリエッタ、直ぐに戻るから貴女はここを絶対に離れないのよ。良いわね」

「はい、お母様」

言われた通り母を見送りながら、私はずっとこの場で待つつもりだった。
所が……、何処から見ていたのか?
母がこの場を離れて5分もしない内に、こちらの様子をずっと探っていたのか? 一番会いたくないと思っていた者がこちらへと近付いて来て、私は思わず身を固くした。

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~ Comment ~

NoTitle 

更新、お疲れ様です。

いや、噂ってすごい。
お母さんはうまく利用したようですが、一歩間違えれば自分たちに不利なことも伝わる可能性もある。
これに関してはマリーはもっと勉強してうまく立ち回れるようになってほしいですね。

マリー父に関しては、今回のことで少しだけ溜飲が下がりました。
自家の利益の為にマリーの意志を無視しアレクを騙したことはまだ許せませんが、自分が信頼したと思った娘の婚約相手が売国奴であったことはある意味哀れですね。

父が犯罪に手を染めてるかどうかは知りませんが、ヘタすればお家取りつぶしの可能性もある犯罪に関わってる以上、父に関してはどんな裁きでも非常に後悔してもらいたいところです。

さて、お母さんがいなくなった途端、ぬけぬけとやってきた奴。
誰なのかはわかりきってますが、これからさらに溜まるであろうヘイトも近いうちに解消されるでしょうし、万が一でもアレクが何も対策してないとは思ってませんので、そこは信じてマリーを応援しています。

yama様 

今日は。

噂って凄いですよね。
検証実験でもう3人目くらいで内容変わって来たりしてますものね。
マリーも身近に良いお手本があるので、その内身につけられるようになって欲しいですね。

父に関しては色々な見方をする方がいると思いますが、私的には少し同情もしています。ある意味可哀想な人だなぁと。不器用で堅物な人ですからね。

はい。母が去って現れた奴はこのお話をしっかり読んで頂いてる方には容易に分かって頂けたかと思っています。
奴をどう回避するのか!?
次回は、「頑張れ!マリエッタ♪」って感じですかね。

いつもコメント有り難うございます。

アレクはけしてそんなことしませんが(笑) 

「実はこういう展開も予期してほんとうに指輪の中に毒を入れておいたのさ。きみにはあらかじめ解毒剤を」

「アレク……わたし宮廷っていうものがわからなくなってきた」

(笑)

NoTitle 

噂が伝説や奇人をつくる。
同時に英雄も作る。
そういった意味では噂も価値があるか。。
もっとも肯定的な見方ですが。

ポール・ブリッツ様 

今日は^^

うははははっ♪
楽しいです^^

こういうのも良いなぁ。
アレクは絶対に言いそうにありませんが、マリーは内心そう思っているかもしれませんね。

いつもコメント有り難うごぞいます。

LandM様 

今日は。

そうですね。
噂には色々な可能性が秘められていますよね。
そういった意味では、価値があるようにも思えますね。
肯定的な見方をすれば視野も広がりそうですね。
奥も深そう。色々考えてみたくなります。

いつもコメント有り難うございます。
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