ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《84.誘 導2》

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どの様な話が飛び出して来るのか、二人して固唾を呑んで見つめているとアリシラ様は意外な告白を口にされた。

「私ね、人より感が鋭いのか以前王宮の占術師に、術師の資質があると言われた事があるの」

「……えっ?」

何を言っているのか?
あまりに意表を突いた言葉に、思わず呆然としてしまった。

「そのせいか時折何か人の物とは違う異質な……、目に見えない何かを感じる時があって、今日は多くの宝飾類に取り囲まれているせいかどうやらいつもより更に敏感になっている様なのよ。それで、あの令嬢が手にしていた指輪がどうしても気になってしまって……。

「なっ、何かあるのですか?」

心情的に、かなり焦っているのか?
ロナルドの声がほんのり震えて聞こえる。

「分らないのだけれど、随分と只ならぬ……、靄のかかった重いものを感じ取ってしまって、正直今少し戸惑っているのよ……」

「……異質な……、目に見えない何かが?」

ゆっくりと、そう口ずさみながら今度はロナルドが片眉をピクリと動いた。

「あまり大きな声では言えませんけれど、あのような感覚は久しぶりだったから本当にびっくり致しましたの」

ロナルドの表情は、傍から見ていると何処か固く凍り付いているようにも見受けられる。
アリシラ様の今の言葉が、余程衝撃的だったのか?
焦点が合う事無く、瞳が何処か虚ろに揺れていており、今までになく狼狽している姿が伺えた。
現段階で私からテロネーゼが奪った単なる噂話と言う域を脱していなかった指輪に関する呪術話が、いよいよ現実味を帯びて来た事が余程衝撃的だったらしい。

そのような事を思いながら侯爵夫人に目を移せば、今度は満面なる笑顔で微笑み返された。
綺麗な人の笑顔とは本当により美が引き立つものだと感心しながら微笑み返していると、何やら私の方をじっと食い入るように視線を向けたまま逸らそうとしない。 

(これは私に、……何か訴えている?)

その事に気付き、私は息を小さく飲み込みハッとした。

……そう言えば先程母がベアレーゼ侯爵夫人にもアレクが何か頼んでいるような事を言っていいたではないか!?
だとすれば、この呪術の話題へと話を切り出した事には、やはり何か深い意味があるのかもしれない!
今告げられた何かを感じるだの何だのと言う話しが真実かどうかは別として、ならばアリシラ様の話に乗らなければと思い立ち、慌てて話を進める為に言葉を口にした。

「……では、以前にもこの様な事が?」

返す言葉が適切であったか否かは分らないが、振られた言葉には乗らなくてはならないと言うのが母の教えでもあったものだから。

「ええ、勿論。そうそう、古い貴族の家に伝わる装飾品には呪術はつきものだと言う話しは御存知?」

「噂程度の知識ですが、少々……」

「ならばこの際だから私が色々教えて差し上げるわ。このような大きな席ではね、そう言う家々では家宝とされる宝石類を身に着けていらっしゃる方々も多いのよ」

「それは、我が家でも母が祖母より受け継いだ宝石類を大切にしておりますので何となく理解出来ます」

「そう? 元々呪術が高価な品々に掛けられるようになったきっかけは、貴族が高価な品々に掛けるようになった事が始まりなのよ。国としての地位が各国に認められるようになった今から2世紀程前、我が国が一番悩まされていたのが繁栄した王都に蔓延る夜盗による金品強奪事件だったそうよ。その中で多くの王侯貴族の馬車が襲われ、命を奪われる者が相次いだのだとか。色々な対策を取ったにも関わらず中々根絶やしにすね事は難しく、ついに国は身を守る術に公用以外の呪術の使用を大々的に許可したの。金のある貴族連中は挙って呪術師を金で雇い、自らの持ち物である高価な品々と共に身を守るべく術を施して貰ったのが今に残る宝石類への呪術の始まりだと言われているの」

「そのように大々的に行われているものだったのですか?!」

「ええ。以降半世紀もの間我が国の貴族の間に特に呪術は横行していたの」

「……では……、呪術は、やはり今でも本当に残って……いる?」

何処か遠慮がちではあったが、ロナルドが急に輪の中に入って来た。
やはりテロネーゼの事があるからか、随分と呪術の事が気になっているらしい。

「勿論よ。例え禁じられ時が経とうとも、掛けた術者がこの世を去ろうとも、呪術の力は失われるようなものでは無い事を私は知っているの。それに今も他国では呪術を認めている国もあるのだし、我が国でも生業としては正式に認められていないけれど、私の様に内に秘めた何かを感じられる者や、その力を持ち蓄えている者はきっといると思っているわ」

目の前に突きつけられた言葉に、ロナルドの表情はさらに硬くなって行った。

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~ Comment ~

NoTitle 

更新、お疲れ様です。

アリシアさん無双が続いてますねえ(笑)
このお話が真実であるかどうかはともかく、そう思わせてしまえば勝ちの状況ですしね。

大抵、創作ものではこの呪いとかは物語の敵方を追い込むための主人公側のすごいハッタリか、もしくは敵方が馬鹿にしてたり、悪用してたら本当に呪いが降りかかったりするとかしますよね。

もしハッタリだったら、売国奴はあっさり引っかかってますし、本物だったら売国奴の妹は因果応報な結末に向かうという、読者にとってはどちらでも溜飲が下がりますね。

あとマリーもよく察せましたね。
マリーもこういう輩から身を守るための術を危険な実践を積みながら学習していってますね。
こちらとしては、大丈夫かこの子とマリーを心配してきたのでちょっと成長見られたかな?と思いました。

yama様 

今日は。

アリシラ様、頑張ってます(笑)
そうそう、そう思わせれば勝ちなんですよね^^

ハッタリでもそうでなくても状況的に大丈夫と思うので、ある意味安心して書けてますが、ここから先がストック無くしたので、今頑張ってます(もう直ぐ85話完成)
休日書けないと辛い><;
でも、今夜と明日は書けるので、これから今必死に続きます!
この場面キリが付いたらアレクの方、書きますからね。
頭の中は既にアレクの場面が書きたくてウズウズしてます(笑)
この場面の自分の課題はマリーの成長とロナルドを追い詰める事なので、とにかく頑張ります。後2~3話と思ってるので。

いつもコメント有り難うございます。

NoTitle 

まあ、今でも冠婚葬祭は儀式で信じられているものですからね。何にしてもそういう儀式や祝詞、呪術があるということですね。昔ならなおさらでしょうね。

LandM様 

今日は。

はい。私も、そう言う考えです。
実際呪術などに関しては今より昔の方が信じられていましたし、世界観が世界観なので、ここはそう言った感じです。
理解して頂いているようなので心強いです^^

いつもコメント有り難うございます。
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