ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《87.誘 導5》

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痺れた指先の感覚を確かめるように擦りながら私はアリシラ様を凝視した。

「ごめんなさい。少し刺激が強かったかしら?」

「あっ、はい。いえ……」

これが、もしかして呪術……なのだろうか?
確かに最初は指先にかなり痺れを感じてはいたが、徐々に治まって来ている気がしないでもない……。
自分の思っていた呪術のイメージからあまりにもかけ離れた感の拭えない状況に少しだけ呆気に取られた。

「あの……。では今のが、その首飾りに掛けられている呪術……なのですか?」

「定められた者以外の者が単独で触れると、術が働くようになっているの」

「……凄い……」

「ふっふふっ」

感心してそう呟けば、何だか意味有り気に笑われた気がするのだけれど……。
『呪術』と言う言葉に対し、肯定も否定もしなかったように思えるのは気のせいなのだろうか?
アリシラ様がどの様なつもりで居るのか分らぬ以上、下手な事は口に出来ないのでとりあえず差し障りのない言葉しか紡げないでいるのだが……。

話しによればアリシラ様の周辺に集っている呪術を施されたものは、宿主として認められている者以外の者が触れた場合、呪術が働くものが大半だと言う事だった。
その話を一緒に聞いていたロナルドは、じっと私の指先を眺めていた。

「それ、本当に痺れているのか? まやかし等では無く?……」

「痺れているわよ。今もほら、小刻みに指先は震えているわ」

まだ現実の物となった呪術の存在をにわかに信じがたいのか?
疑わしげに何処か勘ぐる様な眼差しのロナルドに、私は触れた右手を差し出し微かに指先が震えている事を確認させた。

「確かに……」

「けれど、しッ」
「それともう一つ、この指輪を見ていて」

ロナルドへ指の痺れについて詳しく話をしようと思っていれば、アリシラ様が突然言葉を遮った。
そして徐に自らの左の薬指に嵌めていた指輪を何か啓示するかのようにこちらへと向けた。
何をしているのかと不思議に思っていれば、突然無造作に指輪を抜き取り徐に私の手を再び取ると、如何いう意味があるのか、指に嵌めようとした。
突然の次なる行動に、先程の事もあるので、思わず反射的に手を引っ込めようとしてしまう。
恐怖心もあったけれどそれだけではなく、婚姻の指輪は流石に他人が容易に手にするのは不味い気がしてならない……。

「いえ、ですがそれは……。幾らなんでも……」

嵌めさせて頂く訳にはいかないと、軽く否定しながら手を引き訴えた。

「大丈夫だから、ねっ。さあ」

腕を掴まれて、私の指先に指輪が触れようとした瞬間、指輪は勝手に……、まるで自らの意思を持っているかのようにアリシラ様の左手の薬指に再び治まった。

「あっ……えっ??」

「ねっ、可愛いでしょ」

満面の笑顔でそう呟くアリシラ様。

「……これは、一体……?」

何がどうなっているのか全く分らない。

「呪術には色々あるのよ。この指輪は婚姻に際し侯爵が私へ授けて下さり、私が新たな宿主となったの。宿主である私から離れればこの通り必ず私の許へ戻って来るの。これがこの指輪に掛けられた呪術よ」

今まで呪術と言う物は、ただ怖いものだと言うイメージしかなかった。
呪術と言えば人を縛るものの様に感じられ、出来る事ならば近づきたくないと思っていたが、夫婦仲が円満な場合こう言うある種の束縛のような指輪で縛られても結構嬉しいものなのかもしれない。
そうで無ければ不幸だが……。

「呪術と聞いただけで、何か怖いだけのものかとも思っていましたが、色々あるのですね」

「確かに直結して死を司ると言った強い術が横行していた時代もあったようだけれど、それだけでは無いのよ。それに国が正式に呪術師を認めるようになってからは、そう言う強い呪術には規制がかけられるようになったし。だから全てが全てに怖い呪術が掛けられている訳では無いの。中には危険と見なされた故に解術がなされ、再びその価値に見合った新たな呪術を施されたものもあるから、現在残っているものは宿主が普通に使っている分には全く問題無いものと思うわ」

「そうなのですか……」

ロナルドはアリシラ様の話しに安堵したのか、深く息を吐き出した。
何処か緊張が幾分解かれたような柔らかな苦笑いを漏らしている。
だがアリシラ様はその様子を見るなり、何処か含みのある様な悪戯っぽい笑顔を覗かせた。

(えっ? アリシラ……様?!)

この時を待っていましたとばかりに見透かしていたかのような笑みを湛える眼差しに、私は何故だか背中に何か冷ややかなものがゾクリッと走るのを感じた。

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~ Comment ~

NoTitle 

更新、お疲れ様です。

今回、本当の呪いならともかくハッタリだったらどんな手を使ってるんだろうってお話とは関係ない探求心が湧いていました(笑)

これが呪いでも魔法でも何でもなく何かの細工だったらある意味この国の文明すごいって♪

この出来事とアリシラさんの話術が重なって売国奴に想像以上の恐怖心を煽りたてることが目的である以上、充分に聞いていますよね。
はたして売国奴はどんなミスの結論をするのか。

NoTitle 

強いのは呪術ではなくて人の意思ということですね。。。
( ;∀;)

yama様 

今日は。

今回の事がハッタリか如何かの真相は2話先で判明します。
そこまで煽ってしまった探究心を無事解決出来るのか?(笑)
でも確かに全部が細工だったら凄いですよね。

アリシラ様の計画道理に今の所進んでいます。
後はこの後……おっとこれはまだヒミツ。
次回、最後の彼女の話術をお楽しみ頂ければ幸いです。

いつもコメント有り難うございます。

LandM様 

今日は。

この国での呪術は、依頼主の要望に基づいて形成される設定にしています。
詳しくは2話先で書くかも?(まだ書いてる途中なので何処まで書くか定かではありませんが^^;)

いつもコメント有り難うございます。
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