ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《80.忠 告》

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会場に入る少し前、色々な話を聞き告げられた言葉の重みを受け止めながら、私は何度も心の中で口ずさんでいた。
これからの自分たちの未来の為に必要な事ならば、何でも柔軟に受け止めてなくてはと自分に言い聞かせていたけれど、最後に告げられた言葉だけは、今更と思わざるを得ないもので、できれば金輪際関わりたくないと思っているものだった。

「ロナルドとは、無視しない程度の関わりは一先ず必要だと思うわ」

「……それは、如何しても必要な事なの?」

「無理?」

「思っても、みなかったから……」

今更ロナルドと関わるつもりは毛頭なかった。

「そうね。今の貴女にとっては今更事だわね。けれど事を明かせない以上、公の場ではロナルドと無関係を装う事は適切では無いと思うのよ。これは侯爵から頼まれた訳では無いのだけれど、事が解決し侯爵が手を携えて下さるまでは不必要な事とはどうしても思えないの」

「けれど、アレクは何もしなくて良いって……」

「それはきっと貴女への思いやりね。けれど貴女は侯爵の……、二人の為に何かしたいと思っているのでしょう?」

「ええ」

「ならば侯爵がなされようとしている計画を手助けする意味でも勘ぐられないように周囲の目をこちらに向けさせておく必要があると思うの。その為には一部で噂されているあなた達の事をこれ以上勘ぐられてはならないわ。だから今は未だ、ロナルドとの関係を保つことが先決なのよ」

アレクが何をしようとしているかは分らない。けれど、計画を知る母の考えならば……。

「……分かったわ。お母様がそう仰るのなら……」

「有難う。それとね、もう一つ……。これだけは忠告しておかなければと思っていたのだけれど、もし……、テロ―ネーゼ嬢からロナルドがあの指輪の詳細を聞いていたとしたら、貴女は如何対応するつもりでいるの?」

「それは……」

その様な事は全く考えていなかった……。

「この話だけはロナルドの耳に入っていれば、簡単な言い逃れで対処できないと思うのよ」

確かにそうだ。簡単に言い逃れができるものでは無い。テロネーゼ嬢は指輪に刻まれた家紋を目にしているのだから。

「お母様……。私、如何すれば……」

「知らぬ存ぜぬで通しなさい。あんな小さな指輪に刻まれた紋章なんて拡大鏡で覗かなくては正確な判断は出来ないものよ。一瞬見られただけならどの様にだって取り繕えるわ」

「成る程……、凄いわ。流石お母様だわ」

「だから貴女もとにかく落ち着いて行動するのよ。出来るだけ私も傍に居て、貴女を守って上げるつもりではいるけれど、一時も離れずにと言うには無理があると思うのよ。ベアレーゼ侯爵夫人にも協力して頂けると言う事だったけれど、中々お忙しい方だから……。とにかく何があってもロナルドを逆上させるような否定的な言葉は投げかけないように注意して事を穏便に済ませる努力をして頂戴。これが最も重要な事なのよ」

ロナルドから悪態つかれると、つい拒否反応が生じて如何しても感情的になってしまう。自覚しているのだから、その事は、十分に気をつけなくてはと頷きながら心に深く刻んだ。

「わっ、……わかったわ……。上手く出来るかどうか分らないけれど……私、精一杯頑張るから」

「ああ、マリエッタ……。貴女にばかり辛い思いをさせて御免なさいね。これも私があの人を説得できなかったばかりに、貴女に辛い思いをさせてしまって……」

「そんな事っ」

「ロナルドとの事は仕方ない事だけれど、とりあえず公においては貴女と私は二人してブロイラの実家へ赴き、そちらに滞在していた事になっているの。だからあの人との関わりは気にしなくて良いわ。貴女も今お父様と会いたくはないでしょ? あの人は体裁を取り繕う為にその事をひた隠しにしているようだけれど……。私もあの人には暫く会っていないの」

「そんなッ……お母様……」

如何やら母は現在実家で寝泊まりし、父の出仕中の昼間だけ屋敷へ戻り自分の為すべき女主人としての役割のみ熟しまた夕刻には実家に戻ると言う生活をしているらしい。
自分たちの為にそこまでして貰うのは、流石に申し訳ないと思った。

「何? そんな辛気臭い顔はよして。だいたい娘の幸せを自分の解釈でしか受け止められない人なんてこちらから願い下げなのよ。どうしても認めないと言う時は、訴訟でも何でも起こして離縁申請してやるわ。女の方から申し立てをするなんて滅多にない事だもの。公になれば世間のいい笑い者だもの。流石にあの人大慌てするわよ慌。良い気味!」

全てをおそらく分かった上で『ふふん』と鼻息を荒くして啖呵を切る母。
おそらくは……私の為に言ってくれているだけで本心では無いのかもしれない。
けれど、いざとなればこの母ならば体裁を顧みずに何でもやってのけそうな気がして、少し怖い……。
今までの母はどちらかと言えば父に対し口は挿めど比較的従順な人だったと思う。
いや、違う。従順と言うよりも父を自分の手のひらの上である意味転がしていたから逆らう必要が無かったのかもしれない。
だが、おそらくアレクからの求婚話で父の中で何かが変わり暴走を始めた。一人娘を自分の側にずっと置いておきたいばかりに……。
父の気持ちは嬉しいと思う。けれど、もう子供では無いのだ。何時までも父の後を追いかけて走り回る幼い娘のように思って欲しくない。

見上げれば、母の凛とした表情。
私はこの母の娘なのだ!
ならばその事に誇りを持ち、立ち向かう事は出来る筈だ!!
今度こそアレクに『良くやった』と褒めて貰えるようになるのだと、心新たに決意した。

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~ Comment ~

NoTitle 

マリーが大人になっていく。。。
( ;∀;)

嬉しいような悲しいような。。。
それが成長ですね。
( 一一)

NoTitle 

更新お疲れ様です。

ふふ、そうそう、マリーが自分でできる範囲で頑張っていけばいいんですよね。
女性向けでちょっと気になるのはヒロインが何もしてない間にヒーローたちが勝手に動いて勝手に事態が解決するヒロイン人形展開ですから、何だかんだいってヒロインが自分で展開を切り開こうとする展開は好きです。

もともと激情的な性格はたぶん母親から受け継いだのでしょうね。とにかく、アレクのために、そして自分がアレクに守られるだけじゃない子に成れるように頑張れ。

LandM様 

今日は。

段々と成長して行くマリーです(笑)
母の教えもありますが、色々な経験が人を成長させると思うので、マリーも少しずつ、押さえの利かない若さゆえの言動が減り、大人へと成長して行きます。

何か私もマリーが親離れして歩き始めた感じで、少し寂しいと言うか変な感じです。
とは言え、まだぎこちない成長途中の危なっかしい状況のマリーです(笑)

いつもコメント有り難うございます。

yama様 

今日は。

マリー頑張ってるでしょ♪
まだぎこちないですが^^;
女性向けで多い設定、考えなくも無かったのですが、今回マリーは侯爵家の当主と結婚するつもりな訳です。高位の貴族の奥方になろうと言う人間がそれではまず不味いと思うんですよね。
それに、私はやっぱり成長するキャラが好きなので、どうしてもついついこういう設定が多くなってしまいます(笑)
ヒロイン人形展開も可愛いとは思うんですよね。
でも描くとしたらもっとヒロイン儚げ系にするかな?いや、でもやっぱり途中で頑張っちゃいそう。私が書くと(苦笑)

マリーは元々活発な娘ですし、母に似た所もあるのでその内母まではいかなくてもそれにりの対応が出来る人になると思っています。
まだまだぎこちないですが、マリーも今必死なので自分たちの為にも頑張って欲しいと思います。

いつもコメント有り難うございます。
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